ポーランドからの報告

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起業するポーランド人

2007年01月25日 | 政治・経済

先日いただいた 『2010年の日本~雇用社会から、起業社会へ』 野村総合研究所(著) という本を、今日ついに読みおえました。(近江さま、どうもありがとうございます!)

日本でも終身雇用という概念がなくなり、リストラが増え、能力性になったこと、定年退職後の第二の人生としての起業活動の増加などで、起業する人が増え、これから2010年をターニングポイントに、雇用社会から起業社会へ移行する、という話です。アンケート結果など具体例も沢山紹介されており、非常に興味深い一冊です。

  

その中で、ポーランドの起業活動に関する数字が出ていたので、ご紹介します。

2004年の 起業活動指数の国際比較 によると、ポーランドの起業活動指数は8.8と、ニュージーランド(14.7)、アイスランド(13.6)、オーストラリア(13.4)、アメリカ(11.3)、カナダ(8.9)に次いで、世界第6位なのだそうです。これは旧共産主義東欧圏の中ではダントツで首位、ヨーロッパ全体でも、アイスランドについで第2位という数字です。

この 起業活動指数の国際比較 とは、起業家教育で有名なアメリカ・バブソン大学と、ロンドン・ビジネススクールが、毎年各国の起業活動について調査し、生産年齢人口(18歳-64歳)100人当たり何人の人間が、会社の立ち上げに関わったかを推計したものです。ちなみに日本の起業活動指数は1.5で第22位と、起業社会へ移行しつつあるといっても、まだまだポーランドの起業数の方が断然多いのです。ご存知でしたでしょうか?私を含め、意外に思った方も多いのではないでしょうか?

確かに現在のポーランドでは、90年代の体制変換、そして2004年5月のEU加盟を経て、まるで雨のあとのタケノコのように、あちらこちらで新しい会社が生まれています。とりわけ多いのが、不動産事務所と自動車教習学校で、不動産取り扱い資格(日本でいう宅建のようなもの)の資格所得者の数だけ不動産屋があり、通りを見渡せば、各通りに一件ずつ自動車教習所がある(ちょっとこれは言いすぎですが)といった状況です。ラジオ・タクシーなどの大手タクシー会社も、経営形態は、個々の運転手ごとの個人タクシーのフランチャイズ経営扱いのようです(又聞きなので詳細不明。)私の身の周りを見渡しても、義父母や伯母、友人の多くが自営業登録しています。

それもそのはず、ポーランドでは、非常に簡単に個人経営会社を営むことができます。会計事務所に一切合切を頼めば、3・4日で新会社を設立できます。自前の会社を経営したいと思えば、明日にでも起業できるのです。会計や法律関係の細かいことは、会計事務所に外注すればそれでOK、難しい知識は一切必要ありません。

ただ起業活動指数が高いからといって、ポーランドの経済が豊かになったかというと、そうでもなくて、問題点も多く、他国と単純比較できない面もあると思います。まず第一に、ポーランドでは、税収を増やすために、自営業を優遇する方針であるということを聞きました。実際起業してみたものの、税金が払えなくて、2・3年で店じまいをしてしまうケースも後をたたないようです。第二に、ポーランドでは依然として労働者の地位が低いことが背景に少なからずあると思います。大手会社でも、雇用形態が一年契約や二年契約ということが多い上、突如のリストラも横行しており、これではローンも組めません。世界6位という莫大な数の起業数は、雇用状態がどれだけ安定していないかの裏返しに過ぎない面があります。

また本編でも紹介されていた、定年退職者のセカンドライフとしての起業活動というのも、もちろんポーランドでも多いのですが、日本で見られる「まだ現役引退したくない」「ボケ防止のために働きたい」というような前向きな理由ではなく、ポーランドの年金支給額があまりにも少ないため年金だけでは生活できない、という抜き差しならない切実な現実があります。

しかも会社の数が多すぎるのも、消費者にとっては結構やっかいなことに。。例えば先月、今度新しくこちらにくる友人のために、借家を探していたのですが、取り扱い不動産の数に対して、不動産屋が圧倒的に多すぎるためで、探す方としては、効率が悪くてしかたありませんでした。なにせ、~ズローチまで、○平米、~通り付近、などの条件を提示すると、それに合致する物件が、各不動産屋あたり、一・二件しかないのです。(かなり広範囲の条件でもです!)不動産屋を一件訪れて、物件を一件みて、また次の不動産屋を訪れて、またもう一件みて、借家一つ手配するのも、骨折り損のくたびれ儲けでした。


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