(1)経済の安定‐内需型経済による物量の安定確保
トラック運輸産業は受注産業でありストックのきかない事業であるため、経済の動向、特に不況の影響を大きく受けます。まして、過当競争が激化しているもとではなおさらです。健全なトラック運輸産業発展のためには、適正な運賃料金の収受と同時に、安定した物量の確保は欠かせない課題です。
トラック運送事業の大半は国内貨物輸送です。したがって内需拡大型による国内経済の安定的発展は輸送量を増大させ、トラック業界における過当競争を緩和します。同時に内需型の経済政策への転換は、日本経済の国民的立場からの再生・発展という課題とも一致するものです。
①第一は、大企業の内部留保の活用
内需型経済への転換は、第一に、大企業がため込んだ膨大な内部留保を、大企業の果たすべき社会的責任に応じて社会に還元させることです。もともと日本の大企業がため込んだ内部留保は、下請企業への下請単価や労働者の賃金を低く抑え、「カローシ・ニッポン」と言われるぐらいの長時間労働を押しつけ、輸出依存の経済政策に乗っかって、税金の優遇措置を受けてつくられたものです。社会に還元させる大企業の内部留保の一部は労働者の賃金や雇用拡大の原資として、一部は下請中小企業への支払単価引き上げなど(原価を正しく反映した適正運賃収受)を通じて、国民・労働者の「フトコロ」を暖かくするために使うことです。
そうして国民の購買力を高めてこそ、生産と国内流通の関係がうまく回り、日本経済の再生とそれに伴ってのトラック運輸産業の安定がはかられるのです。
②国内生産・国内消費を基本に
大企業の内部留保の内社会に還元させるものの一部は、国内での生産設備への投資に振り向けるさせことです。これまで大企業は、「国際競争力の強化」「経済のグローバル化」の名の下に生産拠点を海外に移し、国内産業を空洞化させてきました。その動機は人件費の安い海外に生産拠点を移すことで生産コストを抑え、海外市場における販売力で優位に立つことでした。
輸出依存型経済政策によって国内生産が縮小させられてきたのです。この流れを変え、国内生産・国内消費を基本とした経済政策に切り替えることは、日本経済の再生にとっての基本であるべきです。
(2)対等・平等の取引関係
運賃収受をめぐって荷主・元請との「対等・平等な取引関係」の確立が重要な課題であることは論を待つまでもないことです。独占禁止法や下請法、2008年3月14日付国土交通省「トラック運送業における荷主・元請適正取引推進ガイドライン」「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」などで対等・平等の取引関係の中での公正で適正な取り引き確立のための諸施策が述べられていますが、実効性という点からは不十分です。関係法令の抜本的な改正や新法の制定も視野に入れた対策と行政の権限強化で中小零細企業に対する保護を強化する施策と一体となった「対等・平等の取引関係」を確立することです。