アクアリウムに魅せられたある研究者の日記。
太陽の光。流木の影。
龍王石似の酸処理後。酸処理に関する注意点。

こんばんわ。
まずは、前回の龍王石似の酸処理の結果から。
比較のために、前回の記事に掲載した写真と並べてみました。


上が酸処理前。下が酸処理後です。
撮影した場所が、屋外と室内で違うので、一概に比較は難しいのですが、酸処理によって霜降りが際立っているのがご覧頂けるでしょうか。さらに、石本来の深いブルー色が出てきました。
霜降り部分のアップ。

これだけ白さが際立つと、高級そうに見えません?

酸処理すれば、どんな石でも綺麗になっちゃうってわけではないようです。今回、こんな感じの部分もありました。もう少し処理する時間を長くしたほうがよかったのかな。塩酸では取り除けない汚れなのかもしれません。
酸処理の威力。少しだけでもお伝えできたでしょうか。
前回の続きです。
前回の酸処理の記事。ちょっとあっさりと書き過ぎて、重要なことを疎かにしてしまった気がします。ご覧頂いている方々には、あまり興味がないものと思っていたのですが、予想以上に反響があったようで。
そんなわけで、ブログで公開した責任もあるので、塩酸による酸処理を行う上での注意点について、まとめてみました。アクア関係のHPやブログでは、あまり取り上げられてこなかった、法律による規制の問題と健康被害の問題について書きたいと思います。
ちょっと堅苦しくなりますが・・・ここでの記述に関しましては、これまでの私の知識や経験、関連する法律、政令と省令を読み解釈を加えたものです。ですので、正確さについては、十分に気を付けていますが、認識の誤り、法令の読み間違い等により、誤った記述をしているかもしれません。この点を十分にご理解のうえ、参考にして頂ければと思います。
また、下記記述に誤りがありましたら、ぜひ指摘をお願いいたします。直ちに調べて、正確な記述に訂正したいと思います。
ではでは、まずは、身近なようで奥深い塩酸の話から。
塩酸は、中学校でも理科実験で、使われる比較的身近な薬品ですよね。酸とアルカリの中和実験にはよく使われています。
その塩酸は、塩化水素(HCl)という薬品(化学物質)が溶けている水溶液であることは、ご存知の方もおられると思います。一般に、塩酸(または濃塩酸)と呼ばれるものは、35-38%程度の塩化水素水溶液のことです。さすがに中学校での実験では、高濃度の状態ではなく、薄めた状態で実験に使っているはずです。
で、この塩化水素が、「毒劇法(毒物及び劇物取締法)」という法律で劇物として指定されていて、取り扱いが規制対象となっています。そのため、塩酸も同法で規制されるわけです。
では、どんな規制がされていて、私たちはどんなことにしなければならない(してはならない)のかをご紹介します。
〔入手・購入〕
先の毒劇法の規制のために、塩酸の購入は薬局などに限られ、また身分証明書の提示(氏名と住所の確認のため)と捺印が求められます。
このとき、18歳未満の方や、心身の障害のある方、麻薬等の中毒者は、購入することができないとされています。
〔使用〕
後述する健康被害の防止の項で触れたいと思います。
〔保管〕
実は、家庭では保管が最大の問題となりそうです。
余ってしまった場合、普通なら次回使うだろうと保存しておくと思いますが、劇物に指定されている濃塩酸を、そのまま軒先や棚などに置いておくことは、法令違反でNGです。
法令では、劇物を保存する場合、毒劇物専用の施錠できる堅固な設備が必要とされています。つまり、塩酸の瓶だけをしまっておく鍵のかかる丈夫なキャビネットがないと保管できません。さらに、その保管場所には「医薬用外」「劇物」という文字を表示しなければなりません。
こんなのが家の中にあったら、当然、家族は怒るでしょう。私も「医薬用外 劇物」なんて書いてある薬品庫は家には置きたくありませんもの。
ではどうすればよいのか。最も簡単な方法は、単純に薄めてしまえばいいのです。
実は、塩化水素は、10%以下含有する溶液は劇物指定から外れるのです。前述したように、濃塩酸は、35-38%塩化水素溶液ですので、4倍以上に希釈して(薄めて)濃度10%以下に希釈してしまえば、法律上の劇物ではなくなり保管規制を受けずに済みます。
ただし、法令に違反しなくても、後述する健康被害の可能性のあるので、保管場所には十分に注意したほうがいいと思いますよ。
〔廃棄〕
実際に酸処理に使用した塩酸の処分方法ですが、これも頭を悩ませた、なかなか難しい問題です。
大量の水と共にトイレに流すのも一つの方法なんですが、この方法は、先の毒劇物には違反しないものの、他の法令(廃棄物の処理及び清掃に関する法律や、水質汚染防止法、下水道法等)の規制を受ける可能性があり、複雑すぎて私にはすべてを理解するに至っていません。
また、法令に違反しないとしても、各住宅によっては、排水講の設備の構造や、浄化槽を設置していたりする場合もありますし、ここはしっかりと中和して(中性にして)無害化してから廃棄することをお勧めします。私たちアクアリストは、水槽の水のみならず、河川の水質にも気を配りたいですよね。
中学校の中和実験では、塩酸と水酸化ナトリウムを混ぜて(中和して)、食塩と水にする反応を習ったと思います。
化学反応式は、こんな感じ。 HCl + NaOH → NaCl + H2O
ただ、水酸化ナトリウムも劇物なので、もし水酸化ナトリウムが余ってしまったら・・・。また、塩酸を買ってきて、中和する?
