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社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

資産課税の大幅強化 貯蓄税や死亡消費税まで検討

2018年07月03日 18時59分13秒 | Weblog

資産課税の大幅強化 貯蓄税や死亡消費税まで検討

2016.03.23 16:00

 税法学者、経済学者、税理士らが「税制を主権者である納税者の手に取り戻そう」と昨年2月に発足したのが「民間税制調査会(以下、民間税調)」だ。三木義一・青山学院大学法学部教授(専門は租税法、弁護士)と水野和夫・日本大学国際関係学部教授が共同代表を務める。

 民間税調は1年間の議論を経て、独自の「2016年度税制改革大綱」を発表。そこから浮かび上がったのは、日本の税制に隠された嘘だ。その一つが資産課税について預金からも死者からも税を取るというものだ。

 いま、じわじわと進んでいるのが資産課税の大幅強化だ。来年から「空き家対策」名目で非居住住宅の固定資産税が4倍にアップ、さらに「農地集約化」の名目で未耕作農地の固定資産税も1.8倍に引き上げられる。

 その先にはマイナンバー導入で個人の預金を把握して預金残高に応じて課税する「貯蓄税」や、死亡時に残った遺産に一定税率をかけて徴収する「死亡消費税」まで検討されている。

 所得税を納めたうえで地道に蓄えた貯金にさらに税を課すのは所得税の二重取りだ。国民が税の矛盾に本気で声をあげない限り、そうした“取れるところから取る”という滅茶苦茶な税制改革が罷り通ってしまう。三木氏が語る。

「日本は昭和40年代まで一億総中流社会といわれ、その時代は税制による再分配が機能していた。しかし、いまや富裕層の課税を増やし、再分配しようとすると個人も かっている企業も国境を越えて税金の安い国に逃げていく。そのために政府は法人税をどんどん引き下げ、所得税でも富裕層を優遇し、税制の機能は非常に弱まった。

 このままでは、本来、富裕層が負担すべき税金を、国境を越えられない貧しい人が負担する社会になっていく。こうした税制の制度疲労と格差拡大は世界的な問題です」

 税制の矛盾、制度疲労のしわ寄せを一方的に押しつけられないために、税制の決定権を再び国民の手に取り戻す必要がある。

※週刊ポスト2016年3月25日・4月1日号

政府内で「貯蓄税」と「死亡消費税」を検討 すでに布石も

2016.02.02 07:00

 

 日本経済の足踏み状態に業を煮やした安倍政権は、個人や企業が貯め込んでいる資産を吐き出させようとなりふり構わぬ“北風政策”を打ち出し始めている。要は“太陽政策”とは異なり、辛い目に遭わせることで、カネを出させようという作戦なのである。政府内で検討されているのが「貯蓄税」と「死亡消費税」だ。

 貯蓄税は、今年から運用開始されたマイナンバー制度の導入により、国民の貯金額の把握が容易になったことで現実味が増しつつある。文字通り、貯蓄に対する税で、“貯める者にペナルティ”を与えることで、強制的に口座からカネを掻き出す乱暴な政策だ。

 死亡消費税は3年前、首相官邸で開かれた「社会保障制度改革国民会議」で飛び出した。死亡時に残った遺産に一定税率をかけて徴収しようというもので、控除額が設けられている相続税と異なり、すべての国民が課税対象になる。

 新税に対する布石はすでに着々と打たれている。昨年1月から相続税が増税され、最高税率が55%に引き上げられた。これに伴い、生前贈与(子供や孫へ住宅購入資金や教育資金を非課税で贈与する仕組み)の件数が急増し、潤沢な資産を持つ高齢者から現役世代へ資金の大移動が起こったのだ。

 昨年8月からは介護保険制度が改正され、特別養護老人ホームなどの介護保険施設を利用した際、これまで「所得」を基準に適用されていた低所得者向けの負担軽減制度に資産基準が新たに設けられた。

 単身で1000万円、夫婦で2000万円以上の資産を持つ高齢者は、負担軽減制度が受けられなくなったのだ。

「夫の死後、自分の年金収入だけで暮らしていましたが月7万円にも届かない。夫が生前に中古で買った一軒家に暮らしていたのですが、その資産価値が1000万円を超えるということで、ホームの利用料が軽減されなくなりました。

 これまで食費と居住費を合わせて月6万3000円だったのが、昨年夏以降、月額10万5000円にまで跳ね上がり、年金収入では払えなくなった。仕方なく家を売って施設利用料を捻出しました」(関西地方在住・70代女性)

