レイニ-サイド ハ-パ-ズパブ

金属弦ケルティックハ-プ奏者「坂上真清」の演奏やCDの情報、またこれまでの音楽の動画などを中心に紹介しています。

「サークルカラー」収録全曲解説

2023年05月30日 | 4thソロ「サークルカラー」

 

   

 

4作目のソロ サークルカラー

1月からダウンロードとサブスクで配信中です。

 

この作品はCD化していないので

Twitterで1曲ずつ公開していた各曲の解説を

こちらでまとめておきたいと思います。

 

 

収録曲1曲目はスローリールのセット

Jug Of Punch / Paddy Ryan's Dream。


Jug Of Punchの出処は

サークルカラーで演奏している

安井敬さんからもらった手書き楽譜から。


Paddy Ryan's Dreamは

楽譜O'Neill's Music of Irelandから。

 

安井さんはBoys of the Loughのレコード

Farewell and Remember Meから

Jug Of Punchを覚えた言っていた。


Boys of the Loughは

シェットランド島出身が1人、

アイルランド出身が2人、

スコットランド出身が1人という

混成メンバーなのでどこの曲かは

手元に資料が無く分からない。


80年代に最も早く日本に来た

トラッドバンドの1つだった。


Paddy Ryan's Dreamは本来はスローでは無く

普通のリールとして載っていたもので

キーもAmから都合のいいBmに上げている。

 

ここで安井さんが吹いているのは

通常より1オクターブ低い

通称ローホイッスルと呼ばれているもの。


ちょっと聴くと尺八に似た音で

低音楽器好きな自分にとっては

多分一般のホイッスルより好きかもしれない。

 

 

 

収録曲解説2曲目は O'Carolan の Hewlett。

 

この曲はいつ覚えたのかが

はっきりしていないけど

恐らくはChieftains4 か

Planxty の The Well Below the Valley の

レコードからのどちらか。


本来はもっと早く演奏されるべき曲だが

ここではテンポを落として

ワルツ風に演奏したのでタイトルもあえて

Hewlett Waltzにした。

 

一応O'Carolanはワルツは

作ってないので念の為。

 

自分が通常 O'Carolan の曲の基準としている

Donal O'Sullivan の全曲集だと

メロディーが結構違っていて

この曲に関しては未だに馴染めない。

 

やはり最初に覚えたものが

自分にとっての基本になるという事だろう。

 

シターンは牛沢朗さん、

アイリッシュフルートは飯田知子さん。


当時は3人でよく演奏したので

そままの形でのレコーディングになった。


この曲の牛沢さんのシターンの

バッキングは今聴き直しても素晴らしいと思う。


シターンというのは

大型のマンドリンみたいなもので

ブズーキよりもネックが短い。

 

 

収録曲解説3曲目は

アイリッシュセットダンスと

ホーンパイプのセットで

King Of Fairies / Fairies Hornpipe。


King Of FairiesはEileen Mongerの

レコードから。

 

Fairies Hornpipeは

ClannadのIn Concert というライブ盤から。

 

当時この2曲を続けて

フェアリーセットと呼んでよく演奏していた。


一聴すると2曲共同じリズムなので

ホーンパイプに聴こえるが

King Of Fairiesは正確には

セットダンスというジャンル。


特徴はあるステップに合わせて

作られた曲の為前半は

普通の8小節だけど後半はもっと長い。


King Of Fairiesは16小節なので

この演奏も前半は2回繰り返し、

後半は繰り返し無しにしている。

 

コンサーティーナは特にユニット名

は無かったけど天王洲アイルにあった

ラウンドストーンなどでよく

デュオ演奏した柳澤聡美さん。

 

サークルカラーにも3曲参加している。


個人的には自分の周りでは1番上手い

アイリッシュコンサーティーナ奏者

だったと思っている。

 

 

