☆GREEN HEART☆

漫画と本と国府津があれば生きていけるかもしれない「ことは」のブログ。
はじめましての方は「自己紹介」をどうぞ!

梨木香歩『沼地のある森を抜けて』

2009-03-14 | 梨木香歩
ぬか床ファンタジー

梨木香歩『沼地のある森を抜けて』
《始まりは「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を探る書下ろし長篇。》
(《》内「BOOK」データベースより引用)


正直に言って、久しぶりに早く読み終わらないかなまだこんなにページ残ってるよ、と思った本でした。好きな人には読んで欲しくない感想。酷評ではなく、中身のない感想です。


『西の魔女が死んだ』『裏庭』
梨木香歩の話は、児童書、ファンタジー要素が強い「大人向け」の本だと。
大人向けというのは、対象年齢が上、ということではなく、作者が「大人」を対象に書いた本みたいな。
今回もファンタジー要素の中に、大人向けの話が入っているのかと思って読んだら、「ぬか床」。ぬか床ファンタジー・・イギリスの、昔夢見ていたガーデンのある庭から始まるファンタジーとはかけ離れている。だからこそ高まる期待!


【この言葉がどの程度象徴的なものなのか、また現実に具体的なものなのか、私は推し量ろうとしたが、無駄だった。】(【】内P437L10-11より引用)


本書に登場する主人公の気持ちですが、私の気持ちそのものだったので、引用させていただきました。
まさに、これでした。


フリオと光彦の話が好き。
このまま、ぬか床から生まれてくる一人ひとりの人?と主人公の話が短編で語られて、最後には・・だったら。ぬか床の最後の結末が違ったら。
また違った感想になったかもしれません。
だいぶ時間を置いて読み返したいです。その時は、深い!と感じられたらいいなあ。


本編には関係ない話。
フリオ・イグレシアスのコンサート。という言葉が登場した。
古畑任三郎に、「ふりおいぐれしあす」という言葉が出てきていた。
人名・・そしておそらくは、俳優なのだと勝手に思っていたが、
コンサートというからには、おそらく歌手とかそういう音楽家なのか・・そうか。
意外なところで謎が解けてすっきりです。

梨木香歩『ぐるりのこと』

2007-09-19 | 梨木香歩
梨木香歩さんの『ぐるりのこと』とは
【英国セブンシスターズでの出会い、
トルコでのヘジャーブをかぶった女性との出会い、
イラク人質事件の世論に対する意見
幼児殺人事件に関するオトナへの意見  等々。笑って読むというより、ちょっと身の回りについて考える、という。内容は多岐に渡っているけれど、どれも梨木さんの周りぐるりのこと、について書いてある本。】

単行本が出たときに、一度読んだものを文庫版で再読。
私は基本的にエッセイを読みません(…)
『ぐるりのこと』は表紙がまっしろだったのが印象的でした。
(まっしろっていうと、薄紅のきゃーなあの人を思い出します)(この本とは関係ない話です)

前半部の海外での経験をもとにした話は面白かったです!
でも現代社会の問題事件について語られている部分はあまり好きではないなーと。
私はエッセイに、ゆったりとした空気とぽかぽか陽気の日の窓辺で紅茶とともにぱらりとめくり、あきたら閉じる、そしてまたなんとなく開く。
そういうものを求めているのかなー、と思いました。
あくまでイメージの話で、私は紅茶を飲むなら緑茶派です(…)
紅茶にちょっとはまってみたいんだけど、どうも面倒で・・うーん。

梨木香歩『村田エフェンディ滞土録』を読みました

2007-06-25 | 梨木香歩
またしても、やってしまってました。×村田フェンディ→○村田エフェンディ

梨木香歩さんの『村田エフェンディ滞土録』とは
(【】内「BOOK」データベースより引用)
町中に響くエザン(祈り)。軽羅をまとう美しい婦人の群れ。異国の若者たちが囲む食卓での語らい。虚をつく鸚鵡の叫び。古代への夢と憧れ。羅馬硝子を掘り当てた高ぶり。守り神同士の勢力争い―スタンブールでの村田の日々は、懐かしくも甘美な青春の光であった。共に過ごした友の、国と国とが戦いを始める、その時までは…。百年前の日本人留学生村田君の土耳古滞在記。


