ポーランドからの報告

政治、経済からテレビのネタまで、詳細現地レポをお届けしています!

国民生命の日

2007年03月24日 | 一般

今日3月24日は、Narodowy Dzień Życia-「国民生命の日」 でした。新しい家族を築くことのすばらしさ、そして生命の尊さを国民一人一人が考える日ということで、2004年8月27日にポーランド国会で祝日に制定されました。

今年のテーマは Razem na zawsze-ずっと一緒にいよう!  新しい生命の誕生する場である家族、その家族の大切さ、両親が一緒にいることのすばらしさを考えよう、というテーマだそうです。今年で3回目と、まだまだ知名度が低いため、 ポーランド国営放送(TVP)の夕方のニュースなどで積極的にとりあげていました。

   

その夕方のテレビのニュースによれば、ポーランドの最近の離婚率は33%だそうです。カトリックのお国柄から、そして日本以上の住宅難から(離婚しても住む家がないため離婚できない)、以前は離婚はほとんどありませんでしたが、最近は多くなってきています。もちろん男女のごたごたはどこの国にでもつき物で、ポーランドでも、登場人物みんなが不倫しているメロドラマがあったりと、「離婚」というのはすごく日常的なテーマです。とはいえ西欧諸国に比べると、まだまだ低い数字なのが幸いといえます。(ちなみに日本の離婚率は38%)

またポーランドでも少子化問題は深刻で、女性一人が生涯に生む子供の数(合計特殊出生率)は 1.39(2004年度)と、他の先進国同様非常に低い数字となっています。 カトリックが国教のポーランドでは、生めよ増やせよをモットーに多産を賞賛しているため、妊娠中絶は原則ご法度、出産も医療保険で一切無料なのですが、出生率が一向に伸びません。幸い私の周りでは、私自身を含め最近ベビーブームなので、少し期待したいところです。ちなみに 「赤ちゃんポスト」 の制度が日本でも熊本市の慈恵病院で導入されて話題になりましたが、ポーランドでもいち早く導入されており、 少子化対策への取り組みは非常に積極的です。この「生命の日」の祝日の制定で、さらなる出生率の伸びが望まれています。

ところでここはひとつ、日本政府にも同様の祝日なりキャンペーンを、是非期待したいところです。


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ワレサ元大統領来日記念講演会

2007年03月07日 | 一般

元「連帯」のレフ・ヴァウェンサ(ワレサ)・元ポーランド大統領が、現在来日しています。来日記念講演が開かれるそうですので、お時間のある方は、ぜひ足を運んでみてください。

3月8日(木)15:00-17:00 駐日ポーランド共和国大使館にて
1989年以降のポーランドの民主主義への以降経緯と現在のポーランドの状況 
パネラー: 関口時正、田口雅弘、アグニェシュカ梅田、の各氏

3月9日(金) 15:00-17:30 文化学園にて
ポーランドと世界における共産主義から民主主義への道・連帯とレフ・ワレサ氏の役割 
パネラー: 関口時正、田口雅弘、アグニェシュカ梅田、の各氏

   
[写真]ヴァウェンサ元大統領が受賞したノーベル平和賞のメダルが飾られている
チェンストホーヴァ・ヤスナ・グラ僧院内の「連帯博物館」

ヴァウェンサ元大統領は今、新宿のヒルトンホテルに滞在されていて、日本の旗のとなりにポーランドの旗が仲良くかがげられているそうです。(日本在住の家族談)


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ポーランド人は馬鹿なのか?

