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社会福祉の思想は次第に成熟されつつあった。しかし、いつのまにか時は崩壊へと逆行しはじめた。

衆院選2017

2017年10月14日 20時45分51秒 | Weblog

 

衆院解散表明

「疑惑隠し」首相反論 幕引き狙う

毎日新聞2017年9月25日 21時53分(最終更新 9月26日 10時37分)

 「野党の批判が集中するかもしれない。厳しい選挙は覚悟の上だ」。森友学園、加計学園問題の「疑惑隠し解散では」という記者からの指摘に、安倍晋三首相は25日の記者会見で強気の姿勢をのぞかせた。

 紺色のスーツに、青いネクタイ姿。硬い表情で、首相官邸の会見場に姿を見せた。冒頭の20分は自身による解散理由の説明で、この間、両学園を巡る問題への言及はわずか1分。新たに打ち出した子育て支援策などは冗舌に語り、財源について問われると「私たちは『無駄遣いをなくせば2兆円が出てくる』と無責任なことは言わない」と旧民主党政権が掲げていた、事業仕分けなど無駄削減の政策を暗に批判。「繰り返しになりますが」と、もう一度同じ言葉を口にして、野党への敵意をにじませた。

 一方、小池百合子東京都知事が掲げた新党「希望の党」については「『希望』というのはいい響き。小池知事とは安全保障の基本的な理念は同じ」と秋波を送った。

 両学園の疑惑に対する安倍首相の姿勢は、上下する内閣支持率と共に大きく変わった。森友学園の問題が国会で初めて取り上げられた今年2月。学園前理事長と親しい妻昭恵氏に疑惑の目が向けられたが、50%を超えていた内閣支持率を背景に「(取引に)私や妻が関係していたということになれば議員辞職する」などと強気な発言を繰り返していた。

 しかし、森友学園や加計学園の問題への首相の説明に批判が高まると、6月には支持率が40%を割り込み、記者会見では「国民の理解が得られていないことを率直に認めなければならない」と反省を口にして「丁寧に説明する」と繰り返した。

 8月の内閣改造後の支持率回復を受け、この日の会見では一時の「低姿勢」は消え、これまでの対応を正当化した。「私自身も衆参の閉会中審査に出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきた」【杉本修作】

 

解散表明(その2止) 「疑惑隠し」反論 「丁寧な説明重ねた」

毎日新聞2017年9月26日 東京朝刊

 「野党の批判が集中するかもしれない。厳しい選挙は覚悟の上だ」。森友学園、加計学園問題の「疑惑隠し解散では」という記者からの指摘に、安倍晋三首相は25日の記者会見で強気の姿勢をのぞかせた。

 硬い表情で、首相官邸の会見場に姿を見せた。冒頭の20分は自身による解散理由の説明で、この間、両学園を巡る問題への言及はわずか1分。新たに打ち出した子育て支援策などは冗舌に語り、財源について問われると「私たちは『無駄遣いをなくせば2兆円が出てくる』と無責任なことは言わない」と旧民主党政権が掲げていた、事業仕分けなど無駄削減の政策を暗に批判。「繰り返しになりますが」と、もう一度同じ言葉を口にして、野党への敵意をにじませた。

 一方、小池百合子東京都知事が掲げた新党「希望の党」については「小池知事とは安全保障の基本的な理念は同じ」と秋波を送った。

 両学園の疑惑に対する安倍首相の姿勢は、上下する内閣支持率と共に大きく変わった。森友学園の問題が国会で初めて取り上げられた今年2月。学園前理事長と親しい妻昭恵氏に疑惑の目が向けられたが、50%を超えていた内閣支持率を背景に「(取引に)私や妻が関係していたということになれば議員辞職する」などと強気な発言を繰り返していた。

 しかし、森友学園や加計学園の問題への首相の説明に批判が高まると、6月には支持率が40%を割り込み、記者会見では反省を口にして「丁寧に説明する」と繰り返した。

 8月の内閣改造後の支持率回復を受け、この日の会見では「低姿勢」は消え、これまでの対応を正当化した。「私自身も衆参の閉会中審査に出席するなど、丁寧な説明を積み重ねてきた」【杉本修作】

ミサイルの不安「こんな時に」

 北朝鮮が発射した弾道ミサイルは先月と今月の2回、北海道上空を通過して太平洋上に落下。北海道から東日本までの広い範囲で全国瞬時警報システム(Jアラート)を通じて発射情報が流れた。不安を募らせた住民は、衆院解散の理由に北朝鮮問題への対応を挙げた安倍晋三首相に、何を思うか。

 北海道滝川市の主婦(74)は「Jアラートやサイレンが鳴っても、数分で飛んできたらどこかに逃げるわけにはいかない。こんな不安定な時期に選挙をして、本当に大丈夫なのか」と首をかしげる。安倍政権や自民党の現状に疑問を抱く一方で「他の政党は頼りなく、危機に対応できないのではないか」と険しい表情を見せた。同市でスナック・軽食店を経営する竹内信恵さん(69)は「とにかく平和な、住みよい国になってほしい」と訴えた。

 北海道釧路市の漁港でマイワシの水揚げを終えたばかりの青森県八戸市の漁師の男性(38)は「北朝鮮のミサイルはいつどこに飛んでくるかわからない。ミサイル問題について、しっかり取り組んでほしい」と強調する一方、「政治家はスキャンダルばかりで信頼できない。こんな時に選挙をするなんておかしい」と憤った。

 3月に全国初のミサイル想定の住民避難訓練が行われた秋田県男鹿市の温泉旅館のおかみ、斉藤靖子さん(45)は「ミサイルが頻繁に飛んできている時期に解散していいのかと不安を感じる。しかし、解散を機に、ミサイル対策が議論されればいいと思う。有権者が判断する場を与えられたので、しっかり考えて投票したい」と話した。

