桃田健史 [ジャーナリスト]
ヒントはルノーの2人乗り電気自動車? 単なる乗り物の域を超えた 「超小型モビリティ」の本当の可能性
超小型モビリティ実証試験で活躍する
トヨタ車体「コムス」の正体
本連載第79回(メイド・イン・ジャパン復権の切り札「超小型モビリティ」という究極のエコカー)、第80回(豊田市の超小型モビリティ実証試験に見る都市内交通革命とトヨタの本音)で「超小型モビリティ」について紹介した。また、第84回(日本のモノづくりの常識は通用しない!わが道を行く中国発“超小型電気自動車”革命)で「超小型モビリティ」の来るべき競争環境について考察した。
こうした中でたびたび登場したのがトヨタ車体「コムス」だ。同車は日本市場で最も普及しているミニカーであり、産学官による様々な実験や実証試験で活用されている。
では、この「コムス」とはいったい何ものなのか?その歴史と現在のポジショニングを改めて調べてみた。
まず同車は、電気自動車だ。正確に表現すれば、道路交通法上で第一種原動機付き自転車(4輪)という部類に属し、運転には普通免許が必要だ。この カテゴリー、一般的に「ミニカー」と呼ばれている。全長x全幅x全高は1935mmx995mmx1600mm。重量は290kg。後輪それぞれの内側に インホイールモーターがあり、片側の定格出力は0.29kw、合計で0.58kw(「ミニカー」の最大定格出力は0.6kw)。電池は鉛蓄電池で、8時間 充電すると航続距離は市街地で約35kmに達する。価格は「ベーシック」で79万2750円。また同車にはこの他に、全長を2365mmにし搭載蓄電池を 増やして航続距離を約45kmに伸ばした「コムスロング」がある。
コムスは2000年にアラコ(当時)が、「エブリデー・コムス」(当時)として製造販売を始めた。アラコはトヨタ自動車の関連会社で、2004年 にシートなどの内装関連部門がトヨタ紡織と、「ランドクルーザー」や「エブリデー・コムス」などの自動車関連部門がトヨタ車体へ事業合併された。
以前、筆者がある自動車関連展示会で取材したトヨタ車体の営業関係者によると、「エブリデー・コムス」はアラコの塩見正直社長(当時)の鶴の一声 で企画が始まったという。なお、トヨタ自動車は2011年7月13日、子会社のトヨタ車体と関東自動車工場を2012年1月を目処に株式交換によって完全 子会社化すると発表した。
さて、「コムス」の販売状況について、トヨタ車体の総務部広報室に聞いた。以下その回答を箇条書きでお伝えする。
● 販売総数:発売開始の2000年から2010年までの11年間での累計販売台数は約2200台。
● 販売が多い地域:特に地域性はないが、愛知県、東京都、群馬県、大阪府、沖縄県が多い。
● 顧客の人口統計的な属性データ:ビジネスユーザーが大多数を占め、用途では、乳製品の宅配、電力会社の発電所内移動や検針、営業業務、OA機器メンテナンス会社の訪問用、弁当宅配、介護系会社の訪問用などが多い。
● 顧客の車両維持年数:データ無し。
● 主な充電場所:自宅や会社内の100Vコンセントを使用。
● 蓄電池の交換頻度:データ無し。但し、顧客に対しては新車購入から2~3年経過時を交換時期の目安として伝えている。
● 航続距離についての顧客の声:航続距離は長くなるほど利便性は高まる。
● 車両全体についての顧客の声:会社、個人としてCO2排出量削減等環境に配慮している姿勢をPR可能/ラン ニングコストが安く経済的だ(電気代は約2円/km、車検・車庫証明・重量税・取得税が不要)/車両走行音が小さいため、特に夜間・早朝の利用時(例:乳 製品配達)に住民に迷惑をかけにくい/小型ボディーなので市街地での取りまわしが容易/ボディーカウルがあるため、バイクに比べ濡れ難く寒くない。
● 顧客からの希望:1充電にかかる時間の短縮(現状はコムスロングで13時間程度)/車両販売価格の低減/バッテリー寿命向上と交換費用の低減。
また、今後の商品企画について、トヨタ車体側からの回答を紹介しよう。
Q(筆者):リチウムイオン二次電池の必要性について、どう考えているか。
A(トヨタ車体):期待すべき性能があるとは考えているが、現時点では高コストで車両販売価格の上昇につながり、顧客にコスト負担を強いることになるため、採用は難しい。
