「ぐるくん」のひとりごと

大好きな海のこと、沖縄のこと。 また今関心を持っている韓国語の学習、韓ドラ・レビューなど気ままな雑記

<781>『ロビイスト』から見えたこと・・・②潜水艦

2009年05月01日 | 韓国ドラマ
 ドラマ『ロビイスト』の終盤、ハリーとマリアがそれぞれ手掛けた母国韓国でのロビイスト活動の中心は「潜水艦」。

 当初は、排水量1800tクラスの潜水艦を新造すると言う設定で、「ハンソン造船」と「世宗(セジョン)重工業」が建造権を争う事に・・・

 しかし、ハリーが偶然助けた「元テゴングループ」のキム会長の長年の夢である、国産の「原子力潜水艦」の構想にふれ、ハリーもまた「原潜」への夢を抱く事に・・・

 結局、アメリカの反発にあい、「実現」はならずともいつの日かと言う「夢」を継続していく事になる。

 韓国海軍は、「独島(ドクド)問題」で日本との関係が緊張する中、排水量3000tクラスの潜水艦を新造すると計画変更を発表する。

 「セジョン」は、この規模の潜水艦を建造する施設も技術も足らない事から撤退。

 「ハンソン」も不法ロビー活動で摘発され、マリアは収監され頓挫。

 まさかの展開の中、伏兵でロビー活動をしていたジェイムスの推す「第一重工業」に決まる。


 またまた、ドラマの進行とは関係なく、「潜水艦」にフラグが立ったw

 実際、2006年8月9日に1番艦の「孫元一(ソン・イルウォン)艦」が蔚山(ウルサン)現代(ヒョンデ)重工業から進水している。

 

 東海(日本海)で、日々音もなく展開しているアメリカ・日本・中国・ロシア・韓国・北朝鮮間の潜水艦作戦に、「韓国の新しい切り札」が登場したと大々的に報道された。

 従来型の潜水艦に比べ、作戦能力と基本性能を大幅に強化した214級潜水艦だそうだ。

 艦名は、初代海軍参謀総長の孫元一提督から付けられた。

 
 ↑ この人

 アメリカ、ロシア、中国の大型原子力潜水艦には及ばないまでも、ディーゼル・電池を動力に使う現行の潜水艦の中では、最高の性能と評価されていると公表している。

 孫元一艦の配備で、韓国海軍の水中作戦の範囲は、韓半島沿岸からフィリピン、中国海南島にまで拡大したと言う。

 1800t級の孫元一艦は、韓国海軍の主力である209級(1200t)を製作したドイツ企業HDWが、従来型を更に高性能に改良したとしている。

 つまり「国産」ではなく、「ドイツ製」。

 ドイツから分解した状態で輸入し、韓国内で組み立てたようだ。

 孫元一艦には計40人の乗組員が乗船する。

 だが以前に比べ水の中で長く作戦できる分、乗組員にはいっそうの忍耐が要求されると言う。

 奥行き65.3m、幅6.3mの狭い空間で太陽を見ることなく長時間生活しなければならないからだ。

 同潜水艦の1隻当たりの価格は3.500億ウォン(約418億円)に達する。

 韓国海軍は、2018年頃までに総9隻の214級潜水艦を保有する計画だ。

 この進水式には、当時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領夫妻を始め、尹光雄(ユン・グァンウン)国防長官、李相憙(イ・サンフェ)合同参謀議長などなど、軍首脳部らが出席している。

 

 214型潜水艦 (U-Boote der Klasse 214)とは、ドイツのホヴァルトヴェルケ (Howaldtswerke-Deutsche Werft=HDW)により開発された通常動力型潜水艦の事。

 韓国は、3隻の214型を注文し、同国の現代重工業で建造した。

 1番艦の孫元一艦は、進水後、スクリューが発生させる騒音が大きく推進軸を交換している。

 翌2007年6月13日には、2番艦の「鄭地(チョンジ)艦」が進水、更に2008年6月4日に、3番艦の「安重根(アン・ジュングン)艦」が進水している。

 ちなみに、艦名の「鄭地」は高麗の時代(1383年)に被害を受けていた倭寇に大打撃を与えた英雄。

 「安重根」は、併合に対して消極的であった伊藤博文氏を暗殺し、死刑となっているが、韓国では「抗日闘争の英雄」「義士」と呼ばれている。


 速力:水上 22km/h (12kt) /水中 37km/h (20kt)
 速力 (燃料電池): 4~11km/h (2~6kt)  
 水上航続距離: 22,000km (12,000nm)
 水中航続距離: 770km (420nm) / 14km/h (8kt)
 燃料電池による航続距離: 2300km (1248nm) / 7km/h (4kt)
 深度: 400m
 と公表されている。


