私のがんが消えたことについて、何か現代科学では説明できない神秘的なことが起こったのではないか、と感じられる方もいらっしゃるかもしれないので、科学的な解釈も述べておきたい。もっともあくまでひとつの解釈であって、以下の解釈が科学的に検証できるわけではなく(そのためには何度もがん男くんに大きくなってもらわなければならないのでやめておきたい(笑))、また別の世界観によれば別の解釈も可能ということをご理解いただいた上で、聞いていただければと思う。
心と体の関係については、安保徹『免疫革命』講談社インターナショナル2003年が独自の理論をとてもわかりやすく解説している。著者は新潟大学医学部の教授で、免疫学の基礎研究でたくさんの業績をあげておられる。
人間のような多細胞動物は、同じ遺伝子をもった細胞がいろんな形、機能をもって働いている。それらの働きを全体として制御しているのが自律神経系である。自律神経系には交感神経系と副交感神経系があり、それぞれ、特有の物質を出して、それに反応して各細胞は働きを強めたり弱めたりする。緊張する場面では交感神経系優位となり、血管が収縮して血圧が上がったり呼吸数を増やしたり心拍数が増えたりして、より活動的な働きを強める。一方、リラックスをする場面では副交感神経系が優位となり、逆のことが起きる。
一方、体内で生まれた異常な細胞や、外部から侵入してきた病原菌や異物などをやっつけるのが白血球という細胞であるが、これも自律神経系の制御を受ける。白血球にはたくさんの種類がある。顆粒球とよばれる細胞は病原菌などを食べて殺す働きをもっており、交感神経系優位の状態でたくさん生まれる。一方、リンパ球というのは副交感神経優位でたくさん生まれる。
体や心のストレス状態が続くと、緊張して交感神経系優位の状態が続く。そうすると顆粒球がたくさんできる。これは寿命が二日程度なので、すぐに死滅するが、その時に細胞内にたくさんある活性酸素(本来病原菌などをやっつけるためのもの)が放出され、周辺の健康な細胞を傷つける。特に粘膜細胞は傷つけられやすい。私ががんを発見したきっかけになったのは、胃のあたりが痛くて受診したことであるが、この痛みは十二指腸潰瘍によるものであった。これはストレス→交感神経系優位→顆粒球過剰→十二指腸粘膜を破壊、ということが起きていたと考えられる。
ところで、体内では一日に百万個も「まわりの空気を読めない」異常な細胞が生まれている。これらは普通はほぼ瞬間的に白血球に探知されやっつけられる。そして、その攻撃を逃れるほど遺伝子を変異させたものががん細胞ということになる。自分の体の異常な細胞をやっつける働きをするのは、白血球の中でもリンパ球であり、その中でもNK細胞、胸腺外分化T細胞、B-1細胞という名のものが知られている。これらは比較的最近発見されたもので、まだまだあるかもしれない。実際にがん細胞をやっつけるのは、これらの組み合わせだろうから、たくさんのパターンがあると思われる。そして、リンパ球はストレスの少ない、副交感神経優位の状態でたくさんできることが知られている。
私の場合、交感神経系優位でリンパ球の数が少なく働きが弱まった状態で、がん男くんが大きくなったのだと考えられる。それが、がんが発見されてから、私の中でいろいろな変化があり、ストレスの解消がある程度すすんだのだろう。副交感系優位の状態をつくることができ、リンパ球優位の状態になり、いろんなリンパ球の働きがよくなった結果、これまで攻撃をのがれていたのとは別のリンパ球の攻撃を受けて、がん男くんは縮小していったと考えられる。
リンパ球にはたくさんの種類があり、それは消防車にたくさんの種類があることになぞらえられる。ビルの上の方で火事が起きているのに、ポンプ車しか働いていなかったら火事は消せないで燃え広がる。故障していたはしご車を修理して動くようにしたので、ビルの火事が消し止められた、という感じだろうか。
自律神経系は心とつながっている。大勢の人のいる前で発言するなど、緊張する場面では心臓がどきどきする。交感神経系優位だ。困ったことで長期間悩むんでいると文字通り胸が痛くなる。肋間神経痛というやつで、神経が緊張しすぎた結果である。私は毎年、学生の卒業研究の発表会が近づくと胃痛がするのが習わしである。自分の指導生がうまく発表できるか、やきもきするからだ。
逆に、食事をしたり飲み物を飲むと、緊張がほぐれる。消化器官は副交感神経の支配下にあるので、それが働くと、副交感神経優位となり、心もリラックスするという。私はかねがね、それほどお腹がすいていないのに、食事をしたくなるのが不思議だと思っていたのだが、それは身体がリラックスしたがっていたのだと分かった。