単行本で読んでましたが、途中で読むのをやめてた一冊。
一言で言うと、土の匂いがする本?
流れる音楽、立ち込める砂埃、人々の会話、言語食事風習文化思想、
異国の独特の匂いのなかに存在する、自分。
日本人留学生である村田の土耳古での下宿先での「常」となっていく日々、
遺跡発掘、新たなる発見、研究に対する充実感、そして舞い込んでくる「常」ならざるもの。


以上、出土品一時保管庫への石段を上がりながら、オットー風につらつら考えてみた結果、ハムディベー氏の「招待」の真意を推し量るには、氏に関しての、私の手持ちの情報並びに教養が少なすぎるという結論に達したのだった。(〝〟内本書P70より引用)

うまそうな手触り、という話がとても印象に残りました。
うまそな手触り。
見て楽しむ香りで楽しむ食べて楽しむそして触って楽しむ。
箸を通してではなかなか体験できないものだと思いました。


ネタバレ反転しますご注意。

これが高い評価を受ける(受けているならばその)由縁はどこかと聴かれたら、
家守とつながりがある点ではないかと思います。とトゲがあるように聞こえるかもですが(私は梨木さん好きーです!)、梨木さんの書き方がやっぱりすごいんだなあと思います。梨木さんって不思議です。

ラスト!嬉しかったです。やっぱり高堂が私はとても好きです。
家守と関連があっても、実際本書で高堂とか綿貫に会えるとは思ってませんでした!
想像と違っていた所は、革命が意外と関わってきたというところです。
さらに最後の手紙も驚きました。
皆いない。
この部分初めは、酒見さんの『後宮小説』のように、ちょっと蛇足かなと思いましたが、オウムの話まで読んでやっぱりこの話は必要だ!と思いました。オウムがまさかここまで重要な?役割を・・オウムがいなかったら、また違う印象の話になったかもしれません!


余談過ぎる余談です。

大学の考古学関連の授業を思い出しました。
考古学は史学科にいたくせに、実は全く興味がありません(断言すんな)
でもその授業は大好きだったなあと。
経験がある人の授業ほど面白いものはないと思います。
あと、その人が「見てもいないものについて書けるか」と言ったのが印象に残ってます。
私の書いたものは、見ることは出来ないものであったけれど、
その土地へ行かねばその土地のことは、確かに判らないと思いました。
土地に根ざしたもの。土地の温度とか土地の息とかそういうものを感じなければ。
村田エフェンディを見ていてそう思いました、という話でした。


いや、やはりいい話だ。僕は雪玉のなかにあめ玉が仕込まれていた経験など全くない。  (〝〟内本書P121より引用)

梨木香歩『からくりからくさ』を読む。

2007-02-10 | 梨木香歩
淘汰


梨木香歩『からくりからくさ』とは
祖母の残した古い家屋。そこへ同居することになった、蓉子、与希子、紀久、マーガレットの四人と「りかさん」。
庭の草花を食し、木を刻み染め物をし、機を織る。
まるで外界から切り離されたような、ゆっくりとした時間が流れる生活。
りかさん、蓉子、与希子、紀久、マーガレット。
糸が紡がれ、やがて形を成していく。

長いです。結構無駄なことを真顔で語ってます。完全なる「雑感」です。

あらまた余計な話が始まったよというあれで。
私は、好きな言葉というのがあります。言葉だととても広くなるので、
好きな文字、漢字、熟語、といいましょうか。
その一つをすっかり忘れていたのですが、この本を読んで思い出しました。
「淘汰」
意味はあまり好ましいと思えないのですが、この字面というか、響きがとても好きです。淘汰とうたと、今日は一日中、ぽつりぽつりと言っています。まあ2,3日過ぎれば治まるでしょう(笑)否。治まらないと困るわけであります。不審者!
ちなみに「二連」の片方を想像して言っているわけではありませぬ(笑)