 同県能代市の会社員の男性(49)は「どんな状況でもミサイルの危機から国民を守るのが国の仕事。解散だからといって有事への対応がおろそかになってはいけない」と注文をつけた。【渡部宏人、平山公崇、森口沙織】

「森友・加計から逃亡」

 森友学園、加計学園の問題を巡り野党は臨時国会で攻勢を強める構えだったが、審議されないまま総選挙に突入する。

 大阪市の学校法人「森友学園」への国有地売却問題を訴訟で追及する神戸学院大の上脇博之教授(憲法学)は「審議に応じない解散は憲法違反の可能性もある」と指摘。首相は消費税の使途変更を主な解散理由としたが、「『何をいまさら』と思う。大義はなく、森友・加計問題からの逃亡解散だ」と憤った。

 学校法人「加計学園」の獣医学部新設計画を巡る問題は、文部科学省の審議会が新設認可の判断を10月以降に先送りし、校舎建設が進む愛媛県今治市の地元住民らは今回の衆院解散に揺れている。

 市内でホテルを経営する正岡重二さん(69)は「安倍首相の強気な国会答弁が個人的には好きだが、加計問題を巡る説明は歯切れが悪い。臨時国会で疑念を払拭(ふっしょく)してほしかっただけに残念で、『疑惑隠し解散』と批判されても仕方がない」と話した。

 今治市には、同市と広島県尾道市を結ぶ「瀬戸内しまなみ海道」など人気の観光スポットがある。

 飲食店経営の越智辰智さん(37)は加計問題が国会で取り上げられて以降、来店する観光客の客足が落ちたと感じる。「結論の出ない国会論戦は今治の印象を悪くするだけ。今回の衆院解散で問題が収束するならそれでいい」と語った。【服部陽、宮本翔平】

自衛隊家族「改憲語れ」

 安倍首相は自衛隊の存在を明記する憲法9条改正に意欲を示すが、記者会見では言及しなかった。

 首相のブレーンの一人、八木秀次・麗沢大教授(憲法学)は「憲法改正の発議は国会の役割なので、あえて首相としては述べなかったのだろう」と解説。「自民党の公約の中には入れるはずで、総裁として選挙戦では訴えるはずだ」と指摘する。

 これに対して、自身の息子が海上自衛隊大湊基地(青森県むつ市)に勤務する50代の男性は「首相としてあるまじき行為。憲法改正をやるなら争点として提示して、やらないなら争点にしないとはっきりすべきだ」と反発した。

 ある陸上自衛隊員の40代の妻は「憲法改正を前提に解散するのだろうからはっきり表明すべきだし、浴びるであろう反論も受け止めるべきだ」と訴えた。【佐藤裕太、北山夏帆、神足俊輔】

解散権の制約、専門家提案

 衆院解散の方針を表明した安倍晋三首相に対し、野党は「解散権の乱用」との批判を強めている。

 解散権の抑制策を公約に盛り込む動きがあるほか、専門家は解散に関する新たなルール作りを提案する。今回の衆院選では、解散権のあり方を巡って論戦になりそうだ。

 海外の議会政治に詳しい立命館大の小堀眞裕教授によると、経済協力開発機構(OECD)加盟35カ国で政権の自由裁量による議会解散が一般化しているのは日本を含めカナダ、デンマーク、ギリシャの4カ国。

 小堀教授は「野党の準備不足を見計らうような解散権の行使は、海外に比べても日本が際立っている」と指摘する。日本と同じ議院内閣制を採用する英国やドイツの解散権は、不信任決議案の可決などの場合に制限されている。

 近年では、小泉純一郎元首相による「郵政解散」(2005年)や前回の「アベノミクス解散」(14年)などで「解散権の乱用」との指摘が相次いだ。

 民進党など野党4党は今年の通常国会後、憲法の規定に基づき臨時国会の召集を要求していたが、放置されてきた。

 憲法学者で首都大学東京の木村草太教授は「臨時国会の冒頭解散は憲法違反という観点からも批判は免れない」と強調する。

 木村教授が提案するのは、与野党が国会で首相の解散理由を審議できるルール作りだ。「審議の場があれば、今回のように理由が不明確なまま衆院選に突入する事態を一定程度防ぎ、解散権の制約につながる。大義の有無も国民が判断できる」

 今回の衆院解散を巡っては、自民党内からも「何のための解散か明確にする必要がある」(石破茂元幹事長)との声が上がる。民進党は公約に「解散権の制約」を改憲項目として盛り込む方針だ。【服部陽】

 

平和を問う

衆院選2017/上 憲法上回る地位協定 米兵特権に父奪われ

毎日新聞2017年10月12日 西部朝刊

 「米兵たちは暗がりを探してここまで運転させ、突然父に襲いかかったんです」。沖縄市美原の住宅街の一角。沖縄県宜野湾市の宇良宗之さん(33)は9年前の事件現場で怒りをにじませた。

 2008年1月、タクシー運転手だった父宗一さん(当時59歳)は、乗客の在沖米海兵隊員2人から酒瓶や拳で前歯10本が折れるほど激しく殴られ、乗車賃を踏み倒された。事件後、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症し、職場復帰できないまま、4年後にがんで亡くなった。

 「(安全保障上)基地があるのはやむを得ない。米軍にもいい人はいる」。そう考えていた宇良さんに、宗一さんは「甘く見るな」と言っていた。

 日米地位協定は、米軍人や軍属の公務中の犯罪について米側に優先的に裁判権を認め、公務外でも起訴時まで米側の身柄確保を認めており、この「特権」は長い間改定されないままだ。宗一さんはそれまで、米軍関係者に何度も釣り銭箱を奪われていたが、県警の捜査は進まず悔しさを募らせていた。

