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かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

馬場あき子の外国詠 276(中国)

2019-06-20 17:08:27 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   
276 収容所(ラーゲリ)の針葉樹林に死にしもの若ければいまだ苦しむといふ

     (レポート)
 いたこの言うには「シベリアの森で、樹木の伐採に働いて命を落とした若者は、若いのでまだその魂は存分に納得せず、成仏できずに、この世の何処かで苦しんでいるのですよ」と。

     (まとめ)
 「収容所(ラーゲリ)の針葉樹林に死にしもの若ければいまだ苦しむ」まで巫女の言葉なのか、もっと一般的な認識なのか不明だが、酷寒の地で亡くなった人の魂は、余りに若かったので未だ苦しんでいるというのだ。「収容所(ラーゲリ)の針葉樹林に死にし」は伐採作業に従事した人達のみをいうのではなく、彼の地で亡くなった兵達全てを指しているのだろう。(鹿取)



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馬場あき子の外国詠 275(中国)

2019-06-19 20:12:21 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   

275 魂は雪に紛れてありと言ひて青森の巫の泣きしシベリア

     (レポート)
 いたこは一生懸命祈ったが、依頼人の願う魂は、彼女の口に出てこない。それで彼女は「雪に紛れて彼の地をさまようているのですよ」と言ってその情景を偲んで泣いていた。(T・H)

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馬場あき子の外国詠 247(中国)

2019-06-18 20:10:00 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   

274 呼びても呼びても帰り来ぬ魂ひとつありきシベリアは邃(ふか)しと巫(ふ)に言はしめき

      (レポート)
 先の戦争の未亡人か、または母親かが、青森県の恐山へ来ていたこに口寄せを頼んでいる。いたこは一生懸命祈っているのだが、どうしてもその依頼人の希望する死者の魂を呼び出すことができない。その兵隊の魂は本土に帰ってきていない(帰ることができない)のではないか。「シベリアは遠いし奥が深いなあ」といたこに言わせてしまう。(T・H)


      (まとめ)
 275番歌に(魂は雪に紛れてありと言ひて青森の巫の泣きしシベリア)とあるのでこの「巫」は恐山の「いたこ」で、レポーターが書いているような状況なのであろう。どんなに祈っても帰って来ない魂があって、巫女はとうとう魂を呼び出すことを諦めて「シベリアはとても奥が深くて…」と依頼人に告げたのだろう。「邃し」という漢字に森林に覆われた暗くて寒いシベリアの果てしのなさが託されている。「言はしめき」の使役を使って巫女の微妙な心理を反映している。(鹿取)



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馬場あき子の外国詠 273(トルコ)

2019-06-17 19:45:21 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   

273 シベリアの雲中をゆけば死者の魂(たま)つどひ寄るひかりあり静かに怖る

      (レポート)
 シベリアの地には、第二次世界大戦後、ソヴィエト連邦によって捕虜として連れて行かれ、強制労働をさせられ、彼の地で命を落とした多くの元日本兵・軍属などがいた。その悔しさと望郷の念にかられた魂達が集いより立ち上がってくるような感じに襲われる。その魂達への思いを深くされ、心中深く哀悼の意を秘めていられる。ここの「怖る」は畏敬の念で、心深く畏れるという感じであろう。(T・H)


      (まとめ)
 シベリアの上空、雲の中を飛行機で飛んでいる。雲がひかっているのは死者の魂が集まっているところだ。死者はもちろんレポーターが書いているようにシベリアで強制労働させられた日本の兵隊達のものであろう。(鹿取)


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馬場あき子の外国詠 272(トルコ)

2019-06-16 19:26:20 | 短歌の鑑賞
馬場あき子の旅の歌36(2011年2月実施)
  【シベリア上空にて】『飛種』118頁~
   参加者: N・I、Y・I、崎尾廣子、佐々木実之、曽我亮子、T・H、渡部慧子、鹿取未放
   レポーター:T・H 司会とまとめ:鹿取 未放
   

272 白光を放つ雲上ひきしまり足下にシベリアの秋ひろがるといふ

          (レポート)
 眼下は太陽に照らされた一面の雲海である。下界は厚い雲に覆われていて見えないが、きっとシベリアの秋の大地が広がっていることだろう。「白光を放つ雲上」が引き締まっているとはどのような情景であろうか。下界にはシベリアの秋が広がっていると思うだけで雲上が引き締まって感じられたのであろうか。それとも、以下の歌にあるようにシベリアの地に逝かれた若き兵士たちを思って、お気持ちが引き締められたのであろうか。(T・H)
 
          (まとめ)
 トルコに行く飛行機がシベリア上空を通っている所である。白光を放つ雲を見下ろしている。雲の下にはシベリアの秋が広がっているはずだが、雲に隠れて何も見えない。レポーター同様「ひきしまり」がやや分かりにくい。「ひきしまり」の主語は雲なのか、作者の心なのか。次の273番歌(シベリアの雲中をゆけば死者の魂(たま)つどひ寄るひかりあり静かに怖る)を読めば、死者の魂が集まっていることと「ひきしまり」には関係があるのだろう。(鹿取)

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