江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その2 

2022-12-18 17:31:51 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その2

蝦蟇が、怪しい光を吐く  その1   

明治二十八年のこと。
会津若松の上市町の本屋の龍田屋(今は無い)の主人が、夏の或る夜に外出先から帰ると、納屋と倉庫の間の狭い路次の地面から、照明燈を差向けた用に、淡い一道の光の筋が見えた。
倉庫の白壁を照らしていたので、怪しみながら路次戸を開けて、内へ入って見た。
怪光は、地面の一点から発していたので、鍬を入れて掘って見ると、一疋の大型の蝦蟇がいた。あの怪光は、そのロから吐き出されているのであった。そして、蝦蟇は子供の悪さらしく、背中から五寸釘が串差しに剌してあった。
ところが、この時、家では八九歳の息子が高熱に悩まされて、治療されている最中であった。
病因はこの蝦蟇の一念であろうと、主人は畏れて、ただちに釘を抜いて、蝦蟇にわびを言った。
傷のところへは、蝦蟇の油を塗ってやって、庭内の安全な場所へ放った。すると、かの怪光も止み、また息子の病気も快癒したと言う。(実見者のH氏談)

蝦蟇の口中から光線を放射する、と言うようなことは、実際に見た者でないと信じられぬ事実ではある。しかし、人間や高等動物の心霊は発光体であることが、近年科学者の実験によって、確認されたことであることを思えば、この話もウソ偽りでないことは明白である。


蝦蟇が、怪しい光を吐く   その2
上記の話(蝦蟇が、怪しい光を吐く)と酷似した事実が、寛政(1789~1801年)頃に、岡山藩の牧村某(なにがし)方にもあった。
それは、或る夜、七歳の小児が夕方から熱病に罹り、昏睡中に数回ワッと泣出した。
泣き止んでは又泣出す。
何の病か一向に解らぬが、とにかく医者を迎えにやってから、便所へ行くと、土蔵の土台の所から青い火が燃えていた。
そうして、それと同時に、子供がワッと泣出した。
青い火は一旦消えたが、また燃えると、同時に子供が泣き出した。

それで、怪しんで便所から出て土蔵の際へ行って見ると、子供の戯れらしく、石を積み草を挿して墓場がまねてある。
それを取りのけて下を見ると、大きな蝦蟇が釘に貫かれたままで埋められてあった。
が、墓は死にもせず片息で苦んでいる。
すぐにその釘を抜き取り、薬をつけて放ってやったら、子供の熱が引き去り、泣くのも止った、
 と言う話がある。


「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その1

2022-12-18 17:26:52 | キツネ、タヌキ、ムジナ、その他動物、霊獣

「動物界霊異誌」中の蝦蟇(ガマがえる) その1

蝦蟇の魂で遊ぶ

蝦蟇がえるの魂で遊ぶ、ということが「動物界霊異誌」の蝦蟇の項にあります。
本ブログは、江戸時代の物を扱ってはいるのですが、大変面白いので、紹介します。
なるほど、面白いやり方ですね。

ガマの体から蒸発してくる気体を受けて、袋にためる。それの温度が下がると、気体と個体の混じった状態、つまり煙状になったのを、小出しにする。
その煙の一塊をガマの魂に見立てる、という遊びですね。


以下、本文。
数年前、奇術師の天一(松旭斉天一:1853~1912年)が、洋行(実際には上海に行ったことがあるだけ)の土産話として、奇妙なことを雑誌に書いている。

これは、いかにも奇術師らしい話で、一寸聞くと眉唾ものらしい話である。しかし、天一はこれぱかりは、ウソや手品ではない、疑う人は、検証実験をすると良い。ウソであったら、百円進呈する、とまで附け加えての発表であった。
そうであるから、満更(まんざら)ウソではあるまい、と言うことと思われる。

その話と言うのは、こうである。
蝦蟇を宙づりにして、下から火を焚いて焙(あ)ぶると、熱くなってもがき出す。
(ゆでがえるでなく、焼き蛙。日本の一部の識者が、ウクライナ侵攻でも、その他の異常な諸国の振る舞い・嘘、自国民他国民への圧迫・虐殺もに対しても、ゆで蛙状態でいるのは、恐ろしいことである。:編者の意見)
すると、蝦蟇の魂が気体になって、体から脱け出てゆく。
この時、ゴムの袋、又は豚の膀胱(袋状)などを蝦蟇の頭の上にかぶせるようにして、気体を吹い込ませる。
この後に、ゴムの袋、または、豚の膀胱の口を強く締めて閉じる。こうすると蝦蟇の魂を保存する事ができて、夜の楽しみの用意が出来る。

先づ障子を二三枚、裏を出して列(なら)べ立てるか、又は活動写真用の映写幕(スクリーン)を張るかして、その前面にあの袋を持ってくる。
その袋の口には、細い竹の管を挿込んで置いて、蝦蟇の気体化した魂の漏れ出る道をつけて置く。
さて、袋のロを障子又は映写幕(スクリーン)の方に向けて、サッとその下部を握ると、管の先から、シャボン玉が出るように、煙細工(けむりざいく)のような蝦蟇が一個飛ぴ出して行く影が映る。
ニ度握れぱ二個出で五度握れぱ五個出る。
大小濃淡、握りかたに応じて、蝦蟇の魂の気のある限り、何十個の煙の蝦蟇が飛ぴ出してくる。・・・

蝦蟇の油や小便は、古来我国や中国で、種々なことに使用される、と言われている。
しかし、西洋のように、その魂を使う、という考えには及ぱない。
天一の土産話が、果して実際に西洋に行はれているならば、西洋人も案外話せる人たちである。
丹念に捜せば、西洋にも何所(どこ)かに、蝦蟇仙人がいるかもしれない。