 そしてあの日、宗一さんは立ち向かった。殴られても釣り銭箱を離さなかった。草野球好きだった父の笑顔を奪われ、宇良さんの考えが変わった。「米軍はやりたい放題できるから沖縄にいる。『日本人を守ろう』という意識は感じられない」

 憲法が保障する主権や人権さえも在日米軍が侵害するのは、沖縄だけに限らない。

 最高裁は昨年12月、米空母艦載機などの騒音に悩む厚木基地(神奈川県)の周辺住民らの飛行差し止め請求を退けた。国の支配が及ばない第三者(米軍)の行為は差し止めることができないとする司法判断が定着している。原告団長の金子豊貴男(ときお)さん(67)は「住民の苦痛より、国家の米軍追従を固定化した」と批判する。

 艦載機の主力部隊は近く岩国基地(山口県岩国市)に移転する予定で、騒音被害の懸念が広がる。さらに、米軍の垂直離着陸輸送機オスプレイは、機体の安全性に疑念が持たれたまま日本上空で飛行を継続し、奄美空港(鹿児島県)や大分空港(大分県)など民間空港への緊急着陸が続く。

 「在日米軍部隊は、他国での戦争や攻撃の訓練ばかりしている」と金子さんは言う。北朝鮮情勢の緊迫が続けば、在日米軍の活発化も懸念される。米軍が落とす不安の影は、基地の街以外も覆い始めている。

 一方、自民党は衆院選の公約で、憲法に自衛隊の明記を掲げた。安倍晋三首相は、集団的自衛権の行使を容認する安全保障法制を整備。自衛隊と米軍の一体化を進め、日米同盟の強化を目指す。

 地位協定に詳しい前泊博盛・沖縄国際大教授は、日本国内での米軍の特権的地位を「国際的にも異例」と指摘しつつ「地位協定が憲法を上回っている問題を解決しない限り、国民主権を見失った極端な対米追従が続く」と懸念を深める。

     ◇

 改憲を争点の一つに、衆院選が始まった。憲法を論じるうえで大切な視点は何か。平和のあり方を問い続ける現場から考える

 

平和を問う

衆院選2017/中 地に足着かぬ国防論 陸自配備、与那国分断のまま

毎日新聞2017年10月13日 西部朝刊

 日本最西端の沖縄県・与那国島。迷彩服の自衛隊員がバイクで通勤する姿が国境の島の朝になじんでいた。陸上自衛隊の配備を巡る住民投票は2015年2月。賛成派が小差で上回り、昨年3月に沿岸監視部隊がやって来た。それから1年半あまり。島中にあった「自衛隊歓迎」や「配備反対」の看板はほとんどない。

 隊員と家族の約250人が移り住み、島の人口は11年ぶりに1700人を超えた。「おかげで大綱引きは盛り上がるよ」。島で生まれ育った女性(64)がほほ笑む。若い隊員が悪戦苦闘しながら綱を編んだのは今夏で2回目。台風の後片付けも買って出たりと、島に溶け込んできた。

 同時に、島を二分した陸自配備の賛否論はかすみ、改憲を視野に入れた国境の国防強化を説く声が、聞かれるようになった。

 飲食店経営の田島若代さん(60)は「日本は専守防衛しかできない国だからなめられる。憲法9条を変えて『目には目を、歯には歯を』の対応をするべきだ」と勇ましい。しかし、直接的な脅威を経験しているわけではない。聞こえてくるのは、北朝鮮情勢や中国の海洋進出問題。自衛隊の配備に理解を得るため、国がかつて島民に並べ立てた言葉だ。

 中国の海洋進出を警戒した米国の国防政策見直しに合わせるように、国は2010年12月に「防衛大綱」を改定し、南西地域の防衛力強化(南西シフト)を掲げた。中国や北朝鮮を意識した島しょ防衛の重視で与那国島への陸自配備はその一環だ。自民党は今回の衆院選でも南西シフトの強化を公約に盛り込んだ。

 配備撤回を訴え続ける農業、宮良正一さん(67)は「むしろ基地があるから狙われる」と不安を隠さない。ところが「狙われるリスク」は島民に浸透してはいない。反対派は地域の行事に誘われないこともある。隊員らの来島を巡って島は「分断」されたまま、地に足の着かない国防論議が飛び交っている。

 北朝鮮の弾道ミサイルの発射を想定した地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット」(PAC3)の訓練が各地で実施されている。

 8月下旬、北九州市の陸自駐屯地での訓練後、指揮隊長は「態勢を整えて国民を安心させたい」と語った。一方、別の空自幹部は、北朝鮮情勢にあおられる形で国の防衛政策を国民が次々と追認する事態を想定し危機感を募らせる。「実際に危険な戦場に行く私たちが戦争が起こらないことを誰よりも望んでいる。国民には冷静な議論を求めたい」

 

平和を問う

衆院選2017/下 瀬戸際の憲法9条 語られない有事リスク

毎日新聞2017年10月14日 西部朝刊

 色とりどりの弁当が並び、利用者の笑みがこぼれる。精神障害者ら約30人がパウンドケーキを製造販売する熊本市の就労支援施設「ワークセンターやまびこ」のランチタイム。上野修一理事長(82)は無邪気に昼食をほおばる利用者らの姿に目を細めたが、不安も口にした。「有事になれば『役に立たない』と真っ先に差別されるのは障害者だ」

