あやし小児科医院 第2ホームページ

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ボタン型電池の誤飲

2014-11-12 21:22:15 | Weblog

 

 

こどもは何でも口に入れ,誤って吸い込んだり飲み込んだりします(異物の誤嚥・誤飲).

こどもが誤って飲み込むものの中でもボタン型電池はあらゆる小型の機器に使用されており家庭にたくさんあるため,事故の多いことで知られています.

アルカリ電池は胃の中に入ると放電し,胃の中の胃酸で被覆されている金属が腐食され,電池の中にあるアルカリ性の物質が流れ出て胃の壁を損傷することが警告されてきました.

最近多用されているリチウム電池は放電能力が高く,電池の寿命がきれるまで一定の電圧を維持する特性があります.

このため誤って飲み込んだ時は消化管の中で放電し,電気分解によりマイナス側にアルカリ性の液体を作ってしまいます.

アルカリ電池のように金属被膜の腐食によって電池の内容が流出するのではなく,電池の外側にアルカリ性液が生成されるわけです.

金属被膜の腐食には時間がかかりますが,放電によって危険な液体ができるため,リチウム電池では30分から1時間という非常に短時間でも消化管の壁に潰瘍を作ってしまうことが報告されています.

また,金属被膜が腐食するには胃液が必要ですが,放電はどこでもおこります.

つまり胃の中に限らず,食道でもアルカリによる消化管壁の損傷がおこることになります.

リチウム電池は間違って飲むとアルカリ電池よりもさらに危険と言えます.


ボタン型電池,特にリチウム電池は決してこどもの目に触れないように管理して下さい.

電池の表面を加工していないボタン型電池を万一飲み込んだ時には,急いで取り出す必要がありますので,できるだけ早く小児外科のある施設に行って下さい.

リチウム電池は一般に直径の大きいものが多く,食道に引っ掛かることが多いのですが,胃の中に落ちていることもあります.

これらの電池を取り出すには内視鏡を使う必要があります.

小児外科施設には通常このような事態に対応できる器械,施設が備わっています.

早ければ早い程いいので,直接小児外科施設に連絡されることをお勧めします.


使い切って放電してしまった電池ではこのような早期の危険はありません.

しかし,食道に留まっていると圧迫による穿孔を来すこともあるのでやはり取り出す必要があります.胃の中に落ちている時は,使い切っていることがはっきりしていれば自然に便と一緒に出るのを待ちますが,新しいものか古いものかはっきりしないときは取り出したほうが安全です.


電池メーカーの皆様にもこの事実を認識していただきたいと思っております.

使用上の注意を喚起していただくと同時に危険性をできるだけ回避できるように工夫をしていただきたいものです.