『りかさん』を読んでからの方が、楽しめると思う。
ただ、マーガレットや与希子、紀久側に回って読むならば、『りかさん』を読まないで読むのも面白いかもしれない。
自然と共に暮らし、季節を楽しみ、織り、染め上げる。
そんなある種夢のようで非現実的な世界。
しかしそんな世界にも哀しみ、苦しみ、憎しみがひたひたと入り込む。
そういう現実的な問題をそろりといれるところは、『裏庭』とも似ている。


「慈しむとか、大切にするとか、尊ぶとか、そういうことが、観念でなく、出てくるのよ……。」(本書P174L3-4より引用)

私はこの逆なのだなあといつも梨木さんの本を読むと思います。
私は、自然とできているのではなく、あえて自ら其れを何とかして取り込もうと思うような形になります。
例えば、ピエブックスさんが好きなことにそれは如実に表れているのだけれど。
えこよみを大事に抱えたり、百人一首を覚えたり、万葉集を読んでみたりetc...そういう日本の大事なものを、自然とにじみ出るようになりたいと、不自然に外から取り込もうとしているのが、常日頃の私であって、受け入れる前に、理解するという過程をどうしても入れてしまう。
でもそれが別にいやではなくて、でも梨木さんやこの本の蓉子のような人は憧れであって、マーガレットの気持ちがとてもよくわかるなあ、と。
要は日本文化って美しいなあと思う前に、それがもう生活の一部になっている蓉子がとても憧れだという話です。

それはこの本の感想ともつながっていて、
感動し尊いと思いながらも、
今はこのような暮らしや感性を持っている人はどれほどいるのだろうと、
ある意味非現実的な気持ちになりながらも、
やはりどこかでそれに憧れて、
でもその空間の中に、哀しみ、憎しみ、画策、死、恋etc...
それらによって現実に引き戻されつつ、しかしどこか夢うつつで話は進み。
綺麗でそれこそ淘汰された世界に住みながらも、世俗的なことを決して忘れ逃れていない。そいういところを読むと、私はこれは梨木さんの本なんだなあと思います。

柏、カラスノエンドウ、
ヨメナ、クサノオウ、桂、
葛、セイタカアワダチソウ、蓬、ふきのとう
露草、ヘビイチゴ
萌黄、桜。牡丹、菖蒲。

食し、観賞し、染めあげる。

梨木香歩さん『家守綺譚』を読み。

2006-10-29 | 梨木香歩
遠くの空に浮かぶ雲。つかめそうにないけれど、確かにそこに存在する。

そんなイメージ。

梨木香歩さん『家守綺譚』とは
これは、つい百年前の物語。庭・池・電燈つき二階屋と、文明の進歩とやらに棹さしかねてる「私」と、狐狸竹の花仔竜小鬼桜鬼人魚等等、四季折々の天地自然の「気」たちとの、のびやかな交歓の記録。(出版社/著者からの内容紹介より)単行本未収録、主人公「綿貫」の随筆「烏〓苺記(やぶがらしのき)」も収録。

「尊い」という言葉が好きです。
たまに尊い本や漫画に出合います。
これはその尊い本の中の一冊。

ハードを図書館で読み、文庫化にあたってまた読み直しました。
実は結構前に記事を書いてます。こちら。過去記事って恥ずかしいなぁ。。

死んだ友人高堂の父から、家の守を頼まれた綿貫
以来「物書き」一筋となった彼は、
時に、掛け軸から現れた死んだはずの高堂と話をし、
庭のサルスベリに惚れられて、その思いをそらすために本を読みきかせる。
白木蓮はタツノオトシゴを孕み、池には人魚が現れ。
子鬼や狸、河童と交わり、モノを書く。

高堂という名がとても好きでした。
P185、L11~13が家守のすべてだったと思いました。
ちょっとジーンときた。

何箇所か好きなシーンがあるのですが、
やはり高堂と綿貫の違い・・というか性格が見て取れるシーンが好きです。

 -思い込みというのは恐ろしいな。
  ーだがとりあえず思い込まねばな。(本書P152l7、8より)

また、担当の「山内」という人物がとても好きでした。
それまでどうしても子鬼や河童やらと同じで、いるのかどうか不明確な人物であると思っていた「高堂」。
しかし山内が「高堂先輩」の話をしてくれるおかげで、急に実体を伴って現れてくるような、そんな気がしました。