 昨年4月の熊本地震では「有事」の一端が垣間見えた。地震後、障害者のいる家族を訪ね回ると、家財道具が散乱し、ライフラインが途絶えたままの家屋で暮らし続けるケースが少なくなかった。「周りに迷惑をかけられないから」。避難所生活をためらっていた。

 「戦争になれば障害者はなおさら厳しい立場に置かれるだろう」。上野さんは史実を一つ胸に刻んでいる。太平洋戦争末期、東京の精神科病院で障害者の餓死が相次ぎ、患者の過半数の480人が死亡した。食糧難で食べ物が健常者に優先されたゆえの悲劇だった。

 2014年7月に集団的自衛権の行使容認が閣議決定されると、翌月に熊本県内の障害者施設職員らと護憲団体「くまもと・障害者9条の会」を結成した。上野さんは、憲法9条で日米の軍事一体化に歯止めをかけてきた防衛政策が「瀬戸際に立たされている」と懸念する。「軍事力を強化すれば緊張を高め、平和から遠ざかるだけだ」

 福岡市の自営業、富山正樹さん(53)は、任期付きで自衛隊に入った20代の息子が心配だ。自衛隊の任務拡大を図る安全保障関連法案が衆議院を通過した15年7月、法案廃止を訴える街頭活動を手探りで始めた。いつしか学生や主婦が賛同し、一時は約60人で駅前などで声を張り上げた。

 しかし、同年9月の法案成立後は「まだやってるの?」という通行人の視線を感じた。活動は自然消滅した。

 昨年、息子から任期の延長を告げられた。就職活動で苦しみ、自衛隊がようやく見つけた居場所だというのはよく分かる。だが、つい感情的になり「これから自衛隊は人を殺すかもしれんよ」と声を荒らげると、息子は「言い過ぎや」と怒り、口をきかなくなった。

 改憲を進める安倍政権は隊員が直面するリスクを語らない。それでも、護憲派が軍事に頼らずに平和を守る具体的な道筋を示せない限り、今後も自衛隊の任務拡大に歯止めはかけられないだろう。富山さんは衆院選での憲法論議の深まりに望みを懸ける。「リベラルは逃げないでほしい。息子のためにも」(この連載は比嘉洋、宮城裕也、井上卓也、松田栄二郎が担当しました)

 

解散総選挙の理由は「疑惑隠し」だけではない

 安倍首相が28日招集の臨時国会で衆議院を解散する可能性が高まっている。いわゆる冒頭解散だ。政府与党は、衆議院選挙について来月10月公示、22日投票の日程で調整しているという。

 

 確かに、自民党にとって今はチャンスである。安倍内閣支持率は、ここへ来て危険水域とされる30%を脱した。産経新聞とFNNが16、17両日に実施した世論調査での支持率は、50.3%まで回復した。読売新聞の調査では50%、日経新聞・テレビ東京は46%、朝日新聞は38%、毎日新聞は39%だ。

 さらに、今は野党が弱体化している。特に民進党は、次から次へと離党者が相次いでいて、まとまりようがない。山尾志桜里議員のスキャンダルも痛手になった。

 政治団体である「日本ファーストの会」も、まだ具体的な体制が整っていない。代表を務める若狭勝氏と細野豪志氏、小池百合子東京都知事はどのように連携していくのか。28日の臨時国会招集前には新党を結成すると言っているが、どうなるのか。

 野党がバラバラになっている今、安倍首相は「チャンスだ」と判断したのだろう。

 これに対し、野党や新聞、テレビは「全く大義のない解散」と非常に手厳しく批判している。共産党の小池晃書記局長は、衆議院解散について「安倍首相は仕事人内閣とか仕事師内閣とか言っているが、本当に『仕事しないかく』になっているんじゃないか」と主張した。

 さらに野党は、「これは森友・加計の疑惑隠しだ」と指摘している。臨時国会が始まれば、当然、森友・加計問題について野党から厳しく追及される。「その前に解散するのは、無責任そのものではないか」と民進党の前原誠司代表は強調した。

 共産党の志位和夫委員長は、「冒頭解散は、究極の党利党略、権力の私物化であり、憲法違反の暴挙だ」と痛烈に批判した。非常に厳しい言葉である。

 確かにそういう問題は多々ある。しかし、安倍首相が早々に解散する理由は、「今がチャンス」だけではないと僕は思う。

なぜ訪米後の意思決定なのか

 安倍首相は訪米直前の18日、衆議院の解散・総選挙について「帰国後に判断する」と述べた。

 これは一体、どういうことか。僕は、安倍首相はトランプ大統領の「本音」を確かめているのではないかと考えている。

 本音とは何か。

 ニッキー・ヘイリー米国連大使は、「北朝鮮は戦争を求めている。あらゆる外交努力を尽くすが、米国の忍耐にも限界がある」と発言した。さらにマティス米国防長官は、「韓国の首都ソウルを重大な危険にさらさずに北朝鮮に軍事力を行使する選択肢がある」と述べている。

 つまり米国は、北朝鮮への武力行使について本気で考え始めているのではないか。安倍首相も同様の疑いを抱いている。もし、米国の武力行使が現実となれば、韓国や日本にも被害が及ぶ可能性がある。これだけは避けなければならない。

 14日、トランプ大統領は、11月に日本、中国、韓国などを訪問する意向を明らかにした。中でも目玉となるのは、中国でのトランプ・習近平会談だ。米国は、この時までは武力行使に踏み切ることはないだろう。やるとすれば、12月以降だ。