このような安保氏らの「自律神経免疫療法」の立場からすると、がんを怖れないこと、毎日を充実して生きること、食事を楽しむこと、というような心の持ち方がとても大切ということになる。そのことによって副交感神経系優位の状態にもっていくことが、がん治療の第一歩ということだ。
私はというと、多くの皆さんからいろいろと心配をしていただいて、声をかけていただいたことが自分の心をほぐすのにとても有効だったと感じている。みなさんに必要とされている、と思うと元気がでてきた。本当に感謝の気持ちでいっぱいである。
そういう意味では、がんは一人の人間の身体の異常というだけではなく、人々の関係性の病という側面もあるのではないかと思う。今日の日本ではがんが急速な勢いで増えているという。その意味を今後は深く考えていきたい。
動物においても、心身のストレスによる様々な影響は広く知られており、ラットでも「何をしてもダメなんだ」という「学習性無気力」が報告されています。
けれども、人間にはもうひとつ別の領域がありそうですね。「がんは一人の人間の身体の異常というだけではなく、人々の関係性の病という側面もあるのではないか」と箇所に感銘を受けました。
先生が「多くの皆さんからいろいろと心配をしていただいて、声をかけていただいたことが自分の心をほぐすのにとても有効だった」とおっしゃてくださっています。ということは、その逆もあるんですよね?
そのひとの心や体にほとんど誰も関心を持たない(持ってくれない)ような日々を過ごしている人は、ますます健康を喪っていくのではないでしょうか?(ラットですら、他個体と共飼育すると先ほどの「無気力」が軽減するとか)。
以前よりずっと、がんになる人が増加しているというのも、互いを気遣う濃やかな人間関係が喪われつつある世相とも無関係ではないのでしょう。
ちょっとうっとおしい「今度メシでも」という関わり(もちろん、単なる儀礼なら無意味ですが)…温かな人間関係構築の契機になれば嬉しいですね。
私も、がん男くんに声かけてみようかな?
ひろさちや『狂いのすすめ』には「ヤマアラシのジレンマ」という話がでてきます。ヤマアラシは寒いのでお互いにくっつきあいたい。けれどもトゲがじゃまをしてくっつけない。人間も同じだ、という話です。
今度メシでも食いに行きましょう!おいしくて身体によいレストラン発見しましたよ!
さて、ある冊子にストレスの原因のうち80%は人間関係からきていると書かれていましたが、自分の実感からしてもそのようだと思っています。
西洋医学は、体の各部位、血液などからデータを採取し、統計的な基準を用いて、異常判断をし、対症的処方をとっている用ですね。父親の診療の様子を見ているとそのように思えます。
ただ、その病気の原因となると、なかなか診断が難しいようで、暴飲暴食、酒タバコ、睡眠不足、過労、老化などの物理的原因で説明されているようです。人間関係からくるストレスが原因と診断されたことはあまり聞きません。
米このところ何十年も内臓疾患による病気では医者にかかっておらず、医者に対する無知と偏見をベースにコメントとしているとあらかじめお断りしておきます。
「病は気から」で気を病む原因のかなりの部分は、人間関係から来ているとしたら、かなりの病気については治療の本質は、人間関係を紐解くことから手がけるべきでしょう。
とはいうものの、この作業は保険の点数計算に入っているのでしょうか?そんなことに首を突っ込んだら、自分の時間や気力の消耗が激しくてやってられないというのが本音でしょうか?心療内科などでは、もちろん入っているのでしょうね?
いろいろ人間を研究していますと、人間関係も面白い法則があって、それを使うといろんな人間関係を紐解くことができます。
しかし、この法則は、人間関係をこじれさせないように予防的に使う場合は、有効ですが、一旦こじれて、感情のもつれが生じてしまうと法則を応用してもなかなか元に戻すのは難しいようです。
予防医学の必要性が理解される時代に入ってきたようですので、人間関係に関する予防学ももっと広がってほしいと思っています。
機会がありましたら、いっぱいやりながらお話しましょう。
私が働いていた病院ですので両医師をよく知っていますが、よく勉強もして患者にも親切な比です。
しいて考えれば友人は演劇活動に熱意を持って取り組んでおり、それが免疫作用を高め癌を押さえ込んでいる可能性があります。
前向きに生きるということは生きる力に影響します。
ちなみに友人は数ヶ月ごとに受診して検査をしていますが、癌は厳然として存在しているそうです。ただ、成長がぴたっと止まっているとのことです。
生命には、まだ分からないことがたくさんあるようです。