私は綿貫の・・というよりも本書の、
世俗から離れているようで実は離れていないような、人間臭さ?も漂うところが好きでした。
本全体を見ると全然そんなことは思わず、ひどく特別な中を生きているような気がするのです。
だって、死んだ友人が掛け軸から出てきた?子鬼?河童?人魚?しかも周りの人が全然それを不思議がらない・・?なんだそりゃ。
それを不思議がらないでいることは、とても羨ましいようで、どこか怖い。
「不思議がらないでいたい・・・でも・・怖い。どうしたら・・・」と思っていると、そこに綿貫が現れる。不思議がってもいいんじゃないか。と。
綿貫は、ふわふわ浮いた世界の中で、「いかり」の役割をしてくれてるようなそんなイメージでした。
そして綿貫の言動でふいに現実味を帯びたり、人間らしいところを感じることができるのです。それは確かにあることなんだ、と。不思議だけど確かなものだ、と。


ラジドラももう一度聴きました。これはとてもとても素敵なものでした。
綿貫の声。ざわめく木々。さまざまな生物が入り乱れて綾なす景色。

ラジドラのときも言いましたが、
むいてないのははらはらドキドキしたい方。
むいてるのは雰囲気を楽しめる方。かと。
相性が悪いと、「だから!なに!」とか言われそうです(笑)

多くは語らないつもりが、恐ろしく長い文に。
龍田姫の話を聞いていたら、「木花咲耶姫」のあの梨木さんの本が読みたくなりました。(姫・・ってだけ・・しかもタイトル違う・・)

りかさん 梨木香歩さん

2006-01-30 | 梨木香歩
突然、梨木さんの『りかさん』が読みたくなって再読。

梨木香歩さん『りかさん』とは
「リカちゃん人形が欲しい」と言ったようこに、おばあちゃんは黒髪の市松人形「りかさん」をプレゼント。
様々な人と様々な人生をともに歩み、様々な人の感情を受け止めてそこに存在してしているりかさん。不思議な人形とようこの生活が始まる。

またしても、うまく説明できません。
表紙をみて、梨木さんの中でもホントに「児童書」に近いかと思ってしばらく避けてた一冊。激しく後悔。
人形はなんとなく不思議な力を持っている気がする。その想いが、爆発した本です。
前半は児童書色が強いですが、だんだん深い話になってきますので、やめずに読んでください。

あまり本で泣きません。基本「泣く」系の本は読みません。
でも、「アビゲイル」の話で一気にやられました。
アビゲイルとは、戦前、アメリカから日本に贈られた親善大使の人形。
戦前のというのが、ポイントかもしれません。戦争が始まったら、アビゲイルは、杭に縛られ、竹槍の刺す訓練の的にされます。あぁ。人間って。。

同作者の『からくりからくさ』につながるようこのお話。染織との出会いも書かれてます。
大人こそ読んでほしい一冊です。

裏庭  梨木香歩さん

2006-01-16 | 梨木香歩
高校生のときに読んで、最近再読。
梨木さんも、好きな人の一人。

裏庭とは・・
亡くなってしまった弟。自分に関心がないと感じるお母さん。
ある日、そんな女の子が洋館の中で、異世界に入り込む。
憎しみや愛情、誤解や迷いなど、様々な感情が見え隠れしながら、少女は旅をしていく。。

イギリスの児童文学って感じの印象を受けました。(どんな感じだ。。)
というか、わりといつも梨木さんの本はそんな印象をうけます。あっ『りかさん』とかは、違うか。。でも、『西の~』とかはそんな感じだと。
ファンタジーだけど、私はあまりファンタジー色は濃くないと思う。

高校生のとき読んだときより、今大人(?)になってから読んだほうが、「納得」できます。お母さんの気持ちがとても気になってくる。
同じ出来事でも、人によっていろんな見方や感情があるんだなって思いました。
ファンタジーなんだけど、現実の問題とかがその中に、入り込んでいて、ちょっと考えさせられる一冊。私もいろいろ悩んでたかなとか、今考えるとたいしたことないかもしれないけど、その時の自分にとっては、重要なことだったなって。

梨木さんの本は、エンジェルエンジェルエンジェルが未読。どうやら、文庫と単行本で内容が違うらしい・・?