 そこで安倍首相は、今回の訪米で、トランプ大統領に「武力行使を本気でやろうとしているのか」を確かめようとしているのではないか。

 もし、12月以降に武力行使の可能性があれば、有事の前に解散し、選挙をして体制を整えなければならない。安倍首相はそのように考えているのではないだろうか。

 自民党の萩生田光一幹事長代行は、「北朝鮮の脅威とどう向き合うかも含めて国民に説明する必要がある」と述べているが、これは米国による武力行使の意味も含まれている。

 逆に言えば、武力行使の恐れがないと判断すれば、選挙をしない可能性もある。

 

 

https://dot.asahi.com/wa/2017092800033.html

「森友&加計疑惑隠し解散」のツケ

 安倍首相の解散総選挙の本当の動機は何だったのか。

 やはり土俵際まで追い詰められた森友・加計疑惑からの〝逃亡〟だろう。

 森友学園問題では、大阪地検特捜部が9月11日に籠池泰典被告を詐欺罪などで起訴。一方で、籠池被告と財務省の職員が事前に国有地の「値引き交渉」をしていたことを示す音声データの存在も明らかとなり、財務省側にも背任容疑の捜査が及ぶとみられていた。

 22日には、財務省が国有地売却問題に関する電子データを完全消去するはずだった作業を止めていることがわかった。まさに捜査が本格化しようというこのタイミングでの選挙は、何を意味するのか。元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士がこう語る。

「検察は最初から財務省側を起訴するつもりはないが、さすがに世論の激しい反発が予想されるので、籠池氏側を悪党に仕立て、財務省側を被害者的に位置づけて不起訴を正当化しようとするつもりなのではないか。不起訴公表も総選挙後であれば、騒ぎもすぐに収まると思っているのでしょう」 一方の加計学園疑惑も、10月末に延期された学部設置認可の判断を前に、学園側に不利な情報が続出していたところだった。

 

 愛媛県今治市に建設予定だった岡山理科大学獣医学部の校舎の設計図には、なぜかワインセラーを備えた「パーティー会場」が描かれていたり、鳥インフルエンザなどの研究に必要な施設の安全対策が不十分との指摘があったりと問題点が続出。市や県の補助金が投入される建築費の坪単価が、同様の施設と比べて高すぎるとの疑惑も浮上した。

 今治市で加計学園問題を追及している「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦共同代表がこう語る。

「地元の愛媛2区には民進党は候補者すら立てられず、加計学園問題を争点化することすら難しい情勢。ここは市民が頑張るしかない。今後、建築単価の水増し問題で加計学園と安倍首相を刑事告発することを考えています」

(本誌取材班=小泉耕平)

週刊朝日 2017年10月6日号

 

 

記事田中龍作2017年09月23日 20:17  http://blogos.com/article/247958/

【今治発】「加計隠し解散は許さない」疑惑の本丸に市民がデモかける

 加計疑惑の震源地である今治。「かけかくしかいさんは許さない」。市民たちがきょう、獣医学部の建設現場にデモをかけた。

 森友問題を闇から外に出した豊中市議会の木村真議員、安倍政権にとって最も不都合な男である山本太郎参院議員が、今治に駆け付けた。

 地元今治はもとより東京、愛知、山口からも参加者があった。

 加計幹部を聴取した市議会の特別委員会で、市民が「インターネット中継させて下さい」と要望しただけなのに、委員長が「警察を呼びますよ」と言い、本当に警察が来る。今治市は超保守的な土地柄だ。

 警察の厳しい規制で、逮捕者が出るのではないかと心配したが、デモは穏やかに行われた。

 今治市は財政事情が厳しいにもかかわらず、アベ友学園に37億円相当の市有地を無償でくれてやり、建設費の半分にあたる96億円を愛媛県と共に負担する。

 誘致の決定過程も不透明で、加計学園自体が問題だらけだ。解散総選挙と共にウヤムヤにされたのでは、今治市民はたまったものではない。

 怒りのデモは2部制となった。1部に参加した山本議員は「獣医学部は今治市民の将来を食いつぶす。ここが加計解散の本丸だ。この声をどこかのタイミングで安倍さんにぶつけたい」と政権追及に意気込む。

 豊中市議会の木村真議員は、ユーモラスな大阪弁の中にも怒りをにじませた ―

 「値引きを持ち掛ける近畿財務局の音声データも出てきて『これは逃げられんやろ』と思っていたら、冒頭解散。アベシンゾー、ふざけんな。北朝鮮で煽り立てるのもいい加減にせい・・・』

 今治市片山の主婦(70代)は足腰が不自由なため、杖をつきながらデモコースを歩いた。

 「獣医学部で今治が発展するはずがない。市長や市議会は市民の声を聞いていない。子供たちが『今治に住んでいて良かった』という市にせなアカン」。彼女は肩で息をしながら切々と語った。

 震源地の怒りが総選挙投票日までに日本全土に広がれば、安倍政権は音を立てて倒れる。

 

 


誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」 『知ってはいけない』著者の警告

2017年10月14日 20時09分49秒 | Weblog

★阿修羅♪ > 政治・選挙・NHK233 > 623.html  
http://www.asyura2.com/17/senkyo233/msg/623.html
投稿者 赤かぶ 日時 2017 年 10 月 08 日 15:50:05:

誰が首相になっても、総選挙後に必ず起こる「2つの重大な出来事」 『知ってはいけない』著者の警告
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53127
2017.10.08 矢部 宏治 現代ビジネス


<自民・公明><希望・維新><立憲民主・共産・社民>という、「3極」の構図で争うことになったと報道される今度の総選挙。しかしどのような経緯をたどるにせよ、選挙後に私たちの目の前に姿を表すのは、<自民・公明・希望・維新>による巨大な保守連合体制である可能性が極めて高い。その結果、どんな事態が想定されるのか。

