(3年前の)洪水災害の中、安倍首相が櫻井よしこ主宰の極右ネットテレビに生出演! 国民の生命より右翼仲間が大事なのか
左・自由民主党公式サイトより/右・櫻井よしこオフィシャルサイトより
大雨による洪水・土砂崩れ災害が起こり、いまだ孤立し救助を待つ人びとや不明者も多数のなか、今夜、日本の総理大臣・安倍晋三は何をしていたか、みなさんはご存じだろうか。
安倍首相は今晩21時から放送された、インターネットテレビ「言論テレビ」に生出演。その番組タイトルは、『「戦後70年安保法制」スペシャル 安倍首相生出演! 歴史的使命を完うする覚悟と戦略』。そう、完全に安倍首相を手放しで絶賛&応援する番組に、呑気に出演していたのである。
「歴史的使命を完うする覚悟と戦略」の前に、いまはまずやるべきことが目の前にあるだろ!と言わずにおれないが、安倍首相は先日の『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)に引き続き、自分をヨイショしてくれるメディアに癒やされに行っていたのだ。
その上、司会を務めたのは、今年8月6日の原爆投下日にわざわざ広島で「反核平和70年の失敗」(主催は日本会議広島)というイベントに講師として登壇した極右の女神・櫻井よしこ。ゲストは日本会議の会長・田久保忠衛という、安倍首相にとっては最高の布陣。……この人は、どうやらほんとうに自分を持ち上げてくれるメディアにしか出ないと本気で決めたらしい。
しかも、今回出演した「言論テレビ」は、櫻井が取締役会長を務める会社。櫻井といえば、ヘイトスピーチにまみれた「日本文化チャンネル桜」の常連組だったが、2012年はじめに「チャンネル桜」の水島聡社長と袂を分かち、同年10月に自らこの「言論テレビ」を立ち上げた。いわば、「チャンネル桜」の分家のような存在だ。
それはコンテンツを見れば一目瞭然。シリーズで行っている企画は「この憲法でいいのか!?」「中国に立ち向かう覚悟」「事実と歴史を歪めた朝日新聞」「原発と日本再生」、番組ゲストも百田尚樹に竹田恒泰、金美齢、青山繁晴などネトウヨ支持率の高い論客揃いで、政治家も「ヒゲ」こと佐藤正久、高市早苗、稲田朋美、萩生田光一など安倍チルドレンが多数出演。ちなみに、安倍首相の生出演が終わったあとに始まったのは、「WiLL」(ワック)編集長・花田紀凱による「WiLL場外論戦 花田編集長の右向け右!」。ゲストは、『なぜ中国人はこんなに残酷になれるのか』『なぜ中国から離れると日本はうまくいくのか』などのヘイト本で知られる石平だった。
どうしてこんな極右しか見ないであろう番組に出ることが、「国民に広く説明する」ことになるのか。むしろ「わかるヤツにだけわかればいい」という開き直りではないか。だいたい、いま、取り組むべきは安保法制の説明ではない。この夜も、生命の危険にさらされながら孤立している人びとがいて、行方不明のままの人たちがたくさんいる。「ほかの担当者がやっているから安倍首相には関係ない」と擁護する者もいるが、そんな訳がない。この夜に、自分を応援してくれる“偏向報道”のインターネットテレビに生出演することが、一国の首相の「仕事」だというのか? 不安のなかで過ごす人びとがいるのに、それを無視し、国民の感情を逆撫でするのが、この人の仕事なのか?