2007年03月03日 | 一般

今年5月にヘルシンキで開催されるユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)に向けて、各国で国内予選大会などが行われています。一年に一度の全ヨーロッパの歌の祭典というところで、例年ならうきうきするところですが、今年のポーランド人は、心中穏やかでなくなっています。

なんでも今年のスウェーデン代表選・セミファイナルに出た歌手の歌詞に、「ポーランド人は馬鹿で~」というくだりがあったらしいのです。「その馬鹿げた歌詞を訂正しろ」「駐ポーランド・スウェーデン大使館は謝罪しろ」と、ちょっとしたスキャンダルになっています。

そこで今日は、「ポーランド人は馬鹿なのか?」を考えてみたいと思います。というより、このスキャンダルのせいで夫の機嫌が悪いということもありますので、ポーランド在住者として「ポーランド人は馬鹿ではない!」を主張してみたいと思います。

まず有名なところで、アメリカンジョークでは、ポーランド人は必ず「馬鹿」として登場します。18・19世紀に貧しいポーランド人がたくさんアメリカに移民したときに、英語もろくに話せないプアーホワイトとしての蔑称で、「ポーランド人=馬鹿」という図式が出来上がりました。実際にはこれらポーランド系住民は、二世・三世は弁護士や医者、大学教授などホワイトカラーの職業に付いている人も沢山おり、「ポーランド人=馬鹿」は全然正しくないのですが、ジョークでは、ポーランド人なら馬鹿と決め付け「ポーランド人の医者」といっただけで笑いがとれるとか。(精神科医である我が家の夫が聞いたら激怒しそうですが!)

しかも都合の悪いことに、このアメリカンジョークを通じて、「ポーランド人=馬鹿」の図式が世界的に有名になっています。ポーランド人移民が世界的に広がるにつれ、「ポーランド人=馬鹿」のジョークが世界各地に広がり、ちょっと前までポーランドと一切コンタクトのなかったスウェーデンでさえ、ポーランド人移民が増えるやいなや、歌の歌詞に「馬鹿のポーランド人」が登場。アメリカンジョークは日本でも広がっているようで、当ブログ「ポーランドからの報告」のアクセス解析をみても、「ポーランド人、馬鹿」のキーワードで検索されている方が多数いらっしゃいます。どうやら世界的に固定観念ができてしまっている模様です..

しかしポーランド在住者である私の印象では、ポーランド人は決して馬鹿ではありません。もちろん一口に「ポーランド人」とはいえず、個人差を考慮しなければいけませんが、「非常に賢い」人も多いです。国内には、レベルの高いことで知られるワルシャワ大学、ヤゲウォ大学(クラクフ大学)、アダム・ミツィエヴィチ大学などの名門大学があり、全欧から学生が集まっています。大学進学率は約10%ほどですが、高等学校の教育レベルも高く、例えばマトゥーラ(Matura)と呼ばれる高校終了認定試験の難易度は、日本のセンター試験ほどのレベルです。日本の受験生の全員がセンター試験を受験するわけではないことを考え合わせれば、かなりの高レベルといえます。(ちなみに私が見たのは物理の試験問題ですが、物理IIBまで出題されていました。ただ10年以上前のテスト問題だったので、最近は難易度が変わっているかもしれません。)私の知り合いのポーランド人も、みんな皆勤勉で努力家の人ばかりです。

「ポーランド人は賢い」には、科学的な裏づけもあります。以前の記事( ポーランド人はヨーロッパで二番目に頭がよい!? )でも取りあげましたが、科学的な調査によれば、ポーランド人は、馬鹿どころか、ヨーロッパで二番目にIQが高いことが証明されています。コペルニクス、キュリー夫人などの偉人を生んだ国であり、加えて民族的にIQが高いことで知られるユダヤ系住民の血が混じっている人も多いことから、この結果は妥当なところといえます。実際、ポーランド人移民が多いイギリスやアイルランドなどでも、ポーランド人の医者や看護婦はレベルが高いとの評判があります。

それでも何かにつけて「馬鹿」といわれるポーランド人... その理由のひとつには、ジョークを言う側に、「ポーランド人は馬鹿だと思いたい」という希望があるように思います。

