チャレンジ鍼灸師82歳:今、新しい医学・医療創造の志に燃えて生きる!

青春時代の社会変革活動の挫折をのりこえ、鍼灸の道へ。

百万人署名が始まった・・・・・・②

2013年07月04日 | 鍼灸健保問題

健保運動は

「岸裁判」で学び、到達した時点から一歩を踏み出さなければ

新しい医療制度をめざす運動の方向を見定めことはできない。

 

「百万人署名」の取り組み訴え文書のなかに

「鍼、灸、マッサージにおいては医師による同意書・診断書、3ヶ月ごとの再同意の必須、

病名制限,西洋医療との併用禁止、健保組合との協定、契約の禁止

さらに保険を使わせないための償還払制度など

法律に基づかない権力の乱用による違法な通知で抑圧しています。」・・・・・・

と書かれている。

 

これは、「鍼灸マ」の健保適用を願う患者としては仕方がないとも言うべき

全くの事実誤認であり、

「健保法規」への基礎知識の不足を示すものである。

まず、これを明確にして、健保運動の方向・目標をただす必要があると思う。

 

「訴え文」で指摘された「現状の事実」はすべてその通りである。

しかし、それは「法律に基づかない権力の乱用による違法な通知」によるものではなく

まさに「現行健保法」に基づいた行政の指導による保険者の扱いなのである。

 

指摘された諸制限のうち

「改善不可能・困難」のものと、「改善可能」なものと

法的に次元の違うものが混在している。

これをきちんと見分けなければならない。


「償還払い」制度すなわち「療養費」は、「保険を使わせないための制度」ではない。

「現行法」の上で、医師・歯科医師などの「指定医療機関」以外の

「資格者」の治療を「保険で使う」ための制度なのである。

「整体」などの違法・無資格治療では、この制度は当然使えない。

 

西洋医学との併用禁止・・・・・

これは「東洋・西洋」の医学の違いで禁止されているのではない。

 

「指定医療機関」である医師・歯科医師の治療は「療養の給付」(現物給付)であり

窓口に「保険証を提示」すれば、医療を受けられるのである。

それ以外の資格者の治療は

「療養の給付」が受けられないので

患者が、「療養費」として、現金を還付してもらうように

「現行法」で規定されているからである。

 

そして「療養の給付」と「療養費」は選択の自由はなく

「療養の給付」が原則であり、「療養費」はその原則が満たされない場合の

救済措置なのである。

鍼灸の「療養費」は、鍼灸師の取り扱う疾病が

原則としての「医師の治療」(療養の給付)が満たされない場合に支給されるものである。

従って、「療養の給付」と「療養費」の「併用はありえない」のである。

 

その原則が満たされない場合とは

厚生省の「有権解釈」である保険局長通知(保発32号)

「医師による適当な治療手段のないもの」として

明記されている。

すなわち、差別なのではなく、「法的な取り扱いの違い」である。

 

「病名制限」「同意書問題」は、「法文で規定されたもの」でなく、

「行政の法解釈に基づく行政裁量である通知」によって決められているものである。

従って、「解釈」が変われば「改善可能」である。

 

以前問題となっていた

「医療先行の条件」や「期間・回数制限」などは、担当部署の裁量の範囲であり

担当者との交渉で「改善できた」のである。

 

「医療先行の条件」は、

『保発32号の「医師による適当な治療手段のないもの」の解釈として

保険課長通知(保険発28号)により

”通知で言う「医師による適当な治療手段のないもの」とは、

保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果のえられなかったもの

又は

今まで受けた治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断されたもの等を

いうものであること”と指示されているのである。』

 

平成9年12月まで

この通知により

「医療先行」の内容が、いちいち保険者によって「チェック」され

当該病名で医師の治療を受けていなければ「医療先行」なしですべて「不支給」。

受けていても

「医師の治療の効果があらわれていないとは判断されない」という理由を

つけられ「不支給」とされるケースが多発していたのである。

 

「岸裁判」と平行しながら「保鍼連」と保険課担当者の間で

粘り強い「内部交渉」が行われ、「保険発150号」が発行された。

 

そこには、上記保険発28号に

なお、通知に示された対象疾患については保険医より同意書の交付を受けて施術を

受けた場合は、

本要件を満たしているものとして療養費の支給対象として差し支えないこと。

ただし、同一疾病に対する療養の給付(診察、検査及び療養費同意書交付を除く。)

との併用は認められないこと。」と追加された。

 

このなお書きただし書きによって、

「医療先行の条件」と「治療以外の併給」による

「不支給」は皆無となったのである。

 

岸裁判の意義はここにあったのである。

一方で、「併給による不支給」で、法的に争いながら、

鍼灸師の治療の健保扱いの問題点を明らかにし、

一方で実務上の最大の難点を克服したのである。

 

裁判で明らかになった「法的問題点」は、

「療養費」は、「患者の権利」として支給されているのではなく

「保険者の”やむを得ない”と認める裁量」によって支給されるものであり

鍼灸師・マッサージ師の治療が

「患者の権利」として支給されるためには、これらが

「指定医療機関」として、健康保険法に明記される

必要があるという、基本的なことである。

 

従って、

健保推進は、この「目標を明確にした運動」でなければ

実現できないのである。

 

★ 私見・・・・・

(併用問題も、

法文では

「療養費は保険者がやむを得ないと判断したものに支給しても差し支えない。」

となっており

この”やむを得ない”という文言の解釈を、

昭和42年に発行され、現在も生き続けている局長通知(保発32号)である

「医師による”適当な治療手段のないもの”はやむを得ない」という解釈を廃棄し

「資格者の行為であり治療効果があるが指定機関でないためやむを得ない」

ややこじつけ的な解釈にすれば、改善可能であるかも知れない??

しかし、これは姑息な解決であろう。)


 


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