ずっと安倍首相のメディア出演を追い、批判してきた本サイトだが、さすがにここまでくると呆れて脱力するばかり。これがファシズム政権のなれの果ての光景というものなのだろうか。
(編集部)
逮捕された文科省局長は安倍政権に近い官僚だった! 裏口入学の交換条件の支援事業に加計学園も選定
文科省の現職局長が受託収賄容疑で逮捕されるという衝撃的なニュースが、今月4日、駆け巡った。文科省の科学技術・学術政策局長である佐野太容疑者が、私立大学支援事業「私立大学研究ブランディング事業」の選定で便宜を図る見返りに、自身の息子を東京医科大学に不正入学させたというのだ。
そして、このニュースにヒートアップしているのが安倍応援団やネトウヨたちだ。文科省といえば、昨年1月に天下り・再就職あっせんが問題となり、当時、事務次官だった前川喜平氏が引責辞任。佐野容疑者も官房長として「文書厳重注意」の処分を受けている。ネトウヨはこのことをもち出し、「前川は出会い系バー通いで佐野は裏口入学。文科省はクズばかり」「前川さん、文科省の局長が行政を歪めてますよーw」などと、ここぞとばかりに前川氏をバッシングしているのだ。
さらに、そうした流れのなかで、安倍応援団である上念司氏も前川・文科省叩きを展開。昨日出演した『真相深入り!虎ノ門ニュース』(DHCテレビ)では、「佐野さんは前川の直系らしいっすね」「しかも天下りの裏で(不正入学を)やっていた」「文科省は(前川に)乗っ取られている感じ」だと述べ、前川氏と佐野容疑者の関係に言及している。
一方、この不正入学問題に対しては、リベラル派からも疑義の声が上がっている。「これは加計問題での文科省の反乱に対する、特捜部を使った官邸の意趣返しではないか」という見方だ。
だが、結論から言うと、これらの指摘はすべて的外れだ。そもそも、「佐野は前川の直系」でもなんでもなく、逆に対立派閥に属していた。文科省関係者もこう一笑に付す。
「佐野はたしかに前川氏が官房長時代にも官房政策課長、総務課長などを歴任しているが、『前川の直系』なんて関係ではない。むしろ、関係が悪かったという話もあるほどだ。というのも、佐野は科学技術庁入庁組で、文科省内の旧科技庁グループ、 “旧科技庁のドン”とも呼ばれていた沖村憲樹氏の一派だった」
冲村氏は国立研究開発法人・科学技術振興機構特別顧問に天下りしているが、高村正彦・自民党副総裁に極めて近く、官邸や自民党大物議員にも顔が利く人物。実際、冲村氏が仕切る旧科技庁グループは前川氏が引責辞任した文科省の天下り問題でも、まったく扱いが違っていた。
そもそも、政権が率先して不正を明らかにしたこの文科省への天下り調査は、加計学園認可に反対していた文科省幹部への報復、狙い撃ちだったという噂もあり、事実、官邸が文科省の天下り問題調査でターゲットにした吉田大輔高等教育局長(当時)は、獣医学部新設に強硬に反対していたと報じられている。
ところが、同じ文科省でも旧科技庁グループ、冲村派の天下り問題は一切表に出てこなかった。当時、会員制情報誌「FACTA」(2017年3月号)が、文科省の天下りは冲村氏が仕切る科学技術庁グループのほうがひどいのに、政権与党との関係からか、不問に付されているということを指摘。国会でも追及がおこなわれた。
そして、冲村氏の利権を暴いた「FACTA」の続報(2017年8月号)では、今回、逮捕された佐野容疑者が〈「冲村派」の中核メンバー〉として名指しされていた。
つまり、佐野容疑者は、前川氏の直系どころか、安倍政権に極めて近い派閥に属する官僚だったのだ。実際、佐野容疑者は加計問題で官房長として内部調査や大臣答弁などにかかわってきたが、完全に官邸の言いなりだった。
「『総理のご意向』文書が出てきたときなんて典型でしょう。あのとき菅義偉官房長官が『怪文書』呼ばわりしましたが、文科省も完全に歩調を合わせていた。調査すると言いながら担当部局の共有ファイルを調査して7人にヒアリングしただけ。当時の松野博一文科相がそこで何も出てこず、証言も得られなかったとして『調査目的は達成した』と断言した。これらを仕切ったのは、官房長の佐野さんですからね」(全国紙社会部記者)
加計学園からは2校も選定、東京医科大よりも多い補助金が
前川氏の直系どころか、安倍政権に近かった佐野容疑者。じつは、佐野容疑者の今回の大胆な不正入学収賄の背景にあるのは、「安倍首相が招いたモラルハザードではないか」という見方も流れている。
