江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

大酒の害  「筆のすさび」菅茶山

2023-04-26 22:53:40 | 江戸の街の世相

大酒の害

                                                                            2023.4
備後中条村に三蔵と言う人がいた。
その家僕に酒を好むものがいた。

ある日、三蔵は、そのものを見て、
「お前は、酒をどれほど飲めるだろうか?」と質問した。
彼は、「もともと貧乏なので、欲しいだけ飲んだことは、ございません。多分、一升では、足りませんでしょう。」と答えた。
それならと 一升飲ましたが、すぐに飲み干した。


こは珍しい位の上戸だなと思い、「もっと飲めるだろうか?」と聞いた。
すると、ますます悦ぶのを見て、又一升を与えた。
これも苦もなく飲んだが、やがて横になって寝こんだ。
その、夜半に死んだそうである。

他にも、似たような事を、三四度も聞いた。

これは三蔵から聞いた通りの話である。

すべて、酒は小いさな杯にて一日も半日も飲むと、自覚しないまま、量をすごしてしまい、つもりつもっては病を引き起こす。
大きな杯で、自分の通常の無理のない量だけ一度に飲む場合は、酒の力が一時に出つくすので害はない。
このことは、私が数十年にわたって見聞きした人達は、皆そうである。
しかい、量を過ごせば、大きな杯で、一度にの飲むこと(一気のみ)の害は、小さな杯で、長く飲むのよりも、大きいようだ。

「筆のすさび」菅茶山、安政三年 より

 



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