 原子力潜水艦は、理論上、数ヵ月にわたって水中に潜む事が出来るが、ディーゼル・電池を動力として使う従来型の潜水艦は、一日に1回以上水面近くに浮上し、空気の供給を受ける「シュノーケリング」を行わう必要があった。

 これによって、ディーゼルエンジンを稼動し、潜水艦の動力源である電池を充電するのだが、この時に、敵の海上哨戒機や艦艇のレーダーなどに探知され易い事が、従来型潜水艦の最も大きな弱点だと言われる。

 しかし、214級潜水艦は、2~3週間、「シュノーケリング」する必要がないそうだ。

 空気がなくても水中で稼動できる「大気独立推進or非大気依存推進」(Air Independent Propulsion=AIP)システムを備えているからだ。

 そのため、これまでの209級や北朝鮮のロミオ級、日本のおやしお・はるしお級、中国の宋級などの従来型潜水艦に比べ、214級は、およそ6倍強の戦闘力を持つと評価したいる。

 AIPシステム採用潜水艦の配備は、北東アジアで韓国が最初の試みと豪語している。

 世界的には、ドイツ、スウェーデン、フランス、ギリシャ、イタリア、ロシア、日本などが、AIPシステムの潜水艦を保有又は開発を行っている。


 日本の潜水艦が引き合いに出されているついでに、調べてみると・・・

 日本では、2007年12月5日進水、2009年3月30日竣工した新型通常動力型潜水艦「そうりゅう」が、AIPシステムとして、スウェーデンのコックムス社のケロシンと酸素を燃料とするスターリング機関を採用している。

 性能面では、従来艦と比較して大幅に向上していて、水中排水量4,200tは通常動力潜水艦としては世界最大だそうだ。


 韓国の潜水艦の大きさと同等の基準排水量 1850tクラスの潜水艦は、水中性能を重視した涙滴型潜水艦の第1世代と言われる「うずしお型」。

 既に、1996年を以って全艦退役し、除籍されている。

 「うずしお型」に続き、水中性能を重視した涙滴型潜水艦の第2世代と言われる「ゆうしお型」潜水艦(基準排水量:2,200t) 。

 海難事故を起こして有名な「なだしお」はこの5番艦として建造された。
 
 2008年3月に、やはり全館除籍されている。

 「ゆうしお型」に続く、第3世代の対潜型の「はるしお型」潜水艦(基準排水量:2,450t )。

 1987年から1995年までに7隻が建造された。

 「おやしお型」潜水艦(基準排水量:2,750t)は、1990年代より竣工。

 従来の「涙滴型」から「葉巻型」が採用され、船体構造も完全複殻式から部分単殻式へと変更されたそうだ。

 これに続くのが↑の「そうりゅう型」となる。

 潜水艦を純国産できる国は限られていて、日本は技術・能力面でも世界の五指に入るそうだ。

 日本の潜水艦は、通常エンジンの潜水艦の中ではかなり優秀だと言う。

 また潜水艦用の「超高張力鋼」に関しては、日本が世界最高レベルだそうだ。

 溶接技術もさる事ながら、アメリカの潜水艦より強度が高いと言われている。

 台湾は、退役した日本の潜水艦の売却を望んでいるが、中国を刺激する事が充分懸念され事から、実現していない。

 第二次大戦中、世界の海を先行していたドイツのUボートや日本の伊号潜水艦の技術が継承されているからか、両国は潜水艦関連技術は世界的に優れているようだ。


 ハリーが採用を望んだ「原子力潜水艦」。

 実際、韓国海軍での採用は可能なのか?  

 原子力潜水艦計画 → こちら

 『ロビイスト』のシナリオは、この辺の状況も充分リサーチした上での起筆だった事が判る。

 関連過去記事 → ドラマ『ロビイスト』 ・ 戦闘機

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