これは、無理やり話を結びつけようとしているのではない。もっと具体的な話だ。今回、佐野容疑者が東京医大関係者からの依頼を受けて同大を選定した「私立大学研究ブランディング事業」をめぐっては、“アベ友”である加計学園も選ばれているのだ。
本サイトで今年1月に報じたように(http://lite-ra.com/2018/01/post-3723.html)、じつはこの事業がスタートした2016年度の採択では、加計学園が運営する岡山理科大学と千葉科学大学の2校が選定されている。しかも、同じ学校法人から2校が選ばれていたのは、加計だけなのだ。
さらに、東京医科大には補助金として3500万円が交付されたが、加計グループに対して交付された補助金は、千葉科学大が3752万円、岡山理科大が4121万円と、東京医大を上回っている。
いや、加計への疑惑が深まるのは、この補助金を交付する大学が決定されたタイミングだ。2016年11月には萩生田光一官房副長官(当時)が獣医学部新設の条件として「広域的に獣医学部のない地域に限り」という加計ありきの文言を加え、同9日の国家戦略特区諮問会議でそのとおりに新設が決定された。そして、加計学園2校に補助金交付が決まったのは、それから約2週間後の22日なのだ。もちろんこの時期、文科省は加計学園と安倍首相の深い関係について痛いほど認識していたはずだが、そのタイミングで補助金の交付が決定されていたのである。
佐野容疑者が東京医大に便宜を図ったのは2017年で、この加計グループ2校が選定された次の年のこと。つまり、「総理案件」である大学が、しかも2校もねじ込まれている実態を知る立場にあれば、「それぐらいは許される」という見込みが佐野容疑者にはあったのではないか。そう勘繰らずにはいられないのだ。
安倍首相が血税をお友だちに流し、その実態が暴かれても平気な顔をして総理の座に座っている。その親玉のモラルのなさが、霞が関にも伝染しつつある──。「最大のガン」が幅を利かせるかぎり、こうした問題が後を絶たなくなるのは間違いない。そして、不正入学問題への捜査と同時に、今回クローズアップされた加計2校の選定についても、そのプロセスを明らかにするべきだろう。
(編集部)
14日におこなわれた参院予算委員会で、新たな「加計ありき」の証拠が出てきた。共産党の田村智子議員が入手した内閣府の文書によると、なんと、獣医学部新設を「1校に限る」と正式に発表した約2カ月前にあたる2016年10月24日、特区担当の山本幸三地方創生担当相(当時)が京都府の山内修一副知事に対して「1校しか認められない」と発言していたことが明らかになったのだ。
田村議員によれば、この日、山内副知事は京都選出の自民党・西田昌司参院議員とともに内閣府の大臣室を訪れ山本地方創生相と面会し、京都産業大学の獣医学部新設について陳情。しかし、その席で山本地方創生相は「経過もあり1校しか認められない」「難しい状況なので理解してほしい」と述べたという。陳情に同席した西田議員も各社の取材に対し「難しい」という趣旨の発言があったことを認めている。
田村議員は「京都府に断念するよう説得していたことになる」と追及したが、その通りだろう。
これまでの山本地方創生相の国会答弁によれば、「1校に限る」と山本大臣が最終的に決めたのは同年の12月20日前後。同月22日に内閣府から文科省、農水省に提示し三大臣合意を取り付け、2017年1月4日に獣医学部新設は1校に限って認めると告示した。つまり、正式に告示するよりも2カ月も前に山本地方創生相は京都府に対して「1校しか認められない」と断念するよう迫っていたということになる。
これまでも、内閣府は加計学園に対して懇切丁寧にアドバイスをおこなったり、「2018年4月開学」という要件が公表される前から内閣府主導で今治市と開学スケジュールを共有するなど、さまざまな場面で加計を優遇してきた一方で、内閣府は京産大を“厄介者”扱いをしてきたことが明らかになっている。
たとえば、今治市が国家戦略特区に申請したのは2015年6月4日だが、国家戦略特区ワーキンググループ(WG)が今治市に最初のヒアリングをおこなったのは、なんと4日後の6月8日。一方、京都府と京産大にヒアリングを実施したのは申請から約7カ月も経ってからのことだ。