すべての元凶であるアメリカンジョークが出来た時代、大挙して押し寄せるポーランド系移民は、同時期にアメリカに移民した他の民族にとって、脅威でした。ヒエラルキー社会のアメリカでは、人種の優劣、民族の優劣を決め、すべてにおいて順位付けをしないと安定しないため、何が何でも「ポーランド人=馬鹿」にしたいという時代背景があったのだと思います。

時代は下って近代のヨーロッパでは、2004年5月のポーランドら旧東欧10カ国のEU加盟、2007年1月のルーマニア・ブルガリア加盟で、政治的な東西の壁はほぼなくなりました。そしてこれら旧東欧加盟国のうち、とりわけ人口も多く農業大国であるポーランドは、旧加盟国にとっては驚異的な存在に化ける可能性があります。それを察してか否か、西欧諸国の人々の潜在意識の中に、「何が何でも西>東の図式を作っておきたい」という思惑が見え隠れしているように感じられます。

とりあえず、ユーロビジョン・ソング・コンテストのスウェーデン代表は、まだ決まっていません。3月10日のスウェーデン国内最終選考、Melodifestivalen 2007 に注目したいと思います。


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観光名所の落書き

2007年02月10日 | 一般

楽しみにしていた観光名所を実際に訪れてみたら... 汚くてがっかりだったということもたまにはあるかと思います。とりわけ老朽化や修復工事で汚いのならまだしも、人為的な理由、たとえば落書きで汚されていたら... 最悪です。

   

クラクフへの観光客のほとんどが訪れる、クラクフ郊外のヴィエリチカ岩塩坑。中世から残る岩塩坑として大変歴史的価値のある場所であることからユネスコ世界遺産に指定されており、とりわけ聖キンガ大聖堂などの数々の地下礼拝堂が大変美しいことで知られています。 しかしそれと同時に、残念ながら見るも哀れなくらい落書きがすごい場所です。

観光ルートであるダニオヴィチャ立坑の入り口を入ると、まずは地下64mまで木製の階段で一気に降りるのですが、すでにこの入り口から至るところ一面に落書きされています。ヴィエリチカ岩塩坑では、地下の岩塩坑という特殊な性質上、採掘後の空洞を支えるために、木の柱で足場が組んであるのですが、この木柱が落書きに最適!?らしく、一面いたるところ落書きだらけです。その落書きの一つ一つを見てみると、名前や出身地、訪問日を刻んだたわいないもので、本人たちは訪れた記念のつもりなのでしょうが... 白色に塗られた木柱の一番目立つ場所に、わざと目立つようにしてあったり... 他人の落書きを見せられる側は、決していい気持ちがしません。漢字やハングルの落書きも目立ちます。岩塩坑の管理会社側でも、この落書きには十年来頭を悩ませており、メンテナンスで木柱のペンキを全部塗り替えたり、落書き禁止マークをつけてみたりしているのですが、あまり効果はないようで、塗り替えた直後は落書きがなくても、しばらくして訪れると、残念ながら新しい落書きが増えています。(写真はポーランド・チェコ国境の町チェシンのお城の塔です。)


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聖母マリア信仰の総本山、ヤスナ・グーラ僧院

2006年12月08日 | 一般

古くから聖母マリア信仰の根強いポーランド。その信仰の総本山となっているのが、チェンストホーヴァのヤスナ・グーラ僧院です。ポーランド人なら、いやカトリック教徒なら生涯に一度は巡礼してみたい場所ではないかと思います。

   

しかしこのヤスナ・グーラ僧院ですが、一般の(キリスト教信者ではない)日本人観光客にとって、魅力的な観光地かというと、また別の話になるかと思います。というのは、ここはやはり本来観光地というより、巡礼地の要素が強い場所で、それゆえ写真なども撮りにくい雰囲気があります。ユネスコ世界遺産にも、1991年に申請していますが、いまだに登録されていません。

