運送業界では、長時間労働を前提とした賃金体系が多くのところで取り入れられています。
つまり、所定内賃金、とりわけ基本給部分を低く抑え、残業代で全産業水準に近づける方法が主流となっています。このため、景気変動や病気・体調不良等によって残業時間が少なくなると、極端に賃金が低下し、生活苦に直面することになります。また、残業単価が低く抑えられていることから、経営側も安易に残業に頼った日常業務の組み立てを行なったり、荷主側に安易に時間指定を受け入れたりして、荷主との交渉力を自ら弱めているとも言えます。労働者の長時間労働を是正する取組みは、労働者の努力だけではできません。これらの解明は、労働時間の項に示すとして、賃金体系のあり方について考えてみます。
この項で扱う"誰でも"を35才ポイントに設定した場合、その総額賃金は350000円に設定し、これを実現するには、基本給部分を60~80%に設定し、各種手当を20~40%にしなければなりません。その際、現実のトラック業界の実情から、所定労働時間で終われる勤務は、ほんの一部に過ぎないため、日に1時間、月に25時間程度の残業を加味した賃金体系を考えます。
ⅰ 基本給24万(以上)、各種手当5万(以下)、残業手当6万(以下)との配分を検討します。
ⅱ 基本給は、基礎給と年齢給と勤続給により構成します。この構成比は、業態や企業により変動することになりますが、7:2:1の構成比率を想定します。
各種手当は、精皆勤手当、愛車手当、無事故手当、役職手当、家族手当、特殊勤務手当
このなかで、精皆勤手当が必要なのかどうかの議論も存在します。トラック産業の賃金体系の多くが「日給月給制」であり、有給休暇を含めて"休み"が取りにくい業種でもあります。ただ現実的には多くの職場で取り入れられている手当だけに、手当額をできるだけ少なくし、将来的には無くす方向性を確認することにします。
残業手当は、時間外手当と休日出勤手当を考慮していくことにします。
ⅲ 賃金総額=基本給(基礎給+年齢給+勤続給)+諸手当+残業手当(休出+残業)
①基本給のうち、基礎給は、運転手としての経験年数を加味し、3~5年単位ごとに一定額がアップするシステムにします。その最低基準を20歳で18万とします。
②年齢給は、18才ないし20才を起点として、1才ごとに年齢別生計費水準を考慮して加算するシステムにします。
③勤続給は、会社での勤続年数に応じ、会社貢献度の要素を含み、1年ないし複数年ごとにUPするシステムとします。
ⅳ 各種手当のうち、役職手当は運転手5名に1人の班長、班長3~5人に対し1人の組長、組長3~5人に対して1人の係長の配置を行ない、運転職種での職階級を設け、手当を5000、1万、2万とします。(職務上の役割は、安全管理と客先対応を含めた対人コミュニケ及び体調管理などとします。)*現在、運転職種で職階級制度を導入している企業は少数です。
しかし、人材育成や社会的モラルの確立、安全運転の集団管理の効能などを考えた場合、社内融和のためにも職階級制度は必要性があると思います。
ⅴ 家族手当は、配偶者ないし第1扶養に1万、第2扶養以下1人に付き5000円増程度とします。
ⅵ その他の手当は、3000~5000円程度にとどめるようにします。
ⅶ 具体的例35才、運転手歴15年、勤続年数10年、家族:妻と子2人の場合
基本給24万(基礎給+年齢給+勤続給)
諸手当5万(班長手当1万、家族手当2万、その他2万) 所定内単価1,726円
時間外6.1万(残業20H:4.3万、休日8H:1.8万)
合計35.1万
※平均月収35.1万×12=421万
※年間一時金(基本給+諸手当)×3カ月=87万
合計年収508万