加計学園を優遇する一方、京産大を冷遇し「1校しか認められない」と断念を迫る不公正
また、京産大の大槻公一元教授は、特区に申請する2カ月前に京都府職員らと内閣府を訪れた際、藤原豊・地方創生推進室次長(当時)から「今治は前から一生懸命やっているのに、後から出てきて。どうしてもっと早くやらなかったのだ」といった趣旨のことを言われたと証言(朝日新聞デジタル4月13日付)。「個人的な印象ですが、歓迎という雰囲気ではありませんでした」とも語っている。
そして、今回明らかになった山本地方創生相の「1校しか認められない」と京産大に断念を迫る発言。内閣府の加計への依怙贔屓とはあまりにちがいすぎる京都府・京産大への冷遇を見れば、「加計ありき」があらためてハッキリしたとしか言いようがない。
だが、この「1校しか認められない」という山本大臣の発言が判明しても、ネトウヨたちは「獣医師会と、その意を汲んだ石破茂が1校にしろと圧力をかけたからだろ」「獣医師会のせい」などとし、「加計ありきの証拠ではない」と主張しはじめている。
この主張は、これまで安倍首相が答弁で強調してきたことと同じだ。事実、安倍首相は、昨年6月5日におこなわれた衆院決算行政監視委員会でこう述べていた。
「突然、例えば加計学園のために一校に絞るということにしたわけではなくて、広域的に獣医師系養成大学等の存在しない地域に限る、一校に限るという要件は獣医師会等の慎重な意見に配慮したものでありまして、これは獣医師会等からこういう要請があったんですよ」
「1校に限る」という要件は「加計ありき」ではなく獣医師会の要請を受けて決めたこと──。安倍首相と同様に、国家戦略特区WG座長の八田達夫氏も「複数の新設を危惧した獣医師会による政治家への働きかけによって実現した」「総理やその周辺の提案による不正があったわけではない」(7月24日衆院予算委員会)と主張していた。
しかし、この安倍首相や八田氏の主張は真っ赤な嘘だったことが、今回の山本大臣発言の発覚ではっきりしたのだ。
山本大臣が京産大に「1校のみ」と発言したのは、獣医師会要請の1カ月以上前
じつは、ネトウヨたちが唱えてきた「獣医師会の圧力によって1校限りになった」という情報の大元は、獣医師会が2017年1月30日に発行したメールマガジン「会長短信 春夏秋冬」の文章だ。そこには〈できれば獣医学部新設決定の撤回、これが不可能な場合でもせめて1校のみとするよう、山本幸三地方創生担当大臣、松野博一文部科学大臣、山本有二農林水産大臣、麻生太郎自民党獣医師問題議員連盟会長、森英介同議員連盟幹事長など多くの国会議員の先生方〉に働きかけをおこなったこと、そして〈皆様方からの多数の反対意見、大臣及び国会議員の先生方への粘り強い要請活動が実り、関係大臣等のご理解を得て、何とか「1校に限り」と修正された改正告示が、本年1月4日付けで官報に公布・施行されました〉と書かれていた。
しかし問題は、獣医師会が「1校限り」にするためのロビー活動をおこなった時期だ。じつは、この文章では、獣医師会がロビー活動を展開したのは文科省が獣医学部新設を容認する告示見直しについてパブリックコメント募集を実施した〈(2016年)11月18日から12月17日までの1カ月間〉だと書かれているのである。
さらに、獣医師会から働きかけを受けた山本大臣自身が、国会でこう答弁している。
「昨年の12月8日に日本獣医師会から一校とするよう要請がありまして、その後も何度も、ぜひ一校に絞ってもらいたいという要請が強くあった」(2017年7月10日衆院文部科学委員会内閣委員会連合審査会)
「12月8日に正式に文書で獣医師会から、撤回が無理なら一か所、一校に限るようにしてもらいたいという要請がございました」(7月25日参院予算委員会)
一方、山本大臣が京都府の山内副知事に「経過もあり1校しか認められない」「難しい状況なので理解してほしい」と述べたのは、前述したように2016年10月24日のこと。──つまり、安倍首相や山本大臣、八田WG座長らは「獣医師会から強い要請があって『1校限り』とした」と主張してきたが、実際は、獣医師会がロビー活動をおこなう前から山本大臣は「1校限り」と明言していたのである。
京産大の提案に危機感をおぼえ、内閣府は京産大はずしに動いた?