収録曲解説の4曲目は

アイリッシュエアーの

Bruach Na Carraige Baine(白い岩の岸辺)。


出処はまだエンヤが在籍していた時の

ClannadのFuaimから。


そこではハープ中心のインストだったので

実は歌だと知ったのは何年も後の事だった。


自分が知っているアイルランドの音楽の中で

最も美しい曲の1つだと思っている。

 

アイリッシュフルート飯田知子さん、

ホイッスル安井敬さん。


レコーディング前からもう

この楽器の組み合わせで

アレンジが頭の中で鳴っていた。

 

最初に聴いたのがClannadだったので

それと同じハープと笛の組み合わせが

今も1番しっくりくる。


まったく同じ安井さん、飯田さんとの3人で1度

ラウンドストーンで演奏したのも忘れられない。

 

 

収録曲解説5曲目は

Drunken Tinker / Ivy Leaf / Wild Irishman

のリールセット。


Drunken Tinker は

安井敬さんにもらった楽譜から、

 

Ivy Leaf はEileen Mongerのレコードから、

 

Wild Irishman は

Irish Traditional Music Session Tunes

Vol.2から。

 

この楽譜90年代に重宝していたけど

今はもう無い様だ。

 

ボタンアコーディオンは吉田文夫さん。


当時何かのライブで吉田さんと赤澤さんが

東京に来ると言うのでそれなら

レコーディングに参加してもらおうという話に。


昼に2人でスタジオに来てもらい終了後は

夜のライブに間に合うように車で駅まで送った。

 

吉田さんの車には何度も乗ったが

自分が乗せたのは多分この1回だけ。

 

強い雨の日だった。

 

2002年のレコーディングから20年目の昨年に

1曲ずつ音源を公開し始めた矢先、

吉田さんは自分の演奏を聴かないまま亡くなった。

 

あと2ヵ月早くアップして連絡していれば、、

後悔の念は今も尽きない。

 

当初ネット公開が目的だったサークルカラーを

正式な自分のソロ4作目として発表したのは、

勿論20年前に発売を前提に参加してくれた

演奏家の人達への約束を

果たすというのがあったけど、

吉田さんとの30年以上の付き合いの中で

デュオで演奏した唯一の音源を

公式な形で残したいというのがとても大きかった。

 

 

収録曲解説6曲目はLord Mayo。


この曲を知ったのは

90年代ブルターニュの女性金属弦ハーパー

Katrien DelavierのHarpes D'irlandeから。


ブルターニュで金属弦ハープと言えば

ケルティックハープの祖と言っていい

Alan Stivellがいるけどこの人も相当素晴らしい。

 

ファンの間ではルナサの影響もあって

マーチとして認識されているが

本当はO'Carolanと同時代のハーパー

Devid Murphyの作った歌。


O'Carolanと犬猿の仲だった彼は

メイヨー卿(Lord Mayo)の庇護を受けていたが

クリスマスの日に何かで

メイヨー卿を怒らせてしまい

数年間屋敷を追い出されてしまう。

 

助けを求めた友人の助言により

あるクリスマスイブの日に屋敷を訪ね

この曲と共に謝罪をしたのだそう。

 

ゲール語の詞も残っているけど

ここまでおだてるか、という内容。


でも当時のハーパー達は臆面も無く

これが出来る人間じゃないと

パトロンに付いて生涯を送る事なんて

無理だったんだろう。

 

演奏はシターン牛沢朗さん、

アイリッシュフルート飯田知子さん。


この3人の組み合わせでは

レコーディング前年の2001年に

ティアラこうとうで開催された

アイルランドの女性詩人Nuala Ní Dhomhnaill

のゲール語詩集「ファラオの娘」

出版記念コンサートでの演奏が印象深い。

 

 

収録曲解説7曲目はスリップジグのセットで

Tipperary Hills/Dever The Dancer。


Tipperary Hillsは当時演奏家は皆使ってた

Traditional Music Session Tunesから。

 

Dever The Dancerは

Alan StivellのLive in Dublinから。

 

ホイッスルは安井敬さん。

 

