(1)異常に多い過労死認定数
トラック労働者の状態は経営環境に連動して悪化をつづけ、長時間労働などを背景にした健康への悪影響もひろがり、全労働者数に占める割合が2%にも満たないトラック労働者の過労死認定数が全産業の20%を超える異常な事態となっています。
(2)夜間労働との関係
トラック運送にあっても年365日・1日24時間の配送体制がひろがり、夜間労働の比重も高くなっています。
医療関係者によると、医療事故が最も発生しやすい時間帯は午前1時から午前5時までに集中しています。また、同じ長時間労働であっても、朝起床し、日中の労働で夜に就寝する場合には、血圧が高くなっていても、翌日起床時には元の水準まで下がっていますが、夜起床し夜間労働に従事した後、朝に就寝した場合、起床時に血圧の低下はあまり見られないと言われています。
衛生学の研究者からは、夜間労働に関して
①昼間に活動し、夜間は寝ることで生命や健康を維持している人間にとって、自然の摂理に反した働き方であり、危険な労働である、
②家族や友人と接し、お互いを必要とし合う人間的な関係を醸成する機会を奪う、
③労働者が社会の中で学び、楽しみ、発達する機会を奪う、
④労働者が、社会の一員として責任を果たす機会を奪う、との指摘もされています。
日本の過労死認定基準モデルでは夜勤、女性労働者は想定されていないことから、残業時間の長さだけでは危険を予測できません。したがって、夜間労働との関係でも見ておくことが必要です。
(3)ILO基準による夜間労働規制
国際労働機関は、1990年のILO第171号条約と第178号勧告で夜間労働に関しての規制を取り決めています。基本的には0夜間労働の時間規制と②夜間労働の回数規制③健康管理④雇用保障となっており、これが国際基準となっています。
ILO第171号条約及び第178号勧告
(いわゆる「夜業条約」)の概要
①労働時間は24時間で8時間を超えるべきではない。
②労働時間は昼間の労働時間より平均して超えるべきではない。
③2連勤はおこなわれるべきではなく、おこなう場合は少なくとも11時間以上の休息を保障
④昼間の同一労働より、賃金が高い。
⑤無料の健診
⑥応急手当施設
⑦健康上、夜業労働者の適性なしと判断された者は、できる限り、その者に適した類似業務に配転する。
⑧一時的に夜業に不的確と認定された夜業労働者への雇用保護
⑨妊産婦保護と雇用保障
⑩適切な社会的便益(交通手段、住宅、休息施設、食事、託児施設、文化スポーツ活動への援助など)の付与
しかし日本ではILO第171号条約を批准しておらず、ILO第178号勧告も適用されていません。一刻も早くILO基準を日本でも適用させるために、条約の批准はもちろん、憲法第98条に基づいてILO基準の国内適用を求めます。
(4)夜間労働における最低労働条件の確立による規制を
ILO基準に基づき、日本産業衛生学会交代勤務委員会の見解もふまえながら、夜間労働における労働条件の確立をはかることです。
①午後6時~翌朝7時までを「夜間時間帯」として、所定内労働時間であっても、この時間帯にかかる労働時間は25%以上の割増賃金を支払い、さらに午後10時~翌朝5時までの「深夜時間帯」ではさらに25%以上の割増(合計50%以上)の割増賃金を支払うこと。
②夜間労働においては、休日出勤は禁止すること。
③深夜労働は、妊婦、出産後1年以内のもの、義務教育未了の子・要介護者をもつ男女を適用除外とし、満18歳未満の労働者の深夜勤務はいっさいおこなわないこと。また、家族的要件・社会的要件により深夜勤務ができないと申請するものを認め、不利益扱いをいっさいしないこと。
④夜勤労働者の労働時間を1日7時間(実働)以下、週35時間以下とし、勤務間隔は16時間以上とすること。また、回数は4週間をつうじ6回以内とすること。