かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の歌一首鑑賞 221

2022-10-05 12:14:06 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                  鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


221 高見順、江國滋とすさまじき先達はあり ありがたきかな
            2003年5月作

 「すさまじき」と「ありがたき」が絶妙である。高見順も江國滋も食道癌で亡くなった作家である。そして共に壮絶な闘病日誌を遺している。まさに「すさまじき先達」だった。それを作者は「ありがたき」という。この「ありがたき」はもとの字義どおりのめったにない「有り難き」であり、皮肉と屈折をこめたいわくいいがたい感謝でもあるのだろう。
 ちなみに、江國滋句集『癌め』の巻頭一句は次のとおり。詞書きを含めて引用する。

      矢吹外科病院にて、早朝、小松崎修先生の内視鏡検査
       その場で食道癌と宣告される。先生の第一声「高見順です」
       寒の明け告知の一語「高見順」   平成9年2月6日

 なかなか文学的な医者である。江國は句会をもっていたので、その仲間の医師かもしれない。最後の文士といわれた高見順が「癌が怖くて文士が務まりますか」と啖呵を切ったように、江國にはそれを見習う覚悟があり、高見順を詠み込んだ句を意識的に巻頭に置いたのだろう。それ故、この歌で高見・江國と並べたとき、清見糺にも歌人として同じ覚悟があったとみるべきである。


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