以上のような事実からも、「1校に限る」という獣医学部新設の要件は、獣医師会からの圧力ではなく、京産大に断念させることが目的で加えられたのだろう。
山本大臣が山内副知事に「1校しか認められない」と語る1週間前の2016年10月17日におこなわれた国家戦略特区WGによるヒアリングで、京産大はノーベル賞受賞者である山中伸弥教授が所長を務める京都大学iPS細胞研究所との連携など具体的な提案を21ページにも及ぶ資料としてまとめ、提出している。
そして、この京産大の提案に危機感をもったのは官邸だ。事実、文科省の内部文書を見れば、萩生田光一官房副長官(当時)はこのヒアリングがおこなわれた前と後では急に態度が変わっており、同年10月7日の発言概要文書では「平成30年4月は早い。無理だと思う。要するに、加計学園が誰も文句が言えないような良い提案ができるかどうかだな」と述べていたのに、京産大のヒアリング直後の10月21日には「官邸は絶対やると言っている」「総理は『平成30年(2018年)4月開学』とおしりを切っていた」などと強い言葉に変化。その後、萩生田官房副長官は〈「広域的に」獣医師系養成大学等の「存在し」ない地域に「限り」獣医学部の新設を可能とする〉などと“加計ありき”の条件を内閣府に対して付け加えさせている。
安倍首相は一昨日の集中審議で前川喜平・前文科次官の発言を捏造してまで、「加計学園にくらべ、京産大の提案は熟度が低かった」などと強弁していたが、しかし、実際は京産大の提案がすぐれていたことから、「加計ありき」のシナリオが崩れる危機感をおぼえ、京産大に断念を迫ったり、京産大外しのための条件が加えられたのではないか。
官邸で首相秘書官が3回も面談する特別扱いだけではなく、準備な入念と具体的な提案をおこなったライバル校には「1校だけ」「広域的に獣医学部がない地域」「2018年4月開学」と次々に条件をつけて断念させる──。安倍首相は「公正なプロセスを踏んだ」などと宣うが、一体これのどこが「公正」と言えるのか。「1校に限る」という判断が、いつ、誰によってなされたのか。今後の追及が必要だ。
(編集部)
安倍晋三、共産党、加計学園、山本幸三、田村智子、編集部の記事ならリテラへ。
「高校生未来会議」はやはり安倍政権の高校生取り込み装置!? 仕掛人は安倍首相の地元有力後援者の息子
「一般社団法人リビジョン」公式サイト代表あいさつより
18歳選挙権の実施を前に開かれる高校生の集いが、安倍政権による高校生取り込み装置になる──。
明日3月23日から3日間に渡って開催される「全国高校生未来会議」をめぐって、こんな危惧の声が再び大きくなっている。
同会議は選挙権の18歳以上への引き下げを機に、全国の高校生と各政党の代表者らが集まり、日本の課題と若者の政治への関わり方などを議論するという触れ込みのプロジェクト。だが、早い時期からネット上などで「仕掛人は安倍応援団」「実体は高校生を自民党に取り込む別働隊」という指摘がなされていた。
というのも、同会議の事務局が、斎木陽平なる慶應義塾大学大学院生が代表理事を務める一般社団法人「リビジョン」におかれ、同会議を事実上、仕切っているのもこの斎木氏だったからだ。
斎木氏は、自分の主催する別の団体のホームページに安倍首相とのツーショットを載せたり、18歳選挙権実現に向けた高校生イベントに昭恵夫人をゲストとして呼んだりと、安倍首相との近い関係をことあるごとにアピール。「親戚」だという情報も流れていた。
これについてはネット上だけでなく東京新聞も報道しており、2月10日付紙面で、斎木氏が「安倍シンパ」であるとしたうえで、高校生未来会議代表である高校生の「斎木さんは首相の遠い親戚」というコメントを紹介していた。
ようするに、18歳選挙権の実施を前に開催される高校生の会議を、高校生でもなんでもない、安倍首相を応援する親戚の大学院生が仕切っていたというのだが、これに対して斎木氏と高校生未来会議は「積み上げてきた高校生会議を傷つけられた」「首相シンパとラベリングされたことに強い憤りを覚える」と真っ向から反論。一時はおさまりを見せていた。
ところが、ここにきてその高校生未来会議を仕切る斎木氏が馬脚を現す事態が起きたのだ。
