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米国で「緊急事態警報の誤報」相次ぐ

2005-08-03 | その他
ハリケーンシーズンを迎え、ただでさえ気がかりなことの多いフロリダ州の住民にさらに追い打ちをかけるように、心配の種を増やす出来事があった。7月27日(米国時間)、同州の住民の一部に対し、誤って放射能に関する緊急警報が発せられたのだ。米気象庁のオペレーターが『緊急警報システム』(EAS)の定期テストを行なう際にキー入力を間違えたことが原因だった。

 EASは、冷戦期に作られた『緊急放送システム』(EBS)の後継として1997年に導入された。気象警報を自動受信するラジオ、および一般のテレビやラジオ放送に割り込む形で、緊急情報を音声と文字情報で発信する。

 EASが発する警報の先頭には、警報の適用期間や伝達範囲を規定するデジタル信号のヘッダーがつく。また、この信号に含まれる3文字のコードで緊急事態の内容もわかる。

 今回の誤報は、気象庁のタラハシー予報所(フロリダ州)のオペレーターが、「RWT」と打ち込むべきところを誤って「RHW」と打ってしまったために生じた。RWTは毎週のテスト(required weekly test)、RHWは放射能危険警報(radiological hazard warning)を意味するコードだ。

 気象庁で警報のコーディネーターを務める気象学者のウォルト・ザレスキー氏によると、問題の警報は通称「フロリダ・パンハンドル」[フロリダ州をフライパンにたとえたときの柄の部分]と呼ばれるフロリダ西部とジョージア州南部に発せられたという。だが、警報の音声に「これはテストだ」との内容が含まれており、また、当局が誤報の打ち消しに迅速に動いたこともあり、さいわいにもパニックが起きることはなかった。

 「当局は、警報が流れた地域のラジオ局とテレビ局すべてに対し、誤った識別コードを含んだ警報が発せられたが、これといった緊急事態は生じていない旨を早急に伝達した」と、ザレスキー氏は言う。

 この出来事の前日、似たような事故がラスベガスのあるラジオ局で起きている。ラジオ局から5つの郡にあるケーブルテレビ局やラジオ局、テレビ局に対し、実際には存在しない国家的危機が生じたとする警報が、誤って送信されたのだ。

 誤報が流れたのは26日の午後だった。ラスベガスのFMラジオ局『KXTE』(キャッチフレーズは「エクストリーム・ラジオ」)が、先に流した「アンバーアラート」[子供の誘拐事件が起きた際に流される緊急速報]を取り消すメッセージを送信する際、誤って「緊急行動通知」(EAN)――核戦争やそれに相当する国家的緊急事態に際して米国大統領が使用するコード――を送信してしまったのだ。

 KXTEはこの件に関する電話での取材に応じなかった。KXTEはネバダ州南部とカリフォルニア州の一部で地域内一次情報伝達局の役割を担っている。つまり、この地域の放送局は24時間常にKXTEの放送を受信し、EASのメッセージが発せられた場合はそれを伝達することになっているということだ。

 米連邦通信委員会(FCC)の規則では、放送局はEANコードを受け取った場合、必ず通常放送を中断するよう定めている。しかし、ネバダ州のEASの責任者、エイドリエン・アボット氏によると、KXTEの発したEASのヘッダー情報に異常があり、音声がともなっておらず、今までにこの全国警報が本当に発令されたことがなかったため、各局はこのメッセージに疑念を持ったのだという。「多くの放送局はこのメッセージを受信したが、これを伝えなかった」とアボット氏。

 KXTEの誤報の原因は、局内にあるEASメッセージのエンコード/デコード装置に生じたハードウェアの不調らしいと考えられている。「内蔵バッテリーがだめになり、プログラムが誤動作を起こしたのではないか」と、アボット氏は語る。

 現在、FCCはEASネットワークの抜本的な見直しの最中で、このシステムをインターネット時代に適合したものに作りかえようと考えている。しかし専門家のなかには、すでに一般の人たちの間に誤報に対する免疫がある程度できていると指摘する声もある。昨年、非営利団体の『一般向け警報のためのパートナーシップ』(Partnership for Public Warning)が発表した報告書には、「誤って発せられた警報を受け取った人々の行動に関する研究によると、ほかに信用できる情報による裏付けがない場合、往々にして一般の人々はごく限られた反応しか示さない」との指摘がある。

 ネバダ州クラーク郡の危機管理部で計画および運営コーディネーターを務めるキャロリン・レブリング氏は、EASのように複雑なシステムには、現実問題として設備の故障がついてまわるのだと語る。「今回の事態を避けるためにできたはずのことは、それほど多くなかった」

 いっぽう、フロリダ州の誤報を引き起こしたような人的ミスを防止するのは、ネバダ州の件に比べると容易だ。気象庁は先週、タラハシーでの事故を受け、全国に配備された警報発令用のソフトウェアに確認の手順を追加することを明らかにした。これにより、今後深刻度の高い警報を出す場合には、少なくともウィンドウズのデスクトップからフォルダを消去するのと同程度の手順を踏むことになる。

 「オペレーターが3文字からなる警報の識別コードをコンピューターの画面上に呼び出すと、新たにウィンドウが開き、たとえば『本当に放射線危険警報を送信したいのですか?』と確認するわけだ」と、ザレスキー氏は説明した。


[日本語版:緒方 亮/長谷 睦]
2005年 8月 3日 (水) 17:49
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