かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『泡宇宙の蛙』の一首鑑賞 33

2022-03-26 11:46:51 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究2の5(2017年10月実施)『泡宇宙の蛙』(1999年)
    【白根葵】P28~
     参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子    司会と記録:鹿取未放


33 夕焼けの谷川岳を押したおし逢いにゆきたきはなのかおばせ

    (レポート)
 逢いにゆきたいと思っている。谷川岳を押し倒しゆきたいという。この強さが暴力的ではなくゆたかな広がりをもつのは「夕焼けの」にあるのだろう。夕焼けの色を受けているであろう。またその時の人恋しくなるころを考えあわせると、一首にやさしさ、なつかしさがそなわっている。このような景を設定して逢いにゆきたきとは、他国の王女へ寄せる思いのようでもあるが、実はあえかな「はなのかおばせ」である。美しい花のような人と思ってもいいし、実際の美しい花かもしれない。9番歌【蟹蝙蝠(かにこうもり)大群生して霧深したれに逢いたくて吾は生まれしや】でも言われたように壮大なロマンを感じる。(慧子)


    (当日意見)
★普通「かんばせ」っていいますよね。押し倒しって凄いですね。(曽我)
★辞書にはどちらも出ていますね。「かおばせ」がもともとで、「かんばせ」は音便。(鹿取)
★夕焼け時の人恋しい情趣がうまく出ています。夕焼けを受けて谷川岳が美しく輝いているのでし
 ょうか、それとも夕焼けを背景にした山でしょうか。そんな「谷川岳を押したおし」ってダイナ
 ミックですね。万葉集の柿本人麻呂の「…夏草の思ひ萎えて偲ふらむ妹が門見む靡けこの山」を
思い出しました。(鹿取)
コメント
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