「これから日本は非常に厳しい時代に入っていくが、たったひとつのことだけ守っていれば、充分に逆転のチャンスはある」――こう指摘するのは、ベストセラー『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』の著者・矢部宏治氏である。「戦後日本」最大の曲がり角に直面したいま、私たちが考えておくべきこととは。

あまりにも奇怪だった「前原民進党・解党事件」

最近、本のPRをかねて、ラジオやネット番組にいくつか出演した。すると各番組のディレクターたちが、みな口をそろえて同じことを聞いてくるのである。

「矢部さん、いまいったい何が起きてるんですか? まったくわけがわからないんですが」

もちろん、前原誠司代表が9月28日に起こした「民進党・解党事件」のことである。長い日本の戦後政治においても、これほど奇怪な事件はあまり見つからないだろう。なにしろ、豊富な資金と全国組織をもつ野党第一党の党首が、事実上独断で、

① 目前に迫った衆議院選挙での、自党の候補者の公認をすべて取り消し、
② できたばかりの小規模政党(希望の党)の党首(小池百合子氏)に、その候補者たちを自由に「選別」する権利を与え、
③ 事実上、党を消滅させてしまったにもかかわらず、自分は100億円以上の政党助成金の分配権を握ったまま、代表の座にとどまり続ける

ということを突然決めてしまったのだから。

この出来事を、たとえば国外のメディアや知人に向けて合理的に説明できる人が、はたしてどれほどいるだろうか。

「野田民主党・自爆解散事件」との共通点

けれども実を言えば、私自身はあまり驚かなかった。なぜならいまから5年前、民進党の前身である民主党のなかで、同じくらい奇怪な事件が起こったことをよく記憶していたからだ。それは2012年11月に、当時の野田佳彦首相が起こした「民主党・自爆解散事件」である。もう昔のことなので、忘れている人も多いと思うが、これは簡単に言えば、

① 当時、政権公約と真逆の政策(消費税増税)を「命をかけてやりとげる」と公言していた野田首相が、
② 自党の選挙準備がまったく整わない状況のなか※、野党の党首(安倍晋三・自民党総裁)との国会討論中突然解散に合意し、わずか2日後(11月16日)には本当に衆議院を解散して、230議席から57議席へという壊滅的な敗北を喫してしまった
③ そして政権を失ったにもかかわらず、野田氏はその後、政界から引退も離党もせず、そのまま党の実力者でありつづけた

という、きわめて不可解な事件である。そしてこの事件は、

○ 突然決まった衆議院選挙の混乱のなかで、
○ 最高責任者が意図的に党を壊滅させるような行動をしたにもかかわらず、
○ その後、議員辞職もせずに党内にとどまり、実力者としての地位を維持しつづけた

という点において、前述の「前原民進党・解党事件」と完全な相似形をなしている。


※註 この自爆解散事件の直前には、鳩山由紀夫元首相や、すでに離党していた小沢一郎元幹事長に対して、「いまは絶対に解散しない」という野田首相からのメッセージが民主党の主要幹部を介して伝えられていた。だからこそ、あの「ヤラセの党首討論」(=そこで突然解散が決まったというフィクション)が必要だったわけである。



2つの奇怪な事件は、なぜ起きたのか

ではこの2つの奇怪な事件は、いったいなぜ起きたのか。その理由については、私などよりもはるかにわかりやすく、しかも簡潔に説明している人物が存在する。元航空自衛隊のトップ(幕僚長)であり、対中国強硬派、核武装論者としても知られる右派の論客、田母神俊雄氏である。

彼は「前原民進党・解党事件」が起こった直後、自分のツイッターでこう述べている。

「希望の党ができて民進党は解散になる。小池さんも前原さんも、日本の左翼つぶしに是非とも頑張ってほしい。右と左の二大政党では、国がつねに不安定だ。保守の二大政党制になってこそ、安定した政治になる。〔現在の〕日本のおかれた状況で、憲法改正に反対しているような政治家には、国民生活を任せることはできない」(2017年10月1日、下線筆者=強調文字)

実にわかりやすい「解説」ではないか。つまり、安全保障の問題から左派(リベラル派)の影響力を完全に排除する――。それこそが今回の「前原民進党・解党事件」と、5年前の「野田民主党・自爆解散事件」のウラ側にあった本当の目的であり、グランド・デザインだったというわけだ。実際、この2度の自爆選挙によって、かつて旧民主党政権に結集したいわゆるリベラル派勢力は、ほとんど消滅寸前まで追い込まれてしまった。

「最悪の愚作」

そうした異常な行動を生みだした背景については、理解できないこともない。私が『知ってはいけない――隠された日本支配の構造』で指摘したように、安保条約や地位協定にもとづく戦後の日米間の法的な関係は、独立の直前(1950年6月)に起こった朝鮮戦争のなかで生まれた「米軍への絶対従属体制」、いわゆる「朝鮮戦争レジーム」であり、そのなかで日本政府は米軍からの要求に対して、基本的に拒否する権利をもたないというつらい現実があるからだ。

けれども、そうした米軍支配の構造のなかで、反対勢力を非民主主義的な手段で壊滅させるのは、これ以上ないほど愚かな行為である。なぜなら日本の戦後政治には、ながらく、

① 自民党・右派          (安保賛成・改憲)
② 自民党・リベラル派(保守本流) (安保賛成・護憲
③ 社会党他の革新政党       (安保反対・護憲

という3つのグループが、それぞれ約3分の1ずつの議席をもつという構造のなかで、①と②が安保体制を維持しながらも、あまりにひどい要求に対しては、②と③があうんの呼吸で連携して、それを拒否するという政治的な知恵が存在したからである。