Q:発売以来、基本的な車体形状に変化がないが、近年中にモデルチェンジなどの予定はあるか。
A:市場のニーズや動向を見極め、必要があれば検討。
Q:これまで全国の自動車関連事業者を取材するなかで、次期「コムス」は横2人乗車となり、その試作車はすでに完成しているという声をたくさん聞いた。これは、国土交通省が平成24年度に試作車走行を計画している「超小型モビリティ」の車両規格を念頭に置いたものか。
A:2004年の東京モーターショーにおいて、2人乗りのコンセプト車を公表したことはあるが、上記の「超小型モビリティ」の車両規格を念頭に置いたものではない。
Q:平成22年度の国土交通省関連の「超小型モビリティ」実証試験(桐生市、豊田市、京都府、東京都千代田区、福岡市、宗像市)で「コムス」を使用 したケースが多い。加えて、全国各地での産学官による小型モビリティ実証試験で「コムス」が活用されている。こうした実証試験にトヨタ車体が直接的に関わ るケース、または実証実験の当事者との相互協議などは行っているのか。
A:当社は上記実証試験に対して直接的な関わりはないが、一部の実証試験においては、実施者からデータ提供を受け、相互協議も実施している。また、国交省や自治体等が実証試験にコムスを活用したいとの要望があれば、 国交省や自治体等の実費で車両を提供している。
「高齢者にやさしい自動車」は「超小型モビリティ」?
「高齢者にやさしい自動車」は「超小型モビリティ」なのか?
「超小型モビリティ」は国土交通省・自動車局と同省都市地域整備局が推進している「環境対応車を活用したまちづくり」のなかで、電動バス、電気自動車と共に検証が行われている移動体である。
そうした検証や議論について取材するなかで、筆者にとっては「超小型モビリティ」とイメージがダブる、ある移動体の将来構想が存在する。それが、 全国都道府県のうち、35道府県の知事らによって構成される「高齢者にやさしい自動車開発推進知事連合」が推進している「高齢者にやさしい自動車」だ。
35道府県は具体的に、北海道、青森県、岩手県、宮城県、山形県、福島県、栃木県、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、静岡県、富山県、 石川県、岐阜県、愛知県、三重県、福井県、京都府、和歌山県、鳥取県、岡山県、広島県、山口県、徳島県、高知県、福岡県、佐賀県、長崎県、大分県、熊本 県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県だ。
この計画は、福岡県の前知事、麻生渡氏の強いリーダーシップによりこれまで調査研究が進められてきた。筆者は2009年6月、本連載第4回で 福岡県の水素エネルギー戦略について麻生氏にインタビューした。その際に同氏は「福岡では高齢者の免許返上を推し進めるのは難しい。日頃の足がなくなって しまう。こうした社会背景について、都会の人には分からない」と漏らし、その当時すでに本格的な調査研究が始まっていた「高齢者にやさしい自動車」の実現 に向けた意欲を見せていた。
そして2011年3月、プロジェクトの大筋をまとめた報告書が公開された。具体的には、①検討対象とする高齢ドライバーの範囲の規定②高齢者ドライバーの事故分析③高齢者ドライバーアンケート調査と分析④技術開発状況調査⑤インタビュー調査などが行われた。
なかでも、2009年11月~2010年1月に実施された全国10859件に及ぶアンケート調査は、都市部、地方都市、農村部での高齢者ドライバーの運転実態を明らかにした画期的なものだ。これほどまでに大掛かりな調査は、日本の自動車史上で過去に例がない。
こうした調査研究の末、知事連合が作り上げた「高齢者にやさしい自動車」のコンセプトは次のとおりだ。まず車体サイズは全長x全幅x全高= 2.3~2.8mx1.3~1.4mx1.5~1.6m。定員は2名。車両重量は700kg以下で、最高出力10~20kw、最高速度60km/h以下、 航続距離は60kmだ(電気自動車と定義した場合、ヒーター使用で30kmほど)。
このコンセプト、数値上は「超小型モビリティ」と近いように思えるのだ。果たして、「高齢者にやさしい自動車」=「超小型モビリティ」なのか?「高齢者にやさしい自動車」の実現可能性は高いのか?