私は、簡単に手に入る重曹(炭酸水素ナトリウム)で中和するのが簡単だと思いますので、お勧めします。
HCl + NaHCO3 → NaCl + H2O + CO2
つまり、塩酸と炭酸水素ナトリウムを混ぜて、食塩と水と二酸化炭素にすることで、中和できます。水草水槽には欠かせないCO2ですが、CO2中毒ってこともありますので、危険ですので外で作業してください。
以上で、法令関係の話はおしまい。
次は、健康被害の防止のための注意点を書き留めたいと思います。
まずは、塩酸そのもの。
塩酸は、非常に強い酸性の液体ですので、皮膚や眼などに付いた場合はすぐに流水で洗い流し、場合によっては医師の診断を受けるべきです。胃液の成分は塩酸であることはご存知だと思いますが、濃度が明らかに違いますので、飲むこともダメです。
また、先ほどから、塩酸=塩化水素溶液という話をしてきました。塩化水素は気体で、試してみれば分かりますが、塩酸の瓶を開けた瞬間から、白い煙が立ち上がります。塩化水素は刺激臭がするので、とっさに逃げることはできますが、大変危険なもので、吸い込まないでください。
実際に塩酸の使用方法ですが、石の酸処理をする際には、バケツに水を張り、その中に少量ずつ塩酸を加えてください。先に、塩酸を入れたバケツに水を加えていく方法では、塩酸が飛散する可能性があるので危険です。
中和の際にも、同様です。水を張ったバケツに塩酸を加えていき、塩酸濃度を下げておきます。そこに重曹を少量ずつ加えていけばいいと思います。重曹を加えていくと、泡が立つと思いますが、これがCO2です。泡が立たなくなったら、それは中性に近い証拠ですので、賢明なアクアリストの皆さんは、pH試験薬をお持ちでしょうから調べてみてください。
中性付近(pH6.0-8.0)ぐらいになったことを確認したうえで、トイレとかに流して廃棄しちゃってください。
そうそう、くれぐれも希釈をしていない濃塩酸と重曹を混ぜないようにしてください。急激な中和反応が起こり、塩酸が飛散して危険ですよ。中和反応の際には発熱するので、水で希釈して温度が上がりにくくする必要あります。中和反応は、薄めてからが基本ですね。
難しいことを書いてしまいましたが、使用者ご自身、家族、周辺環境を守ることに配慮することは大切だと思います。
塩酸は、危険な薬品ではありますが、同時に大変便利な試薬でもあります。この記事を参考にして頂いて、皆さんのアクアライフが素敵なものになればと思っています。
今日は、この辺で。また、何か書き忘れたことがあれば、追記していきます。
コメント ( 22 ) | Trackback ( 0 )
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ポチッとしたのはこれだったんですね。
なるほど、酸処理によってこんな汚れが落ちるんですね。
深いブルーに霜降り、水中で照明に照らされると、キレイなんだろうなー。
ここで素人の質問です・・・石自体は溶けないのですか?
それと、coryvirusさんの丁寧な注意点、知らないことだらけだったので、とても勉強になりました。
万全を期して、取り組まないといけませんね。
美しい!
それにしても法律・入手~廃棄とかなり
詳しく書かれていますね。
酸処理方法の記事はいくつか拝見したことが
ありますが、法律や使用後の保管については
おそらく初めて知りました。
この記事はとても参考になりますね^^
ということで永久保存版に。
塩酸の入手から廃棄に至るまで詳細な記事
お疲れ様でした。
ちょっと知識がないとなかなか手を出しにくい
なぁと正直思いましたので参考になりました。
先日の希硫酸の件、無知な私のためにわざわざ
お調べくださってありがとうございました<(_ _)>
手の込んだことをすると捨てるときや廃棄するときに頭を悩ませますよね。
例えば不要になった水槽。
これはプラスチック、ガラスだからといって燃えないごみで出すのはNG(自治体で異なるところがあるかも)。
資源ごみのステッカーを張らないとだめなんですよね。
塩酸もいろいろと大変そうだね。私は酸処理にみつかんの酢を10ℓ使ったのですが処理後、そのまま捨てちゃった・・・。これももしかしたらNG?
