江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「福島県耶麻郡誌」中の怪異伝説  その9

2023-07-07 22:10:58 |  伝説
「福島県耶麻郡誌」中の怪異伝説  その9
2023.7

41.板屋原  
月輪村(つきのわむら。今は、猪苗代町の一部)字(あざ)壷下の東方の十五町(約1.5km東)にある。
往古(おうこ:むかし)は千軒の家のある町であった。
弘法大師がここを通った時、ある家に立ち寄り、水を求めた。
しかし、女は機を織り続けて水をあたえなかった。
大師は、怒って水に呪文をかけた。
すると、水は山より流れ出たが、この町に至っては、池の中に入ってしまい、生活用水を欠くに至った。
それで、この町は、遂に滅んでしまった、と言い伝えられている。


42.マネ石通  
吾妻村(猪苗代町の北部)字(あざ)大原新田より小田に行く道であって、峠になっている部分をマネ石峠と言う。
ここは、昔、小田村の百姓猪賀之介と言う者が、山姥の「かもぢ」を取った場所である。
ここより山続きに姥ヶ沢、次に姥ヶ懐と言う場所がある。
又、東の山陰を姥ヶ谷と言う。
又、山の中腹に岩窟がある。
山姥の住んだ所と言う。
猪賀之介は、小田村を開いた後藤越中と言う者の子孫であるそうだ。


43.鎌倉山
月輪村(猪苗代町の南東部で湖岸)字(あざ)山潟の東北にある。山の東北及び西南の半腹に古い坑道がある。
昔のの金坑であると言う。
宝暦年中(1751~1764)、会津藩が、東南面の半腹の数ヶ所を掘削したが、鉱脈がみつからず、中止したそうだ


44.金山  
月輪村(猪苗代町の南東部で湖岸)字都沢の北方にある。
この山より発する渓水は、その気がつよくて味は甘い。
古(いにしえ)より金山と称している。
その由来は、はっきりしないが、必ず金鉱があるだろうと、文政の初め、山の北方を掘削した。
しかし、鉱脈を得られう、中止になったと言う。


45.長者屋敷址  
翁島村(猪苗代町)字(あざ)烏帽子(えぼし)小屋の浜田と言う所にある。

昔、寛治年中、常元長者と言う富豪の者がいた。
猪苗代郷中の米穀を売買し、当村字前浜を埠頭として、その西方の手蔵浜に土蔵を建て、あちこちに船で運んだ。
当時、大石を以って敷石とし、三町(327m)程建築した波止場の形は、今なお残っている。
屋敷跡より、しばしば古く珍しい陶器を掘り出すことがある、との口伝えがある。