 

 税制が専門の立正大学教授・浦野広明氏の指摘だ。

「消費増税や資産への課税強化などは“取れるだけ取る、持っている者から取る方法を編み出す”というものばかりです。それが見え透いているからこそ、貯金族はさらに資産防衛に走る。北風政策の典型的な失敗パターンです」

 しかし、一連の「税制改悪」を支持する層もいる。60代以上に対して、50代以下は実質賃金は下がり続け、貯蓄に回すおカネがそもそもない。その分、投資には積極的だ。

「メディアが年金制度の世代間格差など、現役世代の不満を煽る報道に熱心なため、彼らからの妬みは肌で感じる。この空気にはウンザリだよ。誰もが散財していたように思われてるバブル時代にも俺たちの世代は貯金していた。カネが貯まらないのは俺たちのせいじゃない!」(都内在住・70代男性)

※週刊ポスト2016年2月12日号

退職金2000万で貯蓄500万の60歳夫婦 80代半ばで破産の恐れ

2015.08.13 11:00

 

 年金とともに老後の家計を支える大きな柱が「退職金」だ。厚生労働省『就労条件総合調査』によると、2012年の退職金の平均は2156万円(大卒事務職・35年以上勤務)。額は年々減っているので、どう活かすかが重要だ。

 退職金制度は会社によって異なるが、一括でもらう「一時払い」方式と、分割してもらう「年金」方式の2つがあり、どちらかを選べることが多い。厚労省の調査によれば、「一時払い」を選ぶ人が増えており、約7割にのぼる。

 その理由は税制上のメリットにある。一時払いの退職金には「退職所得控除」があり、大学卒業から定年まで同じ会社に勤めた場合、控除額は2410万円となる。平均的な水準の退職金なら、税金は一切かからない。

 一方、年金方式にも「公的年金等控除」が適用されるが、毎月の公的年金も合算された上で控除額が算出されるので、所得税や住民税を払わなくてはならない。ファイナンシャルプランナーの藤川太氏(家計の見直し相談センター)の指摘だ。

「手厚いはずだった企業年金は運用難に苦しみ、2010年に経営破綻したJALのように給付カットされるケースもあります。この先、年金が減らされる不安に駆られるなら、できるだけ一時金でもらって、安心できて得できる方法を考えたいですね」

 重要なのは一時払いで受け取った大金をどう扱うかである。退職金は大きな額に見えるが、公的年金と合わせても、老後資金が足らなくなる恐れがある。

 退職金2000万円、貯蓄500万円の計2500万円が手元にある60歳の夫婦の老後資金の推移を藤川氏がシミュレーションした結果、夫が65歳まで働き(手取り年収240万円)、それ以降は夫婦で年間約260万円の年金を受け取るという一般的なケースでさえ、80代半ばで手持ちの資金が底を突き、「老後破産」へと突き進んでしまう(物価上昇率、賃金上昇率ともに1%で試算)。

「それを未然に防ぐためには、まず家計の収支を見直す必要があります。生活費を節約するのはもちろん、燃費のよい小さな車にしたり、家電を省エネ性能の高いものにしたりして支出を減らしていかなければなりません」(藤川氏)

※週刊ポスト2015年8月21・28日号

 

 

死亡消費税構想 棺桶から税金もぎとる年金収奪のメカニズム

 2014.05.25 16:00

 

 田村憲久・厚生労働大臣は、受給者の選択によって年金受給開始年齢を75歳まで遅らせて繰り下げ受給ができるようにして、その分、金額を割り増す制度を検討することを表明した。また、政府の経済財政諮問会議の有識者会議「選択する未来」委員会は70歳までを労働人口に位置付ける提言を発表した。2つを合わせると、国民をできるだけ長く働かせ、年金支給を大幅に遅らせようという意図が透けてくる。

 国民にとって、政府の年金75歳支給に対抗する方法は、長生きしてできるだけ長く年金をもらうことくらいしかない。

 そうはいっても、人間には平均寿命とは別に、日常活動に支障をきたさないで生活できる「健康寿命」がある。厚労省(厚生科学審議会)の資料によると、日本人の健康寿命は男性約70歳、女性約73歳であり、それ以降は〈日常生活に制限のある「不健康な期間」を意味します〉とされている。

 70歳を過ぎるまで働き、受給開始を遅らせて年金の割り増しを受けても、健康寿命が尽きて体の自由がきかなくなってからでは趣味や生きがいのためにお金を使いたくても難しくなる。

