Q1 日本脳炎とは、どのような病気ですか?
A1 日本脳炎ウイルスの感染によっておこる中枢神経(脳や脊髄など)の疾患です。ヒトからヒトへの感染はなく、ブタなどの動物の体内でウイルスが増殖された後、そのブタを刺したコガタアカイエカ(水田等に発生する蚊の一種)などがヒトを刺すことによって感染します。東アジア・南アジアにかけて広く分布する病気です。
Q2 日本脳炎の症状はどのようなものですか?
A2 ウイルスを持つ蚊に刺され、感染したあとも症状なく経過する(不顕性感染)場合がほとんど(過去には、100人から1000人の感染者の中で1人が発病すると報告されている)ですが、症状が出るものでは、6~16日間の潜伏期間の後に、数日間の高熱、頭痛、嘔吐などで発病し、引き続き急激に、光への過敏症、意識障害(意識がなくなること)、けいれん等の中枢神経系障害(脳の障害)を生じます。
大多数の方は、無症状に終わるのですが、脳炎を発症した場合20~40%が死亡に至る病気といわれており、幼少児や高齢者では死亡の危険は大きくなっています。
なお、詳しい情報は、国立感染症研究所感染症情報センターのホームページをご覧ください。ホームページアドレスは、
(http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/index.html)です。
Q3 日本脳炎は、国内でどのくらい発生していますか?
A3 近年の患者は年間数名で、おもに中高齢者となっています。 しかしながら、平成18年9月に熊本県において、小児(3歳児)での発生が報告され、平成19年3月には広島県(発病は平成18年で推定感染地域は茨城県)において、19歳での発生が報告されています。
Q4 日本脳炎の発生は地域によって大きく異なるというのは本当ですか?
A4 発生状況は地域によって、大きく異なります。過去10年間(平成11年から平成20年10月)に58件の発症がありましたが、そのうち大部分は、九州・沖縄地方(38%)及び中国・四国地方(40%)で発症しており、北海道(0件)、東北(0件)、関東(3件)甲信越(2件)地方における発症は非常にまれです。
なお、詳しい地域別の情報は、国立感染症研究所感染症情報センターホームページをご覧ください。ホームページアドレスは、
(http://idsc.nih.go.jp/disease/JEncephalitis/index.html)です。
Q5 日本脳炎ワクチンとはどんなワクチンですか?
A5 従来の日本脳炎ワクチンは、日本脳炎ウイルスを感染させたマウスの脳の中でウイルスを増殖させ、高度に精製し、ホルマリン等で不活化(病原性をなくすこと)したものです。平成21年2月23日付けで、マウス脳の代わりにVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を使用して製造する乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが薬事法上の承認を受け、同年6月初旬から供給されます。
Q6 新しい日本脳炎ワクチンは従来のワクチンと何が違うのですか?
A6 新しい日本脳炎ワクチン(乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン)は、日本脳炎ウイルス(北京株)をVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)で増殖させ、得られたウイルスを採取し、ホルマリンで不活化したものであり、従来のワクチンと異なりマウス脳を使用していません。
Q7 新しい日本脳炎ワクチンはADEM(急性散在性脳脊髄炎)などの副反応が少ないと考えてよいですか?
A7 「乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン製剤の使用に当たっての留意事項」(平成21年2月23日付医薬食品局審査管理課長通知)にあるように、国内ではVero細胞を用いて製造される初めての医薬品となること、海外では他の細胞培養ワクチンにおいてADEMが報告されていること等から、本剤の使用に当たっては、重篤な副反応に関するデータの収集及び評価を行うこととされているとこであり、今後も十分注意が必要であると考えられています。
Q8 現行の日本脳炎予防接種はどのようになっていますか?
A8 予防接種法にもとづく現行の定期予防接種スケジュールは以下のようになっています。
1期(3回)
初回接種(2回):生後6か月以上90か月未満(標準として3歳)
追加接種(1回):初回接種後おおむね1年後(標準として4歳)
2期(1回):9歳以上13歳未満の者(標準として9歳)
なお、日本脳炎は定期の予防接種の対象疾患となっていますが、その発生状況等を検討して、予防接種を行う必要がないと認められる地域を都道府県知事が指定することができるようになっています。
これを踏まえて従前より、北海道のほとんどの地域では、日本脳炎の予防接種は実施されていません。
Q9 組織培養法による新しい日本脳炎ワクチンが開発中とのことですが、いつから使用できるのですか?
A9 平成21年2月23日付けで、Vero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を使用して製造する乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンが薬事法上の承認を受け、同年6月初旬から、供給されます。なお、第2期の接種における有効性及び安全性は確立していないとされていることから、現在、定期の第1期予防接種のみに使用するワクチンとして位置づけられています。
Q10 日本脳炎ワクチンを接種することによって、どのような副反応が起こりますか?
A10 まれに接種直後から翌日に、発疹(ほっしん)、じんましん、そう痒(かゆみ)、等の過敏症がみられることがあります。
また、全身症状としては、発熱、悪寒(さむけ)、頭痛、倦怠感(けんたいかん)、はきけなど、接種部位の局所症状としては、発赤、腫れ、痛みなどが認められることがありますが、通常は2~3日中に消失します。
さらに、ごく稀に急性散在性脳脊髄炎(ADEM)というQ12に示すような副反応がみられます。
乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンについては、多くの小児に対して使用された実績がないため、製造販売後の安全性情報のモニターを一定期間行うこととしています。
※ なお、日本脳炎ワクチン以外でも接種後にADEMが発症する場合があります。また、海外では乾燥細胞培養日本脳炎ワクチン以外の他の細胞培養ワクチン接種後にもADEM発症例が報告されています。
Q11 日本脳炎ワクチンを接種した方がよいのはどのような場合ですか?
A11 定期の予防接種の対象者で、日本脳炎ワクチンの接種をこれまでに一度も受けていない現在3~7歳の子供のうち、日本国内においてブタにおける抗体保有率の高い地域や近年日本脳炎患者発生が多く認められている地域では、罹患リスクは依然として存在するものと考えられますので優先的に接種をした方がよいと考えられます。