だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

里山技術工房・電動軽トラ編

2014-04-09 10:42:11 | Weblog

 

 最近、まちかどでニッサンのリーフの姿を見かけることも多くなってきた。ゼロから電気自動車として開発された本格的な電気自動車である。所々に急速充電器も見かけるようになった。ただまだまだ「マニアの乗り物」という感じである。

 一方、いなかでは、電気自動車はガソリン自動車にくらべて実用面で優位にたつような状況が出てきた。というのはいなかではガソリンスタンドがなくなっていっているのである。ガソリンスタンドの地下タンクは一定年限が来たものは交換しなくてはならない。たいへんな設備投資となるが、地域は人口減少、高齢化するなかで採算がとれる見込みがなく、店をたたんでしまう事例が全国の中山間地域で急速に増加している。そうすると住民はより遠いところに燃料を入れにいかなくてはならない。ガソリンを入れにいくためだけに往復数十kmかかるとすると、何をやっているか分からない。

 それに対して、電気自動車ならば自宅で充電できる。さらに高騰するガソリンにくらべて、キロメートルあたりにかかる電気代は格段に安い。車体本体価格がそこそこであれば、電気自動車は現実的な選択肢である。

 一方、いなかで電気自動車を動かす上で不利なのは、坂道が多いことである。上り坂では電力をたくさん消費するので、航続距離が伸びない。一充電で100kmはとても無理で、せいぜい50kmとかいう距離となる。そうすると町まで通勤とか買い物という利用の仕方はなかなか難しい。

 そこで軽トラである。軽トラは日本が誇るべき車文化である。世界のどこにもないすぐれた乗り物である。狭い山道でもすいすい通れて、かなりの重量の荷物が載せられる。農作業や山仕事になくてはならないアイテムである。田んぼや山への往復であれば一日に走行する距離はたいしたことはない。軽トラを電気で走らせたい。

 

 実は中国の農村では、電動軽トラならぬ電動三輪車が一人に一台というような勢いで爆発的に普及している。自転車のようなハンドルにアクセルとブレーキが付いたシンプルなつくりで、荷物もそれなりに載せられ、荷台には二人まで乗せられる。それなりにパワーがあり実用的である。夕方になると村の中心部に思い思いに電動三輪車に農産物や雑貨類を載せた人々が集まってきて、軽トラ市ならぬ電動三輪車市が開かれる。

中国は産油国でもあるが、すでに国内生産だけでは需要をまかなえず、年々輸入量が増加している。農村でガソリン自動車が爆発的に普及してしまうととても石油が足らない。一方で中国に豊富に産する石炭を火力発電所で燃やして電力は作ることができる。これが政策的に農村で電動バイクや電動三輪車を普及させている理由だろう。

 

 ひるがえって日本のいなかには電気がある。小、マイクロ、ピコというような形容詞がつく水力発電である。1000kWクラスの小水力発電所は今から100年前、大正から昭和初期にかけて、全国の山間地でさかんに建設され、その多くはいまだに現役で働いている。最近では、農業用水路で1kWクラスのマイクロ水力発電機を設置する例が増えてきた。さらにいなかに行くと数Wから数百Wのピコ水力発電機をぽつぽつと見かけるようになった。

 豊田市旭地区では住民グループが豊田市の住民活動助成金(わくわく事業)を得て、200Wのピコ水力発電機を設置している。クロスフロー水車の石田式というやつで、コンパクトながら軽快に発電している。ただ、できた電気があまり有効に活用されていない。施設を照らす照明に使われているのみである。この電気を活用して電動軽トラを走らせられないだろうか。計算してみると、一晩かければ数十km走れるくらいの充電ができそうである。

 電動軽トラは、普通のガソリンエンジンの軽トラを改造して作ることができる。改造キットが販売されているのである。エンジンと燃料タンクをおろし、モーターと制御装置、バッテリーを載せる。アクセルペダルと制御装置をつなげば普通の感覚で運転できる電動軽トラができる。車検を受けて公道を走ることもできる。

 そこで私たちは、岐阜県郡上市明宝の栃尾里人塾で電動軽トラ改造講座をやっているということを聞きつけて見学に行った。講師の日本EVクラブ愛知支部所属の水野友夫さんは旧知である。そこでは元工場だったというクレーン付きの建物の中で、かわいらしくペインティングされた軽トラが改造作業の真っただ中であった。モーターは当たり前だがエンジンよりはコンパクトである。さすがにバッテリーは場所をとる。充電用に普通の電化製品と同じコンセントプラグが伸びているのがご愛嬌である。電動にする場合、本来はクラッチやトランスミッションは不要である。モーターは低回転速度での力が強く、アクセルを踏めばそのまま加速していくからである。ただ、雪の降る山間地では4WDが必須ということで、ここではクラッチ、トランスミッションをそのまま活用している。ただ4速で発進できるだろう。

 このようすにわが意を得たりということで、豊田市旭地区で電動軽トラ改造講座を開催することにした。(株)M-easyの戸田友介さんが実行委員長で、水野さんにアドバイザーをお願いし、地元の自動車整備工場にも協力をお願いしてDIYで電動軽トラをみんなで作る。そのノウハウを学び、さらにいなかでの電気自動車の普及につなげていきたい。

学びたいことを学ぶ講座を自分たちで企画し、お金を出し合い、知識と技術を身に着ける。これが本来の「大学」の姿でもある。いっしょに学びましょう。

 

電動軽トラ改造講座 「暮らっしっくCarをつくろう♪」

4月19日スタート。詳しくは↓で

http://classic-car-ev.jimdo.com/

 

 

 

 


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1 コメント

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荷台に天ぷら廃油の発電機を載せて走りたい……。 (わたなべあきひこ)
2014-11-02 00:22:21
 航続距離を伸ばす方法として、荷台に天ぷら廃油を燃料とする小型のディーゼル発電機を載せる、というのはどうでしょうか?
 車庫の屋根にはソーラー発電のパネルを載せて、家庭用の独立型発電のための電動軽トラを動く蓄電池として使うことができないかと画策中。
 化石燃料に頼らなくてもほんのちょっとの不便を許容できれば、こんなに楽しく快適に暮らせるということを紹介したい、などとも思っています。
 まだ、丸目のベース車両と中古のモーター、それに小型のディーゼル発電機が見つかったというあたりですが、少しずつ楽しみながらプロジェクトを進めていきたいと思っています。
 だいずせんせいも、電動軽トラに興味を持っているということがうれしくて、思わず投稿させていただきました。
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