そうした疑問について、高齢者ドライバーの研究者であり「高齢者にやさしい自動車開発委員会」と「超小型モビリティ」の検討会の両方のメンバーである、東京大学・工学系研究科機械工学専攻・高齢社会総合研究機構長・鎌田実教授に同大学本郷キャンパス内で話を聞いた。
ちなみに、同氏は「コムス」発売前の1998年に、自動車デザイン会社のシバックス社と共同でミニカー規定の「KAPPO」を制作し、1998年 11月に秋田県鷹巣町(現在の北秋田市)で実証試験を行った経験を持つ。同車は全長x全幅x全高=2270mmx1230mmx1620mm、ホイール ベース1600mm、重量300kg。最高出力0.6kw、12V、35Ahの鉛蓄電池4つ搭載で満充電での航続距離が30km。量産した場合のイメージ 価格は40~50万円。筆者の目には、同車の外観イメージはかなり「コムス」に近いと思えた。
Q(筆者):国土交通省の「超小型モビリティ」と知事連合の「高齢者にやさしい自動車」は基本的に違うのか、同じなのか。または一部でクロスオーバーしているのか。
鎌田氏:「人によって受け止め方が違う。双方の(計画の)車両について、明確に定義していないのでイエス・ノーでは答えられない。ただ、「高齢者にやさし い自動車」の方が多少、軽自動車に近いイメージがある。私は知事連合の本件とは計画の最初から関わってきた。そのなかで福岡県の同事務局に対しては、以下 のように伝えてきた。“これをミニカーに近いカタチにすれば、地場産業の活性化につながる。だが軽自動車に近いカタチにすると、衝突安全への対応と量産体 制の必要性から参入するのは大手メーカーのみとなる。だからこそ、理想論に振らず、現実的に何が出来るか議論を進めたい”と。そうしないと絵に書いた餅に なってしまう。また、国土交通省の超小型モビリティの実証試験では現在、ミニカーの「コムス」や移動支援ロボットのトヨタ『ウイングレット』、『i- Real』等が混在しており、関係者のなかで超小型モビリティに対するイメージが違う。今後の議論のなかでカテゴリー分けを明確にするべきだ」。
また、鎌田氏は「高齢者にやさしい自動車」「超小型モビリティ」の別を問わず、新しい小型電動移動体の実現に向けて、2つの持論があるという。
① ゾーン規制
欧州で行われている、指定域内で通行する全ての移動体の最高速度を30km/hで統一する「ゾーン30」が参考となる。低速走行となる小型電動移動体に とって、最大の問題は混合交通のなかでの走行安全性の確保だ。ゾーン規制すれば、相対速度差がなくなり、結果的に安全性が増す。ちなみに、内閣府が 2011年3月に公開した第9次交通安全計画(平成23年度~27年度)のなかで、重点施策及び新規施策としてゾーン規制が明記された。
②車両の安全対策に関するバランス感覚
国土交通省は2011年6月2日、交通政策審議会陸上交通分科会自動車交通部会技術安全ワーキンググループの報告書として「交通事故のない社会を目指した 今後の車両安全対策のあり方について」を発表した。同ワーキンググループの委員長は鎌田氏だ。そのなかで、第3項/今後の車両安全対策に(3)新たなモビ リティへの対応がある。そこに以下の表記(本文ママ)がある。
環境意識の高まりや、高齢者の移動手段の確保など、多様なニーズに対して超小型モビリティへの期待が高まっている。
・二人乗りの超小型モビリティに自動車と同等の衝突安全性能等を備えることはできず、一般の交通環境において自動車と同様に使用して事後が発生した場合、乗員が被害を受ける危険性がある。
・しかし、二輪車や現行のミニカー(原付四輪)と同様に、その特性を活かした利活用が考えられ、車格や用途に即した安全基準を定め、適用することが適当。具体的には、ミニカーの基準をベースに安全性等の安全性能や走行性能を確保するための基準を検討するべき。
・これらを踏まえて、今後、実証試験等により、実際に公道を走行した場合の影響等を確認し、望ましい利活用の場面や、求められる性能について検討することが必要。
・移動支援ロボットについては、交通社会における受容性等を確認する必要があり、平成23年から実施される特区における実証試験の結果等を踏まえて検討することが必要。
