ポーランドからの報告

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ポーランド、EU全加盟国の労働者に国境を開く

2007年01月12日 | 政治・経済

今年1月1日にルーマニア、ブルガリアが新規加盟して、欧州連合(EU)は全27カ国となりました。かつての北欧・西欧・南欧・東欧が一つに融和し、ますます国境のない世界になったかというと... たとえば就労に関しては、決してそうではなく、現在の段階では、加盟国間で、相互に自由に就労できるわけではありません。例えばポーランド人が就労できる国は、ポーランド以外では、今のところイギリス、アイルランド、スウェーデン、スペインなどに限られています。EUの大国ドイツとフランスは、すでに国内に大量の労働移民を抱えているため、ポーランド人の労働移民は基本的に許可していません。労働市場を完全に開放しているのは、加盟全27カ国中、現在のところスウェーデン、フィンランドの2カ国だけです。

そのポーランドが、昨日1月11日をもって、EU加盟全27カ国の労働者に対し、門戸を開くことになりました。

   

果たして今回、ポーランドがEU全加盟国の労働者に対して国内での就労を認めることで、ポーランドに新規の労働者がやってくるのでしょうか?ポーランドの賃金レベルは、これまでのEU加盟国25カ国中、残念ながらかなり下の方ですので、今回国境を開放したからといって、西側から労働者が流れ込むことは殆どないでしょう。注目するべきは、新規加盟のルーマニア、ブルガリアからどれだけ労働者が流入するかです。

ついに念願のEU加盟を果たしたルーマニア、ブルガリアでは、二年半前のポーランド同様、これから百万単位の労働者が、国外脱出を計ることが予想されます。もちろん、みな少しでもよい仕事を求めて、賃金の高い西欧・北欧への移住を希望しているはずですが、残念ながら、2004年5月以前の旧加盟国の13カ国では、早くも今回加盟したルーマニア、ブルガリアからの労働者の流入を規制が決定されました。ドイツ、フランスはおろか、当初移民に比較的寛容だったイギリスとアイルランドも、あまりの東欧移民の流入の多さに、ついにルーマニア、ブルガリアに対しては、当面のところ労働移民を許可しない「モラトリアム」措置をとるという方針に変わってしまいました。したがって、ルーマニア人、ブルガリア人が今の段階で無条件で就労できる国は、ポーランド、チェコなど旧東欧8カ国+スウェーデン、フィンランドということになります。(ハンガリー・マルタは一部規制あり)

このうち、ポーランドにどれだけの数の新規労働移民がやってくるか、つまりルーマニア人、ブルガリア人にとって、果たしてポーランドという国がどれほど魅力的な国なのか、ということですが、これも現在の段階では未知数です。一般のポーランド人の頭の中には、ポーランド>>>>>ルーマニア、ブルガリア という物の見方があるのですが、ルーマニア人、ブルガリア人の方では、ポーランドをどう見ているんでしょうか?まあ普通に考えて、まずスウェーデン、フィンランドに行くと思います。加えて、ポーランド語習得が容易なブルガリア人に対し、ルーマニア語を話すルーマニア人の方は、苦労してポーランド語を習得してまでポーランドで働きたいという人は少ないと考えられます。果たしてどうなるでしょうか。

こういろいろ考えあわせると、今回ポーランドがEU全加盟国の労働者に門戸を開いたことで、そうすぐにポーランド人の失業率に変化が現れるということはないように思います。実際、EU圏外のロシア、ウクライナ、ベラルーシなどから常時流入している不法移民労働者の方が、今後も数としては問題となってくるでしょう。

EU加盟からまもなく3年を迎え、ポーランドの政治・経済もそろそろ分岐点に差し掛かるころです。ただでさえ失業率の高いポーランドですが、これからどのように経済が動いていくのか?今後もポーランドの政治・経済の動きに注目していきたいと思います。(写真はチェーシン(Cieszyn)のポーランド・チェコ国境です。写真右端の川が国境)


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