けれどもいま、この②と③の勢力の多くが、一度民主党(民進党)に集められたのち、野田・前原の2度の自爆選挙によって壊滅しようとしている。その結果、訪れるのは、「朝鮮戦争レジーム」の最終形態である「100パーセントの軍事従属体制」に他ならない。

枝野幸男氏が新たに立ち上げた立憲民主党をはじめ、選挙を戦うリベラル系の候補のみなさんに対しては心からのエールを送りたいと思うが、今回どのような選挙結果が出たとしても、選挙後に姿を表すのは、巨大な「自民・公明・希望・維新」による保守連合体制であり、その最終的な目的は、軍事問題についての「野党の消滅」または「大政翼賛体制の成立」なのである。

選挙後に必ず起こる2つのこと

では、具体的に、これから何が起こるのか。選挙後に誕生する巨大な保守連合の、新たな目標として設定されているのは、まちがいなく、

① 全自衛隊基地の米軍使用
② 核兵器の陸上配備

の2つである。いずれも以前からアメリカの軍産複合体のシンクタンクで、集団的自衛権とともに日本の課題とされてきたテーマだからだ。

今回の選挙結果がどうであれ、日本の首相に選ばれた人物には、この2つの課題を早急に実現せよという強烈な圧力がかかることになる。そのときわれわれ一般人は、いったいどう考え、行動していけばいいのか。その手がかりとなる情報を、以下、簡単にスケッチしておきたい。

「自衛隊基地の米軍使用」については、多くの人が知らないだけで、すでに進行中の現実である。たとえば下の図のように、現在、富士山の北側と東側には広大な自衛隊基地(富士演習場)が存在する。ところが現実には、これらはすべて事実上の米軍基地なのである。

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富士演習場の地図 (「赤旗」2013年8月26日)

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富士演習場で実弾射撃訓練を行なう米軍(米海兵隊HP)

 

というのも、この広大な自衛隊基地は、当初は米軍基地だったものが、1950年代から60年代にかけて日本に返還されたことになっているのだが、なんとそのウラ側では、日米合同委員会での密約によって、米軍が「年間270日間の優先使用」をする権利が合意されているのである。年間270日、つまり1年の4分の3は優先使用できるのだから、これはどう考えても事実上の米軍基地なのだ。

普天間は一度日本へ返還後、また米軍基地になる?

なぜアメリカの軍産複合体がこうした「自衛隊基地の米軍使用」を、今後すべての基地に対して拡大しようとしているかと言えば、その理由は簡単だ。

① 「自衛隊基地」という隠れ蓑によって、基地の運用経費をすべて日本側に負担させることができる。
②「米軍基地」への反対運動を消滅させることができる。
③ 今後海外での戦争で自衛隊を指揮するための、合同軍事演習を常時行なうことができる。

米軍側にとって、いいことづくめなのである。

この「自衛隊基地の米軍使用」計画について考えるたび、私は非常に不吉な予感におそわれる。なぜなら現在、日本への返還が正式に決定していながら、そこで勤務する米軍の上級将校たちが、「いや、オレたちはここから出ていく予定はない」といっている、不思議な米軍基地がひとつあるからだ。

沖縄の普天間基地である。

これからやってくる「大政翼賛体制」のもとで、一度日本に返還された米軍・普天間基地が、民間利用ではなく自衛隊基地となり、さらには現在の地位協定と密約の組み合わせによって、事実上の米軍基地となる可能性は非常に高いと私は思う。

もし本当にそんな事態が起きたとき、われわれ本土の人間が沖縄と一緒になって、「そこまでバカにするのか!」と、真剣に怒ることができるのか。そうした事態についても、あらかじめ想定して準備しておく必要があるのである。

「核兵器の本質」とは?

そしてここからが、もっとも重要な問題だ。戦後日本の「国体」ともいえる「朝鮮戦争レジーム」は、いま最終局面を迎えている。このまま半永久的に続いてしまうのか。それとも解消へと向かうのか。実はこれまで、絶対に揺るがないように見えていたその体制が、終わりを告げる可能性が出てきているのだ。

そのことについて説明する前に、読者のみなさんには、ひとつだけおぼえておいてほしいことがある。それは「核兵器の本質」が、「置いた国と置いた国のあいだで撃ち合いの関係になる」ということだ。そして一発でも撃ち合えばその被害があまりにも大きいため、両者の間には「恐怖の均衡」が成立する。

アメリカとロシア・中国の間には、すでにこの「恐怖の均衡」が成立しており、両者が直接戦争する可能性が消滅して久しい。そしてさらにいま、少し前まで誰も予想しなかったことだが、北朝鮮とアメリカの間にも、この「恐怖の均衡」が成立(※)しつつあるのである。


※註 北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)の急速な発展の背後には、ロシアからの技術流出(または技術協力)の存在が確実視されており、現在でも精度はともかくとして、距離的にはアメリカ本土に届く可能性が高いと考えられている。



バノンが明かしたアメリカ政府の本音

米軍にすっかり支配された日本の言論空間のなかでは、決して語られることのない多くの事実がある。「朝鮮戦争レジーム」の根幹である北朝鮮問題については、とくにその傾向が強い。だからわれわれ日本人の常識は、世界の常識とまったく違ってしまっているのだ。

その証拠に、たとえば今年の8月、トランプ政権の本音をバラしすぎて解任された、トランプ大統領の側近中の側近、スティーブン・バノン首席戦略官の問題の発言を見てみよう(いずれも2017年8月16日のニュースサイト「アメリカン・プロスペクト」より)。

「北朝鮮問題に軍事的解決などない。まったくない。開戦30分でソウルの市民1000万人が通常兵器で死亡するという問題を、少しでも解決しないかぎり、(軍事的解決など)意味不明だ」