実はGLASS BOX さんか、EverGreenDazedさん経由で以前から、拝見させていただいておりました。
今回の記事、大変勉強になりました。
アクアリストらしい後処理、とても大切なことですね。
リンク貼らせていただきます。
酸処理記事前回に引き続き詳しいご説明ありがとうございました。
実は本日手に入れて参りました。印鑑持参で^_^
記事の手順で時間が出来たら私も行ってみたいと思います。
希釈倍率は前回記事を目安にするとして
時間的にはどれ位が良いのでしょう?
ちなみに石はcoryvirusと同じモノと思われます^_^
こんばんわ。
いやーお恥ずかしい限りです。
そうなんです、これらの石を購入したんですよ^^
私も詳しくは分からないのですが、石本体は溶けないみたいですよ。(もしかしたら、徐々に溶けているのかもしれませんが、目立つほどではないです。)
ふっふ、
私は、catfishtailさんのブログを見て、ビオトープであったり、魚の飼育法であったり、多分に参考にさせていただきましたからねー。
私の文章も、誰かの役に立てればいいなーって思っていますよ。
>>zoeさん
こんばんわ。
今回の記事は、私としてもちょっと頑張りました(苦笑)。
今後の参考にして頂ければ、ちょっぴり嬉しいです^^
こんばんわ。
塩酸は確かに気を使う薬品ですが、効果はかなりあると思います。
何かの参考にして頂ければ幸いです。
前回のコメント。
つたない説明で申し訳ありません。
ぜひ、塩酸で試してみてください。
>>きのこさん
こんばんわ。
環境問題に注目されている昨今、何でも廃棄するのが大変ですよね。
できればリユースやリサイクルしたいところです。
酢を廃棄したとのことですが、たぶん大丈夫だと思いますよ。
今調べたら、劇物ではありませんでした。
一応、酢は弱酸ですので、大量の水で希釈したらベターかもしれませんね。
こんばんわ。そして、初めまして。
コメントをくださいまして、ありがとうございます。
このブログ。
いつもショボいネタばっかりなので、たまに真面目な記事を書くと、注目されちゃいますね。
どこかで参考にして頂ければ、本望です。
これからもどうぞ宜しくお願いいたします。
私のブログからもリンクを貼らせて頂きます。
>>morinさん
こんばんわー。
えっ!モリンさんもでしたか。
マズイ。モリンさんのスタイリッシュな石組みと比較されてしまう(笑)。
(いやはや、もう観念しております。)
私が行ったのは、25倍希釈(1.5%ぐらい)で24時間ぐらいです。
処理する石の量にもよりますので、24時間目に様子を見て、まだ不十分だと判断されたら、もう24時間続けたらいかがでしょうか。
綺麗にならないと思ったら、新しく塩酸を希釈して、再度酸処理をしたらいいかもしれません。
塩酸で石を処理するのはいいとして、その後どう処理したらいいのか
疑問だったのですが、解決してスッキリしました。
私も年内に水槽をリセットして石組をやってみようかと妄想しているので
とても参考になりました。
長々とした記事を読んでくださいまして、ありがとうございます。
前回のご質問を頂いたことがきっかけとなり、私自身、あいまいな知識でしたので、調べてみました。
参考にして頂ければ、この上ない喜びです(笑)。
imp28さんの石組み。
きっと素敵なんでしょうね。
おおー、楽しみにしております。
龍王石の酸処理記事、興味深く読ませて頂きました。
それにしても、いつも内容が濃い~ですね^^
私にはマネ出来ないです、キッパリ(笑)
酸処理をすると霜降りが綺麗に出るのは以前から知っておりましたが、
塩酸を使ってバケツで簡単に出来るようですね^^
でも、自分がやるにはちょっと怖い気が・・・。
何でも出来てしまうcoryvirusさんが羨ましいです。
めちゃめちゃキレイになりましたね!
こんなに効果があるんだ!?
あれだけ濁ってたってことはそれだけ汚れが
ついてたんですね。化学ってすごい!
そのままでも満足しちゃいそうな良い感じの石ばかりでしたが、更にすばらしい感じですね。
レイアウト作成後が楽しみ!!