発端は、このところ注目を集めている「保育園落ちた日本死ね」の匿名ブログに対し、斎木氏が3月10日、ツイッターで「#保育園落ちたの自業自得だ。」というハッシュタグをつくり、こんな投稿をしたことだった。
〈政治家の後援会には常に老人ばかり。加えて政治家に毎日のように陳情。そして何より必ず選挙に行く。若者が声をあげるのは困った時だけ。次に落ちるのは保育に無頓着な政治家達だ。そう脅しをかける覚悟があるのか。〉
このツイートに対して、「待機児童問題に直面する保護者たちに責任を押し付けるものだ」と批判が殺到。斎木氏と安倍首相の関係も改めてクローズアップされ、「安倍首相への援護射撃だろう」「こんな人物が高校生の会議を仕切っていいのか」と炎上状態となったのだ。
その後、斎木氏は〈問題提起のためのタグです。保育園に落ちた当事者が自業自得という意図ではなく、そういう状況を作り出すことを許してしまった有権者全体の責任も考えようとそう言いたかったのです。〉などと釈明したが、一方で、〈権利を行使するための普段の努力は誰しもに求められると思います〉〈政治家の責任であり、有権者全体の責任でもあると思います。そこに残念ながら保育園の親も含まれると思います〉などとも強弁。
また、安倍首相との関係を指摘されていることについても、〈僕が「安倍総理と縁戚」×「自業自得」=「庶民切り捨て」っていうステレオタイプから一歩たりとも思考を脱することができないんだな。〉〈はっきり言って反安倍の方々は人種差別に近いことをなさっていると思います。〉と反論した。
それこそ安倍首相や安倍応援団とそっくりの物言いで笑ってしまうが、それはともかく、斎木氏は民主主義というものを完全に勘違いしている。
斎木氏は待機児童問題で声を上げている保護者が「これまで選挙も行かず、政治にも興味を持たなかった」ための自業自得だと切り捨て、「声をあげるのは困った時だけ」と非難しているが、国民は過去にどんな選択をしようが、選挙に行かなかろうが、政府が間違った政策をしたときや自分が困窮した立場に立ったときに、声を上げる権利がある。むしろ、この「批判の自由」「意見表明の自由」こそが民主主義を成立させている基盤であり、逆に、安倍首相や橋下徹市長がしばしば口にし、今回、斎木氏がもち出した「選挙で選んだんだから文句を言うな」こそ、ヒトラーと同じ、独裁者丸出しの論理なのだ。
だいたい、有権者が保育園や育児問題をどうにか解決してほしいと考えたとして、いまの日本の選挙制度でそのワンイシューを政治に反映させることが可能なのかどうか、ちょっと考えてみればわかることだろう。むしろ、選挙なんかより批判意見の拡散やデモのほうが政治を動かすことがありうるのは、それこそいまの保育園問題に対する安倍政権の慌てようを見れば明らかではないか。
しかも、斎木氏はなんの根拠もないまま、保育園問題で怒っている親たちが選挙に行っていないような論理を展開して、彼らに責任を押しつけるようとしているのだ。どう考えても、政権批判を封じ込めようという意図があるとしか思えない。
斎木氏は自分が「安倍シンパ」であることを否定しているが、明らかに安倍首相と深い関係をもっている。たとえば「親戚関係」の問題にしても、斎木氏はツイッターで〈僕は安倍さんの甥でも親戚でもありません。〉と否定している一方で、自ら〈僕は安倍総理の縁戚です。自分からわざわざ申し上げることではありませんから言ってきませんでした。僕が安倍総理の縁戚だと危険なんですか?〉〈僕ははっきり、何度も縁戚であると明言しています。〉と、自ら明言しているのだ。
これに対して、「縁戚だったら親戚なのでは?」と指摘されると、〈縁戚と遠戚と漢字を間違えていました。〉と訂正したが、もちろん遠戚も親戚である。
しかも、問題は親戚かどうか以前の話だ。実は斎木氏の実家は明治時代から、安倍首相の選挙区である山口県長門市で病院を営んでおり、祖父の代からの安倍首相の有力な後援者なのだ。斎木氏は2年前、自らのFacebookでこんなことを自慢げに書いている。
〈今日は安倍総理が山口県長門市の実家に足を運んで下さいました。祖父母へのお参りなので、私の力では全くありません。〉
そして、祖父の代から続くこの安倍氏との関係を、斎木氏自身も引き継ぎ、利用してきた。斎木氏は大学生時代からAO入試の受験塾を主催しており、そのホームページに自らの慶應大学受験時の「自己推薦書」を公開しているのだが、そこには安倍首相とのツーショット写真とともに「安倍元首相と「憲法」議論」と見出しのついた、こんな内容の自己PRが掲載されている。