「健康寿命は大切だとひしひしと感じる」。そう語るのは今年80歳になるAさん。大手メーカーの営業部長として定年を迎えた。50代までゴルフはシングルの腕前だったという。

「70代前半までにたまにコースを回っていましたが、最近はめっきり足腰が弱くなり、血糖値が高いから病院通い。趣味のゴルフにも行けなくなりました。いまの楽しみは盆と正月に遊びに来る中学生と高校生の孫たちにお小遣いを渡して喜ぶ顔を見ることですね。幸い、多少の蓄えはあるから、孫の教育費くらいは遺してやれるかなと思っています」

 ところが、政府は高齢者がコツコツ貯めた年金にまで手を伸ばそうとしている。政府内で「75歳の年金支給」、「70歳労働」とともに検討されているのが、「死亡消費税」の導入だ。

 提唱者で首相ブレーンの伊藤元重・東京大学教授は、社会保障制度改革国民会議で内容を次のように説明している。

「亡くなられた段階で消費税をいただくというもの。60歳で定年されて、85歳でお亡くなりになられるまでに、一生懸命、消費して日本の景気に貢献された方は消費税を払ってお亡くなりになっておられる。

 しかし、60歳から85歳まで、お使いにならないでひたすら溜め込んだ方は、消費税を払わないでお亡くなりになられて、しかもそれが相当な金額にならない限りは、遺産相続税の対象にならない。ですから、生前にお支払いにならなかった消費税を少しいただく。それを、後期高齢者の方の医療費に使わせていただくというものです」

 高齢者がカネを使わずに貯め込むのは経済にマイナスだから、亡くなってから相続税とは別に“消費しなかった罰則税”をかけるという論理だ。

 この「死亡消費税」はただの増税論ではない。政府がやろうとしている3つの政策をセットだと考えると、そこから怖ろしい企みが浮かんでくる。

 国民を70歳を過ぎて健康寿命が尽きるまで働かせ、体の自由がきかなくなってくる75歳になるのを待って「使えるものなら使ってみなさい」と年金を払い、仕方なく孫や子のために貯金すると、「消費に回さなかったあなたが悪い」と棺桶から税金をもぎ取る。明らかに、意図的な年金収奪のメカニズムをつくろうとしている。

※週刊ポスト2014年5月30日号

 

死亡消費税 庶民苦しめる悪税で政府に並大抵でない税収増も

2013.06.17 07:00

 

 6月3日、首相官邸で開催された社会保障制度改革国民会議で安倍ブレーンとして知られる民間委員の伊藤元重・東大教授から「経済財政の視点からの社会保障改革」という資料が提出された。増大する社会保障費の財源として、「高齢者医療費をカバーする目的での死亡消費税の導入」が提案された。

「死亡消費税」とは消費税のように国民全員に死ぬときに財産から一定の税率を“社会保障精算税”として納めさせるというもの。

 これが実際に導入されるとこんなケースが必ず起きる。長年、介護してきた父が亡くなった。息子は介護のために会社を早期退職し、妻のパートで食べている。貯金も底を尽いた。遺産として同居していた家が残ったものの、評価額は3000万円。そこに「死亡消費税」の請求が届く。消費税並みの5%なら150万円、消費税引き上げ後の税率10%なら300万円になる。とても支払えず、家を手放すことになった──。

 庶民を苦しめる悪税になるのは間違いないが、政府にとってはその税収が並み大抵のものではないのだ。

 日本の相続税は全体の4%の資産家に課税され、税収は年間約1兆2500億円(平成23年)。それを96%の非課税の層にも広く課税すると税収はケタが違ってくる。

 現在、個人金融資産は1545兆円。そのうち1000兆円近くを高度成長期を支えた団塊の世代をはじめとする65歳以上の約3000万人が保有している。

 そこに死亡消費税をかけるとどうなるか。65歳以上の世代が平均寿命を迎える今後15年間で、税率5%なら50兆円、消費税引き上げ後の10%だと100兆円の課税になる。国民の財産が大きく減らされ、国には途方もない金額が入ってくるのである。

 これは金融資産だけで、他に不動産資産がある。国税庁の統計では相続資産のうち預金や株などの金融資産と、宅地・家屋の不動産はほぼ同じ金額であり、不動産資産への課税額を加えると死亡消費税の課税額は2倍近く増える可能性もある。政府は国民医療費が現在の年間約40兆円から10年後には60兆円に増えると予想し、政府負担(約4分の1)を賄えないとしているが、この死亡消費税があれば十分おつりがくるのである。

