だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

ミライの職業訓練校成果発表会にて

2016-02-26 14:36:30 | Weblog

「ミライの職業訓練校のキャッチコピーが三つあって、『やりたいことだけやって暮らす』、『やるべきことだけやって暮らす』は、そうそうその通りと思って入校したのですが、3番目の『働くことが愛することになる暮らし』というのはよくわからなかったのです。それが今はわかります。体が不自由な母にそれでも出来る仕事をしてもらっています。今は突然亡くなった父の会社を整理する仕事をしています。父がどういう仕事をしているかまったく知らず、その会社を引き継ぐことになるとは思ってもみませんでしたが、自分の理想ややりたいことだけ追求するのではなく、父の思いを引き継いでこうして働いていることが、家族を愛することになっているんだと分かりました。」

ミライの職業訓練校の受講生成果発表会で、Iさんの言葉に、会場は厳粛な空気につつまれた。ミライの職業訓練校は、今の都市における普通の働き方、暮らし方に疑問を持った人向けに、新しい働き方、暮らし方を見出してもらうためのプログラムである。豊田市の農山村を主なフィールドとして、お互いの「モヤモヤ」を持ち寄り、参加者どうしの対話によって深める基礎コースと、「師匠」を決めてその人や事業から一人ひとりの学びを得る実践コースからなる。その成果発表会は受講生だけでなく、思いがけずたくさんの参加者を得て、会場は満員だった。Iさんの言葉はその全員の心の中にしみ込んだ。

豊田市の農山村に精神障害者の居場所づくりをめざすHさん、Sさんコンビがめざすのは「住みなれた場所で、ありのままの自分が輝ける場をつくる」ということだ。美しい言葉である。

手作り人工衛星を宇宙に打ち上げることを夢みるKさんのモットーは、「ないならつくる」。年齢のために思うように就職できなかった経験から、仕事も「ないならつくる」と、香りも楽しめる蚊取り線香の開発に挑戦している。

市民としてまちづくり活動に取り組むOさんは、市民ライターとプロのデザイナーの共同作業としてできあがった豊田市農山村の移住ガイドブック『里co』に学び、「市民とプロの力の合わせ方がキーポイント」だと指摘した。

徳島県神山町に視察に行ったSさん、Kさん、Iさんトリオは、「やればええんちゃう」、「失敗しても大丈夫、ユンボで埋めちゃるから」という神山のチャレンジ精神を学んできた。帰りの車の中で構想が生まれた「ちおん」プロジェクトは、都市で暮らす多くの人に素足で土の温かさを感じてもらうということをミッションにした。何が目的かよくわからないけれども、大事なことであることは確か。そういうことをどんどんやっていきたいと。

このように、たくさんの新しく深いコンセプトが語られた成果報告会であった。一人でモンモンとしているだけでは、到達できなかった気づきだと思う。モヤモヤを大事に、対話しながらモヤモヤを育て、進化・深化させるというプロセスを徹底してやってきたことの成果だと思う。ありのままの自分が輝く働き方、暮らし方をそれぞれにどう実現していくか。これからのみんなの動きに目が離せない。

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