〈北九州市の自宅で、安倍元首相と話をする機会を得た。私は、夕食の席で、思い切って安倍さんが最重要命題に掲げている「憲法改正」の必要性について問うた。かねてから、憲法の性質よりも、その成り立ちに疑問を感じていたからである。すると、安倍氏は現在の日本国憲法は、占領下にGHQによってきわめて短期間に定められた憲法であると指摘し、日本人自身の手で「自主憲法」を制定することの必要性を力説された。これは、福澤先生の言う「独立不羈」に通じるものがあると感じ、貴塾で憲法の精神について学ぶ意欲や政治参加への想いが増した。〉
つまり、高校生のときにすっかり安倍首相の「押しつけ憲法論」に同調していたのである。これで、「安倍シンパじゃない」と言われても、なんの説得力もないだろう。
しかし、断っておくが、斎木氏の実家が安倍首相の有力後援者だったとか、安倍首相と憲法改正で意気投合していたとか、その事実自体を糾弾したいわけではない。斎木氏はおそらく被選挙権年齢になったら自民党から政界に出馬する可能性が高い気がするが、しかし、どんな思想をもとうが、それは個人の自由だ。
問題なのは、それ自体でなく、そんな人物が中立のふりをして、18歳選挙権実施を前に、高校生を誘導するような集まりを仕切っていることだ。
実際、明日23日からのこの高校生未来会議には、どう考えても安倍政権のバックアップがないとやれない、さまざまな仕掛けが用意されている。
同会議では県ごとに1チーム2~3人ずつに分かれ、地域おこしプランを考えるコンペを実施するらしいのだが、優秀なチームには、安倍晋三からの「内閣総理大臣賞」、石破茂からの「地方創生担当大臣賞」、高市早苗からの「総務大臣賞」が贈られるという。
さらに、同会議は23、24日の2日間は議員会館で開催、また最終日は「日本最高峰の場」「政府重要施設」で行うとしており「保安上の都合上、会場を参加者にしかお知らせできない」「察してください」などと思わせぶりなことを臭わせているが、一説には、総理公邸を使わせるのではないかとの話もある。
高校生未来会議側は野党の代表も参加することを強調して、党派性は一切ないというが、この仕掛けだけをとっても、同会議が安倍政権と自民党のPRの場になるのは間違いないだろう。
いや、それどころか、安倍政権はこの「全国高校生未来会議」を使って、高校生向けの改憲啓蒙活動を仕掛けるつもりではないか、という観測も流れている。すぐに露骨にやることはないだろうが、会議を通じて、ハブになるような高校生の安倍親衛隊をつくり、それをベースに高校生に向けた改憲の啓蒙活動を展開するつもりではないか、というのだ。
実際、安倍政権と右派勢力はいま、憲法改正に向けて、さまざまな別働隊を組織している。櫻井よしこや日本会議と組んで「美しい日本の憲法をつくる国民の会」を立ち上げ、お抱え評論家を使って「放送法遵守を求める視聴者の会」をつくって政権に批判的な報道に圧力を加えさせ、女子向けには「憲法おしゃべりカフェ」なる気持ちの悪いネーミングのイベントを日本会議系の団体が開催している。
産経新聞やネトウヨは安保法制に反対するSEALDsを揶揄して、「民主・共産に利用されている」「手口はナチ党に通じる」「ヒトラーユーゲントや紅衛兵にそっくり」などと的外れな攻撃をしているが、しかし、いまや独裁者と化した安倍首相をこんな高校生の集いに関与させたら、それこそ、本物のヒトラーユーゲントをつくり出してしまいかねない。
「全国高校生未来会議」がそうならないためには、少なくとも安倍政権のPRになるようなイベントを中止し、斎木氏に組織を仕切らせないようにすべきだ。そもそも、彼は「高校生」でもなんでもないのだから。
(野尻民夫)
2017年1月25日(水)
志位委員長の代表質問
日本共産党の志位和夫委員長が24日の衆院本会議で行った代表質問は次の通りです。
南スーダンPKO――深刻な現実に目をつぶり覆い隠す、無責任な態度を問う
私は、日本共産党を代表して、安倍総理に質問します。