 提案者の伊藤教授はそれをわかって提案したようだ。同氏はかつてこう書いている。

〈よく知られているように、高齢者は膨大な資産を持っている。(中略)ここに税をかけるのはどうだろうか。

 ただし、生前ではない。死亡時に課せばよい。資産を持っている高齢者も持たざる高齢者もいるだろう。しかし、高齢者全体で見れば、遺産相続税を重くすることで、現役世代の負担を減らすことができる。遺産相続人は自分たちの負担が増えると言うかもしれないが、そもそも資産は相続する人のものである以前に、高齢者のものではないだろうか。社会の貴重な資産が相続という形で一部の運のよい子孫に相続されるよりは、社会全体のために使われた方がよいという見方もあるだろう〉(産経新聞2008年5月3日付)

 アベノミクスで「景気回復」「収入アップ」など景気のいいことをいいながら、棺桶を掘り返す“墓泥棒”まがいの「死亡消費税」で庶民から税金をむしり取る算段をしているのだ。

※週刊ポスト2013年6月28日号

退職時貯蓄3千万の人 年金以外に月10万消費で85歳貯蓄0に

2011.08.12 07:00

 

フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査によれば、退職直後の60~65歳のサラリーマンの6割以上は投資をしていない。約半数がその理由を「元本割れのリスクを取りたくないから」と答えている。

退職後の定期的な収入は年金だけで、あとは現役時代の貯金と退職金を切り崩しながら生きていく、と考えれば、その命綱を投資で目減りさせてしまったら取り返しがつかない、という思いもわからないではない。

だが、退職時に貯蓄1000万円と退職金2000万円を合わせた3000万円を持っていたと仮定し、退職後は年金以外の生活費として毎月10万円ずつ使っていくとする。3000万円を全く投資に回さなければ85歳で資金は底を尽くが、75歳まで年利3%で運用すれば95歳までもたせられる。利息がゼロに等しい銀行預金に“塩漬け”することこそリスクだと知るべきだ。

投資に目を向ける理由は他にもある。フィデリティ退職・投資教育研究所所長・野尻哲史氏の指摘。

「現在は日本がデフレの真っ最中なので危機感は薄いが、長いリタイア生活を考えればインフレリスクも頭に入れておかなければなりません。預貯金は、インフレ時には価値が下がってしまう。

すぐにインフレが起きるかどうかはわかりませんが、セカンドライフが30年近く残されていると考えれば、考え得るリスクに備えておきたいところです。だからインフレに負けない収益率を確保するために株式などを運用先として考えるべきなのです」

※週刊ポスト2011年8月19・26日号

 

宗教法人への課税 税務調査するだけで課税強化可能と専門家

2012.02.22 07:00

 

 野田政権が消費税増税を推し進めているが、消費税をアップする前に旧態依然とした税体系の中で優遇されてきたものを見直すことが重要だ。その一つが、不平等税制の恩恵にあずかってきた宗教法人への見直しだ。

 宗教法人はお布施や賽銭など宗教活動の収入は非課税で、不動産の固定資産税なども免除。保育園や墓地経営などの「非収益事業」も非課税、物品販売や飲食業、駐車場などの収益事業は課税対象だが、所得の2割が控除され、通常より低い法人税率が適用される。

 小沢一郎・元民主党代表が幹事長だった鳩山政権時代には、政府税制調査会で当時の増子輝彦・経済産業副大臣が「宗教法人の税制には問題が多い」と提起するなど、宗教法人税制の見直しが論議されかけた。しかし、菅政権、野田政権では、消費増税に公明党の賛成が必要になるため、政府税調の議論から消えたのである。

 浦野広明・立正大学法学部客員教授はこう指摘する。

「宗教法人への課税強化は難しいというが、実際には国税は、小さな寺の住職が檀家からお布施としてコメをもらったことを所得だとみなして課税したケースもある。一方で巨大宗教法人に関しては、所有する会館を選挙活動に貸し、明らかに課税事業の貸席業を行なっていたとしても調査をしない。法改正しなくても、きちんと税務調査するだけで課税強化はできる。それをしないことが行政の不公平です」

 反増税を唱える小沢氏が自信たっぷりに「増税せんでも財源はある」と繰り返し発言しているのは、そうした算盤勘定をしているからだ。

※週刊ポスト2012年3月2日号

 消費税増税を巡って激論が巻き起こっているさなか、朝日新聞に掲載された記事が波紋を呼んでいる。

「耕論 宗教法人なぜ非課税」(2012年4月3日付朝刊)と題されたオピニオン記事だ。「政府は増税にやっきと思いきや、宗教法人に課税する話は最近耳にしない。やっぱり、聖域なの?」と提起し、3人の識者の意見を載せている。課税に慎重な立場をとる識者もひとり含まれているが、残り2人は課税推進派だ。「課税すべし」の論調が色濃い。