鎌田氏はこうした「新しいモビリティ」の安全基準対策の今後の進め方について、今回の取材で2つの考え方を示した。
ひとつは、軽自動車の商品企画についてだ。自動車メーカーは近年、軽自動車の規格で車両寸法枠一杯での商品企画を重視している。車内スペースを極 力広くすることで、市場にアピールしている。しかし、軽自動車本来の商品性を考慮して、小さな軽自動車という観点での商品企画を進めるべきだ、というこ と。
もうひとつは、ミニカー規定の変更、または2人乗りミニカーのカテゴリーを新設すること。そこで衝突安全基準の設定を模索する。現行ミニカーの 「コムス」の場合、モーター出力が0.58kwであるため、最高速度は約50km/h。2人乗りミニカーでは、最高速度と乗員増による総重量を考慮する。
鎌田氏は「(超小型モビリティや高齢者にやさしい自動車は)全ての道路で走れるオールマイティな車両ではない。使われる状況を明確にし、そうした 場面での利便性を強調すべきだ。そうすれば、一般的な電気自動車より価格が低いことから、(市場のなかで)ある地位を占めることが出来る。ひいては、電気 自動車全体に関する(一般社会の)理解度を広げる」とした。
また、上記報告書の文章のなかで、筆者が注目した部分は、超小型モビリティを「2人乗り」と表現し、その参考写真として仏ルノー社が今年発売する2人乗 り電気自動車「Twizy (トゥイジー)」を使用したことだ。同車は全長x全幅x全高=2320mmx1191mmx1461mm、ホイールベースが1684mm。重量は 450kg(リチウムイオンバッテリー100kgを含む)。モーター出力によって2モデルあり、定格出力4kwで最高速度45km/hが「Twizy 45」、同8kwで同80km/hが「Twizy」だ。車両価格は前者が6990ユーロ(約79万円)、蓄電池のリース費用が月額45ユーロ(約5090 円)。後者が同7690ユーロ(約87万円)、同49ユーロ(約5540円)。加えて、さらに高性能な8490ユーロ(約96万円)バージョンもある。
また、日産関係者によると、日産の特殊車両を製造する子会社オーテックで現在、「Twizy」の日本仕様の研究開発が進んでいるという。日本仕様 は超小型モビリティの新規定を考慮し、50万円程度(販売価格)の低価格化を狙っているという噂が、日本のミニカー製造業界内に広まっている。これが事実 だとすると、搭載される蓄電池をあえて廉価な鉛蓄電池にするか、またはリチウムイオン二次電池を使う場合は市場シェア確保に向けた価格戦略で思い切った経 営判断を下す必要がある。
ちなみに、上記報告書のなかでは、移動支援ロボットの参考写真として、米「セグウェイ」やトヨタ「i-Real」が紹介されていた。
さて、本稿の最後にもうひとつ、「高齢者にやさしい自動車」や「超小型モビリティ」での大きな課題を紹介したい。それは、運転支援だ。
これまで見てきたように、「超小型モビリティ」=「高齢者にやさしい自動車」では必ずしもない。
だが、こうした小型の電動移動体を最も活用すると思われるのは、高齢者だ。特に地方都市や過疎地などでの利活用が多くなると想定される。
そうなると「いかに安全に、ぶつからず、楽に走行出来るか」が問題だ。そこで「高齢者にやさしい自動車」の報告書では2つの機能が必然だとした。
ひとつは、事故防止機能。これは、高齢ドライバーに特徴的な「アクセルとブレーキの踏み間違い事故」及び、特に発生件数の多い「出会い頭事故」 「右折時の事故」「衝突事故」を防止する。もうひとつは、運転能力向上機能。こちらは、自動車への不満や運転で気になること(「知覚機能」「体力・筋骨格 系機能」「情報処理機能」)に対する機能だ。
運転支援に関してはすでに、様々な機材やサービスが実用化されている。ミリ派レーダー等を使って、走行レーンを外れると警報やハンドルへのアシス ト力が加わったり、前方車両が接近した際に自動ブレーキをかけるなど、高級車を中心として採用が進んでいる。だが、これらを車体価格が50~100万円程 度の超小型モビリティに搭載するためには、機能の簡素化や、高級・中級乗用車分野でのさらなる普及による量産効果を期待しなければならない。