それにしてもすごく勉強になります。
私は石は買った事がないのですが、
採取した奴とかも酸処理してみると面白いかもしれませんね。
でもやっぱり扱いが難しいですね。
特に小さい子供がいると・・
だいぶ厳重にやられたようですが、
やっぱりお子さんに要注意ですよね。
気を付けて残りもキレイに仕上げてください。
見事に綺麗な霜降りが復活しましたね。
手間をかけた分、レイアウトの楽しみが増しますね^^
詳細な酸処理・塩酸の取扱いレポート。
ありがとうございました。
それぞれが、自覚して取り扱うものなんですね。
おかげでアクアリストは博学なんだと再認識♪
(地位向上かも)
ところで、石についているカルシウムの由来はなんでしょうか?海から隆起した地層のものなんでしょうか。
一つの石にもロマンが感じられますね(笑)
こんばんわ。
南の島からお帰りなさい^^
何かyoshiさんの参考になればいいんですけどね。
いつも、個人的に興味があるものしか書いていないので、内容が偏ってますけどね。
>>nagi dadさん
こんばんわ。
予想以上に綺麗になってくれたので、
私もびっくりでしたよ^^
子供がいると躊躇してしまいますね。
危険性が低くて、効果的な石磨き液みたいなのが販売されるといいかもしれませんね。
どんなことあっても、初めての人には分からない常識、ノウハウってものがあるんだと思います。
アクアリストには常識である「生物濾過」みたいな感じのものが。
今回、塩酸と例に取り上げましたが、
専門家の方にとっては当然常識ってことも、
知らない人にとっては、思いもしない新知識となってしまいますからね。
ちょっとだけでも、皆さんのお役に立てたらいいなって^^
確かに塩酸は入手や保管が面倒ですよね。石組にもうひとつ興味がわかないので試してはいないのですがトイレの洗剤の「サンポール」じゃ代用できないのでしょうか?
たしか主成分は塩酸だったような…と思い検索してみたら…塩酸9.5%となっていました。洗浄成分が含まれているのでどぶ漬けにしなくてもバケツに石を入れ、まずサンポールをほんのちょっとかけてみて急激な反応が無いのを確認してから(←コレ 大事ですよ!)石全体にかかるようにサンポールを回しがけ、乾いてきたら溜まっているサンポールをブラシでそっと軽くこすりつけるを何回か繰り返せば少量のサンポールで処理ができるのではないでしょうか?
実際に試してみたわけでは無いので効果の程は不明ですがサンポールの塩酸の濃度から見て効果はあると思います。
強い酸は薄めても強い酸なので試してみるなら自身の責任で気を付けて慎重に作業をしてくださいね。
長文ですみませんでした。
ブログを削除いたしましたのでお手数ですがリンクの削除お願いします。
本当にすいませんでした。
貴重な提案をしてくださり、ありがとうございます。
私も調べてみてなるほどって思いましたよ。
ただ、サンポールの内容物である洗浄成分がくせものでして、
いわゆる洗剤(界面活性剤)のようでした。
当然、界面活性剤は生物には良くないものなので、
完全に洗い流すことが必要だと思うのですが、
石のような凹凸のあるものでは、
なかなか完全に除去するのは難しいのではと思います。
それと、今回、私も初めて気が付きましたが、
石をブラッシングすると予想以上に水滴が飛び散りました。
もう、座ってブラッシングしようものから、
上半身汚れまみれ(笑)。
なので、酸を扱うときには、
漬け置きで処理するのがいいと思いました。
天然の石ではなくて、例えばガラス製品など表面がツルツルのものに対しては、
サンポールは強力な味方となってくれそうですね。
リンクの件、分かりました。
今回は、とても残念です。
また、ぜひ遊びに来てください。
何かありましたら、メールでもいいのでご連絡ください。
もう私が口を挟むことは何もありません(笑)。
塩酸はわりと薬局などで簡単に買えるようですが、ほんとはけっこう危険なんですよね。
塩素ガスで時々中毒死する方もいますし。
まぁ家庭で使う分には鼻が曲がるような強烈な刺激臭が出るので中毒になるほど大量に発生させることはないでしょうけどね。
やったことはないですが、酢酸でもできるという話を聞くのでそちらの方が無難かもしれませんね~。
ちなみにうちには毒劇保管庫があったりします(笑)。
この記事は、38brainさんの記事を読ませて頂いたことから、始まりました。
大変、貴重な情報をありがとうございました。
毒劇保管庫あるんですか?
いやー、検査キットとか作成されるぐらいですから、本当に研究室みたいですね。
いわば、PIみたいな存在なんですね。