だいずせんせいの持続性学入門

自立した持続可能な地域社会をつくるための対話の広場

機械萌え

2014-04-06 20:38:57 | Weblog

 

 今日は豊森なりわい塾の公開講座で、内山節さんと塩見直紀さんの講演を聞きに名古屋の産業技術記念館に行った。講演会もよかったのであるが、会が始まる前に見た記念館の展示がとてもよかった。産業技術記念館はトヨタ自動車が運営する博物館で、トヨタの産みの親、豊田佐吉の自動織機にまつわる繊維工業の技術と、自動車生産の技術の展示がある。ずっと昔に行ったときは、繊維関係のものはまったく興味がなかったのであるが、今回はこちらが目当てである。

 以前の記事に書いたように、持続可能な地域と暮らしをやっていくには、地域の資源を活用して、衣食住エネルギーをできるだけ自給することが大切である。食・住・エネルギーはだいたいどうやればよいか分かるのであるが、最後の難関が衣である。ワタを育てて、手紡ぎ、手織りではどうやっても成り立たない。地域で作ったり修理したりできるシンプルな機械を自然エネルギーで動かす、ということで自給的な衣類の生産を行えるようにしたい。それは歴史に学ぶのが一番である。

 まず糸紡ぎについては、ここでもガラ紡の機械が復元されてあった。歯車までオール木製で手動ハンドルを回して機械を動かすことができた。これを山では上掛け水車で回し、平野では矢作川に浮かべた船に外輪船のように水車をとりつけ、船を繋留して水車を回し、船の中に機械を置いて紡績をしたのである。これをぜひ復元したいものである。

  次に織。豊田佐吉が取り組んだのは、まずは人力の織機の改良だった。布を織るというのは、たて糸を交互に上下しながら、そこによこ糸を通していく。従来のハタはよこ糸を人間の手作業で右へ左へと通していた。佐吉はよこ糸をボビンに巻いてしこんだ木製の杼(ひ)をハタの動きとともに自動的にレールの上を右へ左へとすべらせる機構を考えた。この工夫によって片手でハタが操作できる。説明のお姉さんが実際に操作をしてくれたが、これは面白そうでやってみたい感じがした。

 この動力を機械動力にしたのが豊田式汽力織機である。蒸気機関の動力を布ベルトで伝達して動かすもので、水力でも可能だろう。フレームはすべて木製。それに鉄製の歯車やカムがついている。コンパクトにして直感的な仕組みである。実際に電動モーターで動かしてくれたが、この動きがなんとも心地よい。杼が左右に動くとカチャカチャ、カチャカチャと軽快な音をたてて布が織り込まれていく。まったく、100年前の機械に萌えてしまった。

 佐吉はこれにいろいろと改良を加えていく。まずたて糸が一本でも切れたら、機械を止めて結びなおさなければならない。そうしないとせっかく織った布が不良品になってしまう。自動的に糸の切断を検出し機械を停止させる機構。さらに、杼の内部にしこまれたよこ糸がなくなったら機械を止めずに自動的に新しい杼に交換する機構。これらを木製織機から30年の歳月をかけてこつこつと実現していくのである。

  記念館の展示は、さらに現代的な機械の説明へと移っていく。杼を機械的に動かしていては時間がかかる。よこ糸を水の勢いで飛ばすウォータージェット、さらに圧縮空気で飛ばすエアジェット。不思議だが本当に糸がびしっと飛んでくるのである。これで目にもとまらない速さで布が織り込まれていく。最後は数千本あるたて糸一本一本に制御装置がついていて、コンピュータ制御でどんな複雑な模様でも織り込むことができる織機。写真もそのまま布に織り込まれていく。

  すごいなと思うけれども、少しも萌えなかった。

  佐吉の自動織機を現代によみがえらせたい。これから地域の工房で使うということを考えると、難しい機構は必要ないだろう。初代豊田式織機がよいと思う。これを水力(動力)で動かしたい。

 私の研究室で研究しているらせん水車も100年前に富山県の鉄工所で発明されたものだ。持続可能な社会をつくるための技術はもう100年前に出そろっていたと言ってよいだろう。もちろん現代的に改良する必要があるだろうが、その後の100年間の技術の歴史は、大規模な工場で大量生産をして利益をあげるために大型化、高速化していって、普通の暮らしからは遠ざかっていった。それを100年前にたちもどって、違う方向にレールを付け替え、将来に生かせるカタチに発展させる。そこに技術革新の新しい沃野があるのである。

 

 

 

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