大手旅行会社のパックツアーでは、ヤスナ・グーラ僧院が旅行日程に入っている場合もありますが、個人旅行でポーランドに行かれる場合は、キリスト教徒の方以外は、あえて日程に入れる必要はないのではないかと思います。

   

大手のパックツアーで、ヤスナ・グーラ僧院が日程に組み込まれているのには、理由があります。一つには、チェンストホーヴァはワルシャワとクラクフの間の位置にあるため、 観光バスでの移動の場合、ちょうどよい中継地になること。ワルシャワ→クラクフをノンストップでバスで移動すると、6時間以上もかかり、お客さまも疲れてしまいます。そこで、ワルシャワ→(4時間)→チェンストホーヴァ→(3時間)→クラクフと移動することで、無理のない観光プランにすることができます。二つには僧院内の見学が一切無料だということ(=安上がりな日程が組める)。三つ目には、 旅行を企画しているのがポーランド人なので、ポーランド人の発想として、チェンストホーヴァ訪問は必須という考えになることです。(日本の旅行会社のツアーでも、ポーランド国内の旅程部分は現地の旅行会社に下請けに出しているためです。)

   

ちなみに、名物の「黒いマドンナ」のイコンや絵はがきなどは、クラクフやワルシャワなど他の街でも、みやげ物屋に行けば買うことができます。というわけで、私としては、このチェンストホーヴァのヤスナ・グーラ僧院は、ポーランド旅行2回目以上の、リピーターの方にお勧めしたいスポットです。


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聖母マリア生誕の日

2006年12月08日 | 一般

今日12月8日は、「聖母マリア生誕日」です。

国民の90%以上が敬虔なカトリック教徒の国、ポーランドでは、イエス・キリストの母、聖母マリアは、イエスや前ローマ法王ヨハネ・パウロ二世と並び、国民から深く愛されています。カトリックの祝日となっている8月15日の「聖母マリア帰天日」と異なり、今日の生誕の日は、特に行事があるわけではありませんが、それでも、一人一人が聖母マリアへの思いを新たにする日ではないかと思います。全国のマリアさんの名前の日でもあります。

名前といえば、古来より聖母マリア信仰が強いポーランドでは、昔からマリアという名前がとても人気でした。元々響きが良いのに加え、マリーシャ、マリシュカなどの愛称もかわいらしいのが、その理由ではないかと思います。

日本同様、ポーランドでも、名前には流行り・廃りがあり、最近はマリアという名前の子供をあまり見かけませんが、それでも、アンナ・マリア、ベアタ・マリアのように、セカンドネーム(Drugie Imię)と命名するケースは多いようで、今でも根強い人気を誇る名前だといえます。


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ポーランド人との恋愛・国際結婚

2006年12月01日 | 一般

日本は今、結婚総数の20組に1組が国際結婚という、国際結婚ブームを迎えています。

そんな中、ここ数年、ポーラン人と日本人のカップル・ご夫婦が急増しています。ポーランドと、日本-かつての社会主義の時代こそ、自由な行き来もままらなかった両国ですが、ポーランド人と日本人というのは、不思議と相性があうようです。

   

興味深いのは、この最近増えている日ポのカップルのうち、その多くは、イギリス、アイルランド、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、日本でもない、ポーランドでもない、第三国で出会ったケースなんです。とりわけ、男性がポーランド人、女性が日本人の場合、その圧倒的多数が、第三国で出会い、結婚してそのまま居住しています。(手元に統計等ないので断言はできませんが)

確かに、アメリカ、カナダ、オーストラリアには、昔からのポーランド人移民が多数住んでいますし、2004年5月にポーランドがEUに加盟してからは、ポーランド人労働移民が、イギリス、アイルランド、スウェーデンに怒涛のように押しかけました。国外のポーランド人コミュニティは、いまや1000万人近くいるといわれています。しかしポーランド人が一番多く住んでいる国は、もちろんポーランドです^^ 「それなのに、第三国で知り合うケースのほうが、ポーランドや日本で知り合うケースより多いのは、なぜなんだろう」 そうふと思い、その理由を思案してみました。