これはアメリカの本音というよりも、世界の常識だと言えるだろう。1994年の第一次核危機で、「韓国側に50万人の死者が出る」という予測が出たために、北朝鮮への軍事攻撃を思いとどまったアメリカが、どうしていま、本格的な核の撃ち合いなど容認することができるだろう。トランプも、もちろん本当はそのことをよくわかっている。

メルケル首相やプーチン大統領が「北朝鮮問題に軍事的解決などない」とくり返し警告しているのは、トランプや金正恩に対してというよりも、むしろ自分たちが一番危険であるにもかかわらず、なぜか声高に強攻策を主張しつづける、理解不能な日本の首相へのメッセージなのである。

「中国が北朝鮮の核開発を凍結させ、きちんとした査察を受けさせるなら、米軍を朝鮮半島から撤退させるという交渉もありえる。もっとも、かなり先の話になるだろうが」

バノンのこの発言も、多くの日本人にとっては非常に意外かもしれない。米軍が日本や韓国から撤退することなど、絶対にありえないとほとんどの人が考えているからだ。

しかし国際的な常識からいえば、このバノンの発言は、ごく当然の話なのである。朝鮮戦争(※)を北朝鮮とともに戦った中国軍は、すでに1968年には朝鮮半島から完全に撤退している。休戦から64年もたつのだから、米軍も撤退するのが本来は当たり前なのである。


※註 このときの米軍は、国連安保理で「国連軍旗の使用」などを認められていたため「朝鮮国連軍」とよばれることもあるが、軍の指揮権は完全に米軍司令官がもっており、国連はいっさいそれに関与できなかったため、その実態が米軍であることは明らかである。



日本の未来を切り開くために

こうして生まれた新しい状況のなかで、私たち日本人が今後注意しておくべきことは、たったひとつしかない。それは総選挙後に始まる安全保障の議論のなかで、「核兵器の地上への配備だけは絶対に認めてはならない」ということである。

これから米軍、とくに日本と韓国に軍をおく米太平洋軍は、日韓両国に核兵器を地上配備させようと猛烈なプレッシャーをかけてくるだろう。もしもその圧力や巧妙な説得に負けて、日本と韓国が何百発、何千発もの核兵器を地上配備してしまえば、北朝鮮の攻撃対象は当然、日本と韓国へと向く。その結果、北朝鮮とアメリカの間の「恐怖の均衡」は崩れ、アメリカ本土は安全を回復する。結果として韓国からの米軍撤退の可能性も消え、日本における「朝鮮戦争レジーム」も永遠に続くことになるわけだ。

誰だって、自分が核攻撃の標的になどにはなりたくない。しかも日本は世界で唯一の被爆国なのだ。核兵器の地上配備など、認めるわけがないだろう。多くの人がそう思うかもしれない。

しかしそこには大きな落とし穴が隠されているのだ。というのも今後、核兵器の地上への配備がおおやけに議論されるようになったとき、それがいくら公平な議論のように見えても、結論はすでに決まっているからだ。

それは、核を地上配備するのは、沖縄の嘉手納と辺野古の弾薬庫だということだ。

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 辺野古の新基地のすぐ隣にある弾薬庫地区。広大な敷地に写真のような台形の弾薬庫が40以上あり、最大1000発以上の核弾頭が貯蔵できるようになっている(撮影/須田慎太郎)

本当の平和国家になるために

私も6年前から本に書いているように、本土への復帰前は沖縄に、最大1300発もの核兵器が地上配備されていた。

そして嘉手納と辺野古には当時それぞれ数百発の核兵器が貯蔵されていた巨大な弾薬庫がいまもあって、さらにはそれを「将来必要になったらいつでも使えるように維持しておく」という密約まで結ばれているのだ(1969年の佐藤・ニクソンによる「核密約」)。黙っていれば、自然にそういう流れができてしまうことは確実だ。

けれどもこの沖縄への核兵器の地上配備だけは、本土の人間も一体となって、日本人全員で絶対に食い止めなければならない。

おそらく身勝手な本土の人間たちは、「沖縄なら自分は安全だ。核兵器だろうと何だろうと、配備すればいいじゃないか。オレには関係ない」と考えるかもしれない。ところが、そうはいかない。

ここが問題の本質なのだが、北朝鮮対策という名目で沖縄に核が配備されたとき、それは自動的に、中国との間で核の撃ち合いの関係を生み出してしまう「恐怖の均衡」が成立するのである。そしていうまでもなく、中国のもつ核兵器は、日本列島全体を瞬時に壊滅させるだけの威力をもっている。

今回の「前原民進党・解党事件」でもよくたとえに登場した、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の教訓を思い出してほしい。「オレだけが助かればいい。ほかの奴らは地獄に落ちてもかまわない」と思った瞬間、われわれ日本人はみな、一体となって地獄へ落ちていくことになる。

同じように核兵器の配備について「沖縄ならいいか」と思った瞬間、「核大国・中国との間での、永遠につづく軍事的対立」=「永遠の朝鮮戦争レジーム」という、最悪の結果がそこには待ち受けているのだ。

けれども逆に、核の地上配備を沖縄と連帯する形で、日本人全体で拒否することができれば、北朝鮮とアメリカの間で「恐怖の均衡」が成立し、バノンが予言していたとおり、やがて北朝鮮の核開発の凍結とひきかえに、米軍は朝鮮半島から撤退し、日本の朝鮮戦争レジームも終わりを告げることになるだろう。

われわれ日本人が望んでやまない「みずからが主権をもち、憲法によって国民の人権が守られる、本当の平和国家としての日本」という輝ける未来は、その先に訪れることになるのである。