まず安保法制=戦争法の問題です。安倍政権は、昨年11月、安保法制にもとづいて、南スーダンPKOに派兵されている自衛隊に、「駆け付け警護」などの新任務を付与しました。重大なことは、安倍政権が、内戦状態が続き、戦闘が繰り返されている南スーダンの深刻な現実に目をつぶり、覆い隠す、きわめて無責任な態度をとっていることです。三つの点について、総理の見解を伺います。
一つ。南スーダン政府軍によって、国連PKOに対する敵対的行為が繰り返されているという事実を認めますか。昨年12月の党首討論で、私がこの問題をただしたのに対して、総理は「南スーダンのキール大統領は自衛隊を歓迎している」と答弁しました。しかし建前は「歓迎」でも、実態は、国連PKOに対する敵対的行為が、持続的、組織的、恒常的に繰り返されていることは、国連報告書が克明に述べていることです。こうしたもとで「駆け付け警護」を行えば、自衛隊が南スーダン政府軍に対して武器を使用することになり、憲法が禁止する海外での武力行使となる危険性があることは明らかではありませんか。
二つ。国連PKOに参加する陸上自衛隊幹部が、首都ジュバで昨年7月に大規模な戦闘が発生したさいの状況を記録した日報を、廃棄していたことが明らかになりました。陸自は廃棄の理由として、「上官に報告したから」と説明していますが、こういう理由で廃棄がまかりとおれば、組織にとって都合の悪い文書はすべて闇に葬られ、国民は南スーダンで自衛隊が置かれている状況について知る術(すべ)がなくなるではありませんか。総理、日報を廃棄した自衛隊幹部の行為を是とするのか非とするのか、明確な答弁を求めます。
三つ。昨年12月、大量虐殺を回避するために国連安全保障理事会に提出された南スーダンに対する武器輸出を禁止する決議案に、日本政府は中ロなどとともに棄権し、廃案にしてしまいました。米国のパワー国連大使は、「棄権した国々に対して歴史は厳しい審判を下すだろう」と批判しましたが、総理はこの批判にどう答えますか。決議案に賛成すれば、日本政府が現地の危機的な状況を自ら認めることになる――これが棄権した理由ではありませんか。自衛隊の派兵を続けるために、大量虐殺の悲劇を抑え込むための国際社会の努力を妨害するとは、理不尽きわまりないことではありませんか。
自衛隊への新任務付与をただちに撤回し、自衛隊を南スーダンからすみやかに撤退させ、日本の貢献を非軍事の民生支援、人道支援に切り替えることを強く求めます。
日本共産党は、憲法違反の安保法制=戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回するために、他の野党、市民の運動と連携し、全力をあげることを表明するものです。
1%の富裕層・大企業のための政治でなく、99%の国民のための政治を
富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進んだという認識があるか
次に経済政策はどうあるべきかの根本について質問します。
まず今日までの20年間に、日本の経済社会にどのような変化が生まれたかについて、総理の基本認識を伺います。私は、三つの特徴的な変化が生まれたと考えます。
第一の特徴は、富裕層への富の集中が進んだことです。純金融資産5億円以上を保有する超富裕層では、1人当たりが保有する金融資産は、この20年間で、6・3億円から13・5億円へと2倍以上に増えました。
第二の特徴は、中間層の疲弊が進んだことです。労働者の平均賃金は、1997年をピークに年収で55万6千円も減少しました。政府の国民生活基礎調査では、この20年間で、生活が「苦しい」と答えた人が42%から60%と大きく増える一方で、「普通」と答えた人は52%から36%と大きく減りました。
第三の特徴は、貧困層の拡大が進んだことです。この20年間で、働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の4・2%から9・7%と2倍以上となりました。「貯蓄ゼロ世帯」は3倍に急増し、30・9%に達しています。
総理、事実の問題として、今日までの20年間に、富裕層への富の集中、中間層の疲弊、貧困層の拡大が進んだという認識がありますか。その認識があるのならば、格差と貧困をただし、中間層を豊かにすることを、国の経済政策の根本に据えるべきだと考えますがいかがですか。答弁を求めます。