   

もちろん第一の理由は、絶対数の差でしょう。アメリカ、カナダ、オーストラリアなどの国には、留学やワーキングホリデーなどで多数の日本人が住んでいますが、一方ポーランド国内に住んでいる日本人は、たったの千人、しかもその多くが家族で来ている日本企業駐在員の方です。また日本に住んでいるポーランド人も数百人程度です。当然ながら、日本人、ポーランド人の絶対数が多ければ、それだけ素敵な出会いの数も多くなりますよね。

しかし、私がもう一つ考えたのが、ポーランドに住んでいるポーランド人と、ポーランド国外に移住しているポーランド人の、質の差。どういうことかというと、日本人にも、国際結婚にあこがれる人と、結婚は絶対日本人同士で、という人がいるように、当然、ポーランド人にも、国際的な人と、保守的な人がいます。

そしてEU加盟後も相変わらず先行きが怪しいポーランドでは、英語がしゃべれて、ある程度の教養がある国際派のポーランド人の多くが、とっくにポーランドを脱出して、イギリスなど他国に移住済みなんです。(首都ワルシャワではそうでもありませんが、やはり地方に行くほど、この傾向にあります。)なにせ最近のポーランドは、まったくいいことなし。例えば先日のニュースを挙げても、数年前に始まった社会保障年金制度がもう破綻しそうだというニュース、郵便配達員が賃金値上げを求めてストライキをしているニュース、来年からまたガス代値上がりのニュース... 明るいニュースがあまりありません。

   

もともとポーランド人、とりわけ男性は、結婚ということに関してはかなり保守的です。殆どの人が「結婚はポーランド人同士以外考えられない。100歩譲って、同じキリスト教徒のヨーロッパ人」と考えているんです。というかイギリスやアイルランドに移っても、ポーランド人同士で固まって住み、ポーランド人同士でカップルになるのが、ポーランド人ですから。(もちろん例外もあるでしょうが、大雑把にこういう傾向はあります。)

「宗教も違う、文化も違う、そんな外国人とも仲良くなりたい。恋愛の相手はポーランド人にこだわらない」-こういう前進的な考え方ができるポーランド人の多くが、とっくに国外脱出済み、だからポーランド国外でのほうが、かえって素敵な出会いの確率が高くなるのでは、と思うのです。

とまあそういうわけで、ポーランド人と仲良くなりたい人、恋愛したい人がもしいたら、ポーランドに住むより、イギリスやアメリカ、オーストラリアなど第三国に住むのが得策かもしれません。私が気が付いた限り、ポーランド人に限らず、チェコ人、スロバキア人、クロアチア人、セルビア人、ボスニア人、ルーマニア人など、中欧・東欧の国の方と恋愛・国際結婚されている方の多くが、やはり第三国で出会ったケースのようです。-中欧・東欧の人との恋愛は、本国より国外で出会ったほうが、うまくいく-なんてそのうち言われるようになったりして!?


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石炭鉱山での爆発事故を受けて...

2006年11月23日 | 一般

ルーダ・シロンスクでの石炭鉱山での事故発生から40時間以上たって、事故の状況が徐々に明らかになってきています。まず、今回の事故は人災の疑いが極めて強いことが、早くも指摘されています。その後の調べで、事故で亡くなった作業員は、正規の訓練を受けていない、外部からの派遣作業員であったこと、経費削減・営業利益を第一にしたために、安全性がないがしろにされたことが、悲劇につながったという見方が出ています。

石炭鉱山での仕事は、非常に危険で、専門知識が必要とされる仕事です。当然のことながら、にわか仕立ての派遣スタッフに、このような専門的な仕事が勤まる訳がありません。しかも聞くところによると、これらの派遣労働者は、月給800ズローチ(約32,000円)という、信じられない低賃金で働かされていたそうです。命の危険を伴う仕事が、月給800zlとは、およそありえない金額です。