アイリッシュを始めた90年代は

関西では吉田文夫さん、東京は安井さん達と

よく一緒にやっていた。

 

Dever The Dancerは1993年に開催した

ケルティックフェスティバルで

安井さんと一緒にファーイーストセッションで

演奏した想い出の曲。

 

このレコーディングを

お願いしたのもその為だった。


余談だけどこのイベントに

PlanxtyのあのLiam O'Flynn が来ていた事は

アイリッシュ演奏家でも知らない人が

多いんじゃないだろうか。

 

2003年ケルティッククリスマス来日の10年前。

 

ブルターニュからはBriecも来ていた。

 

 

収録曲解説8曲目は

O'Carolan の Isabella Burke。

 

出処はアイルランド出身アメリカ在住のハーパー

Dennis DoyleのCDから。


ケルティックフェスティバル97で

インターナショナルハープリサイタル

というのがあり

彼の他にスコットランドWendy Stewart、

ウェールズElinor Bennetの3人が来日。

 

観に行った知り合いが

その場で彼のCDを買ってきた。

 

また撮ったビデオも見せてもらったら

3人の中で最も小型のハープを弾いてて

ゲール語で歌う本当の

シーベグシーモアを初めて聴いた。

 

最近はCDも作ってない様だけど

元気で活躍しているだろうか。

 

ホイッスルは最多参加の安井敬さん。


この楽器は高い音ほど強く吹いて

耳に痛い事が多いけどまわりで

この音色の様に吹けるのは安井さんだけだった。

 

自分は結局指が早く動くテクニシャンよりも

音の綺麗な演奏家が好きなんだろう。

 

音の綺麗な演奏家は

常に自分の出している音に責任を持っているから。

 

 

収録曲解説9曲目はアイリッシュマズルカセット

Charlie Lennon's Mazurka / Donegal Mazurka。

 

出処は共に楽譜Traditional Music Session Tunesから。


マズルカは元々ポーランドの3拍子舞曲だけど

アイルランド人が作ればポルカもマーチもワルツも

すべてアイリッシュ〇〇となるのがお約束。

 

Charlie Lennonは

アイルランドの作曲家、フィドラー、教育者。


経歴で興味深いのは彼が

1960年から1968年まで

リバプール大学にいたという事、

 

だとするとデビュー前のビートルズと

同じ時期に同じ町で暮らしていた訳で

もしかしたらペニーレインで2人のレノンが

すれ違った可能性だって十分に考えられる。

 

Charlie Lennon's Mazurka の

アイリッシュフルートは飯田知子さん、

 

Donegal Mazurkaの

コンサーティーナは柳澤聡美さん。


2人とも当時天王洲アイルのラウンドストーンで

よくデュオで演奏していたけど

何故か3人一緒というのは記憶が無い。

 

多分時期がズレていたからか、、


その意味でもこの曲で3人で

演奏出来たのはとても嬉しかった。

 

 

収録曲解説10曲目はブルターニュ3曲セット

Santez Mari,Mamm Doue / Gavotte / Plinn。


Santez Mari,Mamm Doueは

楽譜 The Celtic Harpから。

 

Gavotteは

Michael Tubridyの

The Eagle's Whistleから。

 

Plinnは

ブルターニュの女性金属弦ハープ奏者

Violaine Mayorの

Danse Avec Les Féesから。

 

Violaineといい

前で紹介したKatrien Delavierといい

ブルターニュには素晴らしい

女性の金属弦ハープ奏者が多い。

 

Alan StivellのDNAが脈々と

受け継がれているという事か。


Violaineも2001年以降CD出してない様だけど

元気に活動しているだろうか?

