(1)残業割増・深夜割増の大幅な引き上げ
「労働基準法一部改正」により平成22年4月から実施された1ヶ月60時間以上の残業単価を50%にすることが義務付けられました。中小企業は3年後に検討するとされましたが、国は何らの動きを見せていません。当面の課題として、早期に全企業への適用を求めていきます。
日本の時間外労働に対する割増率は、諸外国と比べ、圧倒的に低い率となっています。これは、諸外国が、割増率を『罰則規定』としているのに対し、日本では『特例規定』としているからです。労働の提供は時間単位とする8時間労働制の位置づけを高くし、罰則規定に近づける意識改革も行なうとともに、普通残業・休日労働の50%割増、深夜残業100%割増を労基法の改正目標としていきます。また、国や財界は、この時間外手当問題をホワイトカラーイグゼンプション(ホワイトカラー労働者の労働時間規制適用免除制度:時間外労働に対する割増賃金の不支給)にする動きを強めていることから、これこそが労使対立の軸になります。
(2)労基法違反の賃金支払を告発・是正させる
本来残業計算の基礎に含まなければならない賃金項目の除外は認めないこと。労基法では、家族手当・通勤手当・別居手当・子女教育手当、臨時に支払われる手当、1ヶ.月を超える期間ごとに支払われる6項目以外の賃金は、残業の計算基礎に入れなくてはならないと定めています。
日頃からの点検活動を強めます。
(3)固定給の変動給扱いは認めない
経営環境が悪化するにともない、経営側は総額賃金の抑え込みを実施しています。固定給を変動給化して、残業単価を低く押さえようとしています。(固定給割増率は1.25倍、変動給の場合は0.25倍)。賃金体系の変更の場合は充分な調査と点検が必要です。
(4)手待ち時間の賃率引下げは認めない
トラック業界における手待ち時間は、「休憩」も含まれる、との解釈でいつでも争いとなっていました。しかし、昨今ではビル管理業務での判断や横浜地裁で出されたT運送の判決では「待機時間は労働時間である」との判断が主流となっています。心身ともに拘束されているトラック業界の手待ち時間は労働時間であることに確信を持つことです。
(5)変形労働時間制の導入には気をつける
労基法では、1週当たりの所定労働時間は40時間と定めています。但し、労使協定があれば、変形労働時間を認めるとしています。トラック運輸産業では、年間変形労働時間制を導入している企業が圧倒的です。また、始業時間や終業時間をあいまいにし、労働時間の算定を恣意的に困難にさせる場合もあります。時間管理は国交省でも経営側に強く求めているところでもあり、職場内での時間管理を徹底させ、違法な行為が認められた場合は改善するよう求めます。
(6)運賃問題など業界秩序の確立と賃金問題
運賃は、事後届出制とされてから事実上の自由化に変化しています。荷主による入札制度での業務獲得が主力になり、事業を行う上での必要コストが運賃に反映されていません。特に人件費コストは不明瞭です。国土交通省に対して、届出運賃を受理する場合には、全産業水準の賃金・労働条件・退職金等を明記することを求めていきます。届出運賃の公表、賃金・労働条件を不当に見積もった運賃に対しては変更命令を要求します。荷主による不当な運賃値引きの強要や法令を無視したトラック運輸企業に対しては社会的に告発します。