しかし事故のおきたシロンスク地方は、非常に失業率が高い地方で、労働者には仕事を選ぶ余裕がありません。危険と承知していても、ほかに仕事がないから、働くしかない-今回の悲劇には、このようなシロンスク地方全体が抱える大きなジレンマが背景にありました。


ところで、クラクフ郊外の、ヴィエリチカやボフニャの岩塩坑を訪れたことはありますか?とりわけ、ヴィエリチカ岩塩坑は、ユネスコ世界遺産に指定されており、毎年多数の観光客が訪れる場所です。当時の鉱夫の作業の様子を紹介した模型などを見ながら、地下の坑道を2時間に渡って散策する観光コースとなっており、とりわけ、地下100メートル余の聖キンガ礼拝堂は、天井のシャンデリアから、中央の祭壇、周囲の彫刻にいたるまですべて岩塩でできており、一見の価値ある場所です。

   

でも、なぜ、このような岩塩坑の地下に、礼拝堂ができたのでしょうか?それは、ヴィエリチカやボフニャの岩塩坑においても、昔からメタンガス爆発による死亡事故が相次ぎ、鉱夫らが、毎日死と隣り合わせの過酷な条件で働いていたからです。そのため彼らは非常に信心深く、毎日仕事のはじめに、一日の無事を祈ってミサをささげていました。そのうちに、岩塩を掘って空いた空間に、木造の祭壇と十字架を設置して、専用の礼拝スペースとしたのが、地下礼拝堂の起源なのです。その後、ガス爆発の時に、火の回りが速くなるという理由で、木製の十字架や祭壇が禁止されたため、代わりに岩塩を彫刻して、このようなすばらしい礼拝堂を創り上げたという所以なのです。

   

岩塩の結晶でできたシャンデリアに、壁一面を覆う彫刻-聖キンガ礼拝堂は、思わずため息がでるような、本当に素敵な礼拝堂です。でもその成立の背景には、いくつもの尊い命の犠牲があったこと、そして今日でも、シロンスク地方の石炭鉱山では、過酷な条件で働く鉱夫らが、ヨーロッパのエネルギー生産の礎となっていることを、少しでも多くの人に知ってもらえたら、と思います。


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石炭鉱山で爆発事故発生

2006年11月23日 | 一般

22日夕方、ポーランド西部の町、ルーダ・シロンスカ(Ruda Śląska )の石炭鉱山で、メタンガス爆発により、作業員23人が亡くなる事故がありました。この事故を受け、ポーランドでは現在、土曜日まで3日間の国喪期間に入っています。この期間、コンサートやイベントなどの催し物は、すべて延期か中止になりますので、ご注意ください。

事故があったのは、ルーダ・シロンスカの、HALEMBAという石炭鉱山で、ポーランドで最も危険な鉱山にランクされている、いわくつきの鉱山です。ここでは数年前にも19人が亡くなる事故があり、昔から安全管理体制が疑問視されていました。今回事故がおきた坑道は、危険度が極めて高いという理由で、今年3月に閉鎖されていた区画で、今回の事故は、その区画の処理をしている最中に起きた事故といわれています。

そして事故は人災の疑いが極めて強いことが、早くも指摘されています。その後の調べで、事故で亡くなった作業員は、正規の訓練を受けていない、外部からの派遣作業員であったこと、経費削減・営業利益を第一にしたために、安全性がないがしろにされたことが、明るみになっています。

シロンスク地方は、昔から石炭の採掘が主な産業となっており、Halembaのような石炭鉱山が各地に点在しています。西ヨーロッパへの輸出量も多く、ヨーロッパでの石炭需要の多くをまかなっています。今回の事故を受けて、ドイツ、ウクライナなど近隣各国から、いち早く弔いのメッセージが寄せられました。