 

いくら本国で演奏していても

こちらには伝わってこない。

 

ギターは牛沢朗さん、フィドルは赤澤淳さん。


赤澤さんは吉田さんと東京にライブに来た時

昼に2人でスタジオに来てもらった。


ブルターニュの楽器ボンバルドの様に

入ったり出たりしながら弾いて欲しいと

お願いしてこの感じに。


当時はこれをラストにする予定だったので

フェイドアウトになっている。

 

あと1曲目のハープソロから

2曲目に移る時の牛沢さんの弾く

ギターイントロは今聴いても惚れぼれする。


このシンプルだけどツボを得た感じは

沢山の音楽の下地が無いとまず出てこない。

 

アイリッシュだけ聴いている

人間にはまず無理だろう。

 

 

サークルカラー収録曲解説11曲目ラストは

唯一のオリジナル曲Dingles View。


この曲は2002年のレコーディングよりも

10年近く前に当時持っていた

シンセサイザーで作ったもので

デモ演奏をカセットテープに残していた。

 

曲のインスピレーションは

スコットランドのWhistlebinkies

レコードから。


ブリッジのメロディーが2回転調している為

ハープで弾くのがとても困難な曲でもある。


これを聴いたアニメ灰羽連盟サントラ ハネノネ

プロデューサーが使いたいという事で

ドナバークに作詞と歌を依頼して

4日間でWonderingにリメイクした。


フィドルは西嶋佐知子さん、

ホイッスルは安井敬さん、

コンサーティーナは柳澤聡美さん。


この順番で別々の日に1人ずつ

スタジオに来てもらい徐々に音を重ねていった。


曲のタイトルは1998年北島町のコンサートでの

吉田さんと赤澤とのユニット名から。

 

当時はCDタイトルにも使おうかと考えていた。

 

ハープはサークルカラーで

唯一小型でナイロン弦のイブを使用。


Wonderingでは

通常の大型の金属弦ハープを弾いている。

 

 

尚サークルカラーすべての曲は

今度新たに開設した

坂上真清オフィシャルネットショッブ

Celtic Harp Market からダウンロード

出来る様になりました。

 

よろしくお願いします。

 

 

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追悼 あらひろこさん

2023年05月24日 | ハンドリオン 演奏動画 PV

 

   

 

先日若くして亡くなられた

北欧の楽器であるカンテレ奏者の

あらひろこさんとは

10年前の6月に音や金時で

あらさんと嵯峨治彦さんのユニット

ラウマとハンドリオンとの

ジョイントライブを行いました。

 

あらさんからハンドリオンと

一緒にと言ってもらい実現したライブでした。

 

当時の模様を書いた ブロク です。

 

今改めて読み返すとハンドリオンの

2ndCDが完成したらそれを持って

北海道に伺います!

と約束していた事を思い出しました。

 

結局は完成後1度も行く事は

出来ませんでした、、ごめんなさい。

 

その時のジョイントライブ音源が

幸運にも残されているので

最後に全員で演奏した

ムジカハンドリオン 収録の

教会残照 という曲をアップしました。

 

出だしはカンテレと金属弦ハープのユニゾン

途中チェロみたいに聴こえるのは

嵯峨治彦さんの馬頭琴。


音や金時の豊潤な響きも花を添える様です。

 

謹んでご冥福をお祈りしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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贅沢な組曲「愉快なヨーロッパ旅行」

2023年05月16日 | ハンドリオン 演奏動画 PV

 

     

 

今日は 旅の日 という事で

3月からサブスク配信がスタートした

ハンドリオン 森のサーカス夜奏会

レコ発ライブからCDラストに収録した

"愉快なヨーロッパ旅行"の動画を。

 

森のサーカス夜奏会の作品では

この曲は拍手後のアンコール部分に

あたるパートになっています。

 

ヨーロッパ各地の踊りの音楽風な

オリジナルのメロディー4つを

繋げて1つの組曲にした贅沢な作りでした。

 

やり様によっては4つの別の曲として

作る事も可能だったかもしれませんが

でもヨーロッパのいろんな国へ

音楽の旅をするという雰囲気は

よく出ていると思います。

 

今から9年前の

渋谷 サラヴァ東京 での映像。

 

改めて聴いて音がすごくいいのに

驚いています ♪

 

 

 

 

 

 

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