建交労長崎県本部

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トラック運転手、時間短縮の現状と取組み~建交労のトラック政策⑬

2017年07月09日 07時29分09秒 | トラック政策

(1)時間短縮は世の中の流れ

①週40時間制への移行

週40時間労働時間制にむけて87年に労働基準法が改正されました。(施行88年)この中身は、本則に週40時間労働を明記したものの、期限を設けず段階的に短縮するという内容でしたが、90年より1週間を44時間と定め、運輸産業などは93年3月31日までの間は、週46時間という猶予措置がとられました。その後、97年4,月1日より運輸産業も週40時間制が適用されることになりました。しかし、週40時間制が施行されても、運輸産業の総労働時間は短縮される傾向があまり見られません。経営側は、長時間労働を短縮するよりも、長時間を前提とした賃金体系の変更や変形労働時間制の導入等により、時間短縮よりも賃金引下げの方向で動いています。

②過労死認定基準と脳・心臓疾患の実態

2001年12月に過労死認定基準が改正され、特に時間外労働時間の目安を定めました。その背景には、企業が個人に対して成果を求めるしくみを賃金体系に導入した結果、労働者は体調不良になっても長日寺問労働を余儀なくされたり、賃金が支払われないサービス残業として社会問題となったことです。その中で厚生労働省は、時間外労働時間の目安を「発症前1ヶ月間におおむね100時間以上」「発症前2ヶ月ないし6ヶ.月間におおむね80時間以上」の時間外労働時間があれば業務との関連性が強いと評価することを決めました。発症前1ヶ月ないし6ヶ月の時間外労働時間がおおむね45時間を越える場合は、それが長くなればなるほど、業務と発症との関連性が徐々に強まるとしています。つまり1ヶ月45時間以上の残業が蔓延していて、何らかの原因で死亡した場合は過労死の疑いが濃くなるということです。

厚生労働省が発表する「脳・心臓疾患」の平成24年度中に労働災害補償が支給決定された338件中、月間の時間外労働時間80時間未満はわずか20件(うち死亡4件)であり、80時間以上が318件(うち死亡119件)となっています。

また、労災補償請求件数を見ると、平成24年度の業種別請求件数では全業種842件中、自動車運転従事者が152件と最悪な状況となっています。この数字はあくまでも労働災害の請求件数であり、中小・零細事業者の未請求件数があることを加味しなければなりません。

 

(2)世の中の流れに逆行するトラック業界の現状

トラック運輸産業では、24時間・365日稼働が求められている為に、休日を増加することが思うようにすすみません。政府が決定する国民の休日等(祝祭日)が増えてもトラック労働者は休めません。中小零細企業が多いこの業界では、年末年始や夏季休暇も満足に取得できないのが実態です。世の中の流れは週休2日制が当たり前の時代でも、トラック運輸産業の長時間労働が改善する方向へは向いていません。

 ①週40時間制への立ち後れと矛盾

2003年の規制緩和による「営業区域の撤廃」と「144時間までの運行可能」がトラック労働者の長時間労働に拍車をかけてきました。2010年4月の「労働基準法の一部改正」にともない、大企業の労働者は1ヶ月60時間を越える場合の割増率の最低を1.25割増から1.5割増に変更されましたが、中小零細企業の労働者には「改正法の施行後3年を経過した場合において検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」と猶予措置がとられました。トラック運輸産業の99.9%は中小零細企業であるため、圧倒的多数の企業には適用されていない実態があります。

厚生労働省では、労働政策審議会労働条件分科会で2013年9月から審議が開始されていますが、2014年4月になっても結論が出ていない状況となっています。

②改善基準告示との矛盾

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(7号告示)では、1日の拘束時間は原則13時間以内、月間293時間以内となっています。単純に週40時間制を基礎に月所定労働時間173時で計算すると、月に100時間前後の時間外労働が可能となります。

過労死認定基準に照らし合わせると、トラック運転者は過労死の疑いが濃くなるということです。そのことを示すかのように、トラック運転者の過労死認定は、毎年全産業中ワースト1を続けています。国が定める労働時間の規制が矛盾するといえます。