今日23日は、現地にて、犠牲者の共同ミサが執り行われました。事故で亡くなられた方の冥福を、心よりお祈りします。


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ポーランドの交通事故事情

2006年11月01日 | 一般

11月1日はカトリックの万聖節で、ポーランドでも他のヨーロッパの国同様、今日は祝日です。

万聖節の日、敬虔なカトリックのポーランド人は、キャンドルとお花を手に先祖のお墓参りに行きます。一年に一度の大切な日です。そのため毎年ポーランド各地で里帰りの車の大渋滞がおき、あちこちで交通事故の犠牲者がでる悲しい日でもあります。

万聖節の日に限らず、クリスマス休暇やイースター休暇など、連休で里帰りラッシュとなる時は、いつも必ず数十人単位の交通事故犠牲者がでます。そんなわけで、連休が近づいてくると、また交通事故のニュースを聞くのかと、悲しくなります。


そんなポーランドの交通事故事情ですが、日本に比べて非常に悪いといえます。例えば2002年度の交通事故死亡者は5827人でした。 ポーランドの人口は日本の1/3ですので、いかにこの数字が大きいものかがわかると思います。

交通事故が多発する理由として、ドライバーの運転マナーが悪いこと、交通ルールがあまり守られていないこと、土地が平坦なのでスピードが出やすいこと等があります。またポーランドの所得水準がまだまだ低いため、中古車を購入する人が多く、事故を招きやすいというのもあります。現に、日本だったら絶対に車検を通らないような車(ブレーキが利かない等)が、普通に走っていて、びっくりすることも一度や二度ではありません。


とりわけ、対向車線からの追い越し、ポーランドでは普通に行われていることなのですが、これが非常に危険です。いつもこっちでタクシーやバスなどの助手席に乗っていて、ドライバーが対向車線へとハンドルを切る度に、危険だからやめてもらいたいと内心思うのですが、ドライバー本人は一向に気にしている様子がありません。

ポーランドでは、片側一車線ずつ、合計二車線の道路でも、対向車線に出ての追い越しが、合法的に認められている区間があります。とくに農村部などでは、農業用トラクターや積荷を積んだ馬車などが、乗用車に混じって国道や県道を走っており、確かにこれを絶対に追い越さないと、そこから渋滞になってしまう、という状況が間々生じます。そういう場合に、片側が一車線しかないので、対向車線からの追い越しが可能なのです。

しかしこれは鉄道で言えば、複線区間の逆行のようなもので、追い越そうと対向車線に出たとき、向かいから対向車がきたら、正面衝突するわけです。信号で管理されてる鉄道と違って、車の運転の場合、タイミングを誤って対向車線にでて、そこへ対向車が来てしまったら、一環の終わりです。当然、もっとも交通事故が多発するケースとなります。


その悲劇の最たる例が、今から約一年前におきた、アテネオリンピック・女子競泳の金メダリストで、国民的スターだった、オティリア・イェンジェイチャク選手 が起こした交通事故です。

オティリアは、弟さんを助手席に乗せて運転中、追い越しをかけようと対向車線に出たところ、対向車が来てしまい、対向車を避けようとハンドルを左に(沿道方向に)切って、沿道の木に激突しました。 この事故で、オティリアは幸い命に別状はありませんでしたが、助手席の弟さんが亡くなってしまいました。この日は弟さんの19歳の誕生日で、二人は弟さんの誕生日パーティのために、実家に向かうところだったんです。

この事故では、オティリアの無謀運転の責任を問う声が多く、アテネで金メダルをとり、国民的スターとしてCMクイーンだったオティリアも、この一件以来、すっかりCMから姿を消してしまいました。特に弟さんの無念さに同情する声が後を絶たず、全ポーランドが涙した事件でした。公共広告機構(AC)でも、この悲劇を受けて、交通事故防止キャンペーンCMを、新たに数多く製作しました。


それでも交通事故は減らず.....
今日も新たな悲劇のニュースが報道されています。


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