 消費税増税の旗振り役だった朝日新聞が、これまで黙殺していた宗教法人課税問題を突然持ち出したのはなぜなのか。

 ある公明党関係者は「記事の背景に財務省のカゲが見え隠れする」と話す。

 民主党増税派と自民党増税派の談合で消費税法案を成立させようとしている財務省にとって、ネックとなるのが公明党だ。

 同党は自公政権時代には「消費税率引き上げはやむを得ない」という立場だった。しかし、支持母体の創価学会では野田政権の増税路線に批判が強く、税と社会保障の一体改革法案には慎重な姿勢を取っている。

 前出の公明党関係者も「野党なのに民主党の増税に加担して批判を浴びるなど冗談じゃない。増税法案を廃案にして、野田首相を解散・総選挙に追い込む方が選挙も有利になり、最も望ましい展開」と増税反対を明言している。

 それでは財務省は困る。自民党の増税推進派議員が語る。

「公明党を賛成に転じさせなければ自民党も法案に乗りにくい。そこで財務省は学会のアキレス腱である宗教法人課税問題を大新聞に提起させ、“国民の批判に火をつけるぞ”と公明党を揺さぶりに出た。朝日の記事はほんのジャブだ」

 国民は消費税増税に怒っている。そこに大新聞が「宗教法人は税制優遇を受けてぬくぬくしている」と煽れば、怒りの矛先が宗教法人に向かうのは明らかだ。

 もっとも、今回の記事は、財務省が背後にいようといまいと公明党・創価学会には打撃が大きい。事実、宗教法人は税制面で手厚く保護されており、しかも、もともと「宗教法人に課税すれば、消費税を上げなくてもいい」と主張していたのは、宿敵の小沢一郎・元民主党代表だからである。

 小沢幹事長時代の鳩山政権下、2009年10月の政府税制調査会で、増子輝彦・経済産業副大臣(当時)と峰崎直樹・財務副大臣(当時)は「宗教法人に対する課税の在り方を見直すべき」と問題提起した。民主党内には「宗教と民主主義研究会」(池田元久・会長)も発足し、宗教法人課税強化に向けた議論が進められた。しかし、一連の裁判によって小沢氏が失脚したため、その動きは立ち消えとなった。

 公明党は命拾いしたわけだが、いまだもっとも恐れるタブーであることに変わりないのである。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

宗教法人への優遇措置なくせば4兆円の財源生まれるとの試算

2012.04.28 07:00

 

 消費増税議論がかまびすしいが、宗教法人への課税を強化すれば十分代替できる可能性がある。現在、全国に約18万2000あるといわれる宗教法人は、税制上、数々の優遇措置を受けている。

 お布施や戒名料など、宗教活動による収入(公益事業)は非課税。宗教施設に関しても、不動産取得税、固定資産税はかからない。寄付金を運用して得た利子や配当も非課税だ。

 さらに、宗教活動以外の営業(収益事業)でも優遇されている。一般企業の法人税率(国税)が30%であるのに対して、宗教法人は22%と低い。地方税も国税分をベースにして算出されるので、やはり一般企業と比較して優遇されるケースが多い。しかも、課税対象所得の2割を宗教法人本来の業務への寄付金として計上でき、控除を受けられる。

 ジャーナリストの山田直樹氏は、憲法学者で税法学の専門家である北野弘久・日本大学名誉教授(故人・肩書きは2009年当時)や税理士の協力を得て、一般と同様の課税をした場合の税収総額を試算したことがある。

「全国18万2000の宗教法人の所有不動産の推定から、固定資産税、不動産取得税などの税収は2兆円ほどと試算された。事業収入の優遇税制をなくせば1兆円が上乗せされ、法人事業税、道府県民税、登録免許税なども一般企業と同じ扱いにすればプラス1兆円。合計で年間4兆円規模だ」

 4兆円という金額は、消費税の国庫収入の2%分に相当する。宗教法人はそれほど優遇されてきたのだ。

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

 

非課税特権逆手にボロ儲け教団も 宗教法人優遇税制検討を指摘

2013.02.25 16:00

 

