かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の短歌鑑賞 242、243

2022-11-02 15:20:56 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                      鎌倉なぎさの会  鹿取 未放

242 ネパールへゆくはなしなどききながしきんしゅきんえん地獄にわれ在り
            2003年8月作
 
 酒もタバコも大好きだった作者は、食道癌になってそれらが禁止されたことが相当の苦痛だったようだ。抗癌剤治療を始めた頃も、まだ隠れて酒やタバコをのんでいた。この歌に出てくる馬場あき子が芸術院の会員になって恩賜の煙草をもらってきた時には、友人が一口吸わせてやろうと言い出して一時退院していた作者にこっそり吸わせたことがあった。
 ところでネパールについてはまだ癌が見つかる以前から決まっていた「馬場あき子と行く吟行の旅」で、〇三年一一月に予定されていた。本人も行くのを楽しみにしていたので、八月の手術がうまくいけばネパールだって行けるかもしれないよ、と励ましのつもりでしていた話も、病人にとっては白々しく腹立たしいだけだったのかもしれない。ネパールへは私も行くことになっていたので、この歌は私に対する当てこすりのようだ。(鹿取)

243 きっぱりとタバコをやめてサケやめてなんのいのちぞ ここだかなしき
             2003年8月作

 万葉集の「多摩川にさらす手作りさらさらに何そこの児のここだかなしき」の結句を本歌取りしている。「ここだ」は多いの意の副詞、「かなしき」は本歌では「いとしい」の意だから下の句は「どうしてこんなにこの娘がいとしいのだろう」となる。しかし、掲出歌は「かなしき」を現代語として使っているので結句は「何と悲しい事よ」「とても悲しい」の意になる。酒やたばこをやめてまで生きながらえて何になるのか、と問う。誰にともなく。

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