ところで、運転支援の分野をさらに広い視野で考えているのが「Co-Mobility (コ・モビリティ)」という考え方だ。これは、コミュニティ科学、モビリティ科学、そして人間調和科学を三位一体化した学問領域だ。
筆者は超小型モビリティの取材を進めるなかで、超小型モビリティは次世代小型電気車両という技術的な側面より、街づくりや住民とのつながり合いと いう側面の方が重要であると感じるようになった。だがこうしたコミュニケーションの観点は一般的に、「見える化」や定量化することは難しい。そのなかで現 時点で実用化されているのが、日本が世界をリードしている分野のITS(高度道路交通システム)だ。カーナビや、カーナビと連動するVICS(ビークル・ インフォメーション&コミュニケーション・システム)がその代表例だ。
こうした「コ・モビリティ」の研究者で、「高齢者にやさしい自動車開発委員会」に制御分野の専門家として参加、また「超小型モビリティ」の検討会にも参加 している、慶応大学・コ・モビリティ社会研究センター特別顧問、川嶋弘尚名誉教授に同大学新川崎キャンパスで話を聞いた。
同氏は長崎県が実施している、経済産業省のEV・PHVタウン構想の「長崎EV&ITSプロジェクト」の会長も務めている。尚、慶応大学ではこれ までに、文部科学省科学部技術振興調整費/先端融合領域イノベーション創出拠点の形成として2009年と2010年に宮城県栗原市で自動運転の実験を行っ ている。実施場所は現在は閉鎖されたレクリエーション施設「細倉マインドーム」のゴーカート場で、車両は「コムス」を合計8台使用した。
Q:「コ・モビリティ」は研究分野として非常に広い印象がある。これを超小型モビリティで今後、どう活用するのか。
川嶋氏:「まず東日本大震災後、電気自動車をとりまく環境は変わった。風力、太陽光など自然エネルギーを地産地消する議論が高まった。我々は3年前 から、電気自動車を含めた市町村単位での(エネルギー需給に関する)マイクログリッドを考案してきた。ソーシャルキャピタルへの共通認識を高め、コミュニ ティ全体としての仕組み作りをすることが、我々の研究目標のひとつだった。その実現に向けて、現時点では実施は未定だが、東北地方の被災地で、我々の実績 を活かして自動運転(電気自動)車の実証試験を行いたいと考えている」。
Q:低価格の超小型モビリティでどのような情報関連プラットフォームを作るのか。IT産業の進化は自動車産業よりも早いので、時代遅れになることはないのか。
川嶋氏:「超小型モビリティは走行速度が50km/hかそれ以下で遅い。そのため、4G(第4世代移動通信システム)で十分対応可能だ。運転支援と しては、電池残量のモニタリングや、目の前の道で『そこが危ない』『曲がれ』という指示に対応する。超小型モビリティ側のハードウエアが、通信産業の成長 によって急激に変わることはないと考えている。高速道路などで導入が進んでいるITSスポットはより高速走行する一般自動車が対象だ。超小型モビリティの 基本的な考え方は、高速道路を走らないことだ」。
Q:日本の超小型モビリティは世界標準となるのか、それとも日本特有のコミュニティ形態に対応した「良きガラパゴス化」にするべきか。
川嶋氏:「運転者自身と歩行者保護の安全性を担保するための衝突試験は考慮されるだろう。だが、通信を活用して事故回避するなど、情報通信支援を超 小型モビリティに搭載することは(運転支援に関して)効果がある。しかし当然、コストは上がり、搭載は自動車メーカー側の経営判断だ。そうしたなかで、 『高齢者にやさしい自動車』で35道府県が参加しているように、市民からの声による社会全体の雰囲気作りが必要だ。そうした意味でのガラパゴス化は可能だ と思う」。
以上見てきたように、超小型モビリティには、課題は多いが、超高齢化社会へまっしぐらの日本において、不可欠なものだ。市民生活というまちづく り、また、地域産業活性化という街づくりのために、超小型モビリティが果たすべき役割は大きい。その可能性に、市民、行政、産業界はもっと目を向けるべき だ。
http://diamond.jp/articles/-/13190?page=1~10 より引用