 民主党政権時代に議論された宗教法人課税問題が、自民党の政権復帰とともに一気にトーンダウンした。『宗教法人税制「異論」』(現代企画室刊)の著者で元国会議員秘書の佐藤芳博氏は、「今こそ宗教法人の優遇税制を見直すべきだ」と提言する。

 * * *
 現在5%の消費税率が条件付きながら来年に8%、再来年には10%に引き上げられようとしている。しかし困窮する国民生活の現状を考えると、安易な消費税増税を行なうことは避けなければならない。その前にやるべきことがあるはずだ。それは宗教法人に対する優遇税制を抜本的に見直すことである。
 
 宗教法人は税制面でさまざまな優遇措置を受けている。お布施、お賽銭、墓地の貸付、神前仏前結婚式の挙式など、本業の宗教活動の収入は全部非課税である。保有する境内地や境内建物の固定資産税や不動産取得税、都市計画税なども免除されている。
 
 サイドビジネスも優遇されている。株式会社などの営利法人の基本税率が25.5%なのに対し、宗教法人が営む宿泊施設や駐車場、不動産賃貸といった収益事業は19%(所得金額年800万円までは15%)と低めの税率になっている。しかもそこから得た所得の2割は宗教法人本来の業務への寄付金として損金算入が認められているのだ。
 
 こうした至れり尽くせりの優遇税制は「宗教は国民の道徳基盤を支えるものであり、間違っても法をたがえることはない」という宗教法人=性善説に基づくものだ。しかし昨今、税の申告漏れや脱税、不適切な収益事業の実施など、宗教法人の管理運営をめぐる不祥事が相次ぎ、さらに非課税特権を逆手にとってボロ儲けする“金満教団”も跳梁跋扈(ちょうりょうばっこ)している。今こそ宗教法人優遇税制を検討すべきである。

※SAPIO2013年3月号

宗教法人・生長の家が反安倍宣言 民進党は票取り込みに懸命

2016.06.20 16:00

 参院選が事実上スタートした6月9日、宗教法人・生長の家がウェブサイトに掲載した声明が永田町に衝撃を与えた。

 安倍政権の原発再稼働や安保法制による憲法解釈変更を批判し、

〈来る7月の参議院選挙を目前に控え、当教団は、安倍晋三首相の政治姿勢に対して明確な「反対」の意思を表明するために、「与党とその候補者を支持しない」ことを6月8日、本部の方針として決定し、全国の会員・信徒に周知することにしました〉

 そう「反安倍」を宣言したのである。

 生長の家といえば「明治憲法復元論」を唱えた初代総裁・谷口雅春氏が生長の家政治連合を立ちあげ、自民党右派の一翼を担ってきたことで知られる。現在も、憲法改正や靖国神社参拝など安倍首相の政治路線を強く支持する保守系民間団体「日本会議」の創立メンバーには生長の家出身者が多く、同会議の中核組織と見られていた。

 それだけに、参院選真っ最中の自民党内には動揺が隠せない。教団側は声明で日本会議との関係も明確に否定した。

〈日本会議の主張する政治路線は、生長の家の現在の信念と方法とはまったく異質のものであり、はっきり言えば時代錯誤的です〉

 その翌日には、谷口雅宣・生長の家総裁自ら念を押すようにブログでこう表明したのである。

〈私は、もうだいぶ前から自民党政権に愛想をつかし、本ブログあるいはその前身の「小閑雑感」上で民主党を応援してきたことは、本欄の読者ならよく知っているはずだ。ただ、宗教法人「生長の家」として、特定の政党の支持、不支持を表明したことはここ30年ほどないだろう。そんなわけで、今回の声明は“方針転換”と受け取られたのかもしれない〉

 一体、何が起きているのか。日本会議と安倍政権との関係を掘り下げて反響を呼んでいる『日本会議の研究』(扶桑社刊)の著者、菅野完氏はこう見る。

「日本会議は生長の家の元信者を中心に運営されてきたが、教団は元信者たちの愛国運動を時代錯誤だと受け止め、元信者に対する批判として非難声明を出したと見るべきでしょう。一方で教団関係者や信者らの情報によれば、教団のなかには今回の参院選で、野党統一候補に投票するよう信者に呼びかける動きがある」

 生長の家は公称信徒数約52万人(国内)、全国125か所に布教施設を持つ。そうした有力教団が反自民を鮮明にしたことで、民進党の選挙担当者が宗教関係者に「生長の家を紹介してほしい」と打診するなど票を取り込もうと懸命になっている。

※週刊ポスト2016年7月1日号