チャレンジ鍼灸師82歳:今、新しい医学・医療創造の志に燃えて生きる!

青春時代の社会変革活動の挫折をのりこえ、鍼灸の道へ。

鍼灸マッサージの健保適用を求める「百万人署名」が始まった・・・・・①

2013年07月06日 | 鍼灸健保問題

鍼灸マッサージの健保適用を求める「百万人署名」が始まった!

 

この「署名運動」は、

鍼灸師やあん摩マッサージ指圧師の治療の

「健康保険の正当な適用」を求める患者の

当然な要求に基づいている。

患者が自ら選択した治療への健保適用は

”憲法第25条” に明記された、

国の「生存権」「健康権」「受療権」の保障・増進義務・・・・・に照らして

国が誠実に相応な対処をすべきことである。

 

それが障害されている事実は明瞭である。

「百万人署名」は、

全国的な潮流を巻き起こし患者の立場をより充実した

新しい医療制度を築くスタートとなるだろう!

 

私は鍼灸専門家として

この運動の実現に対して、私の提言を加えながら、具体的に協力したい。

 

まず、この「百万人署名」の提唱者へ

健保問題の本質を理解していただきたいと思う。

それを土台にしなければ、

この運動は、今までの一貫した既成業界の運動の域を出ないからである。


残念ながら、

「取り組み訴え文」では、

鍼灸師やマッサージ師等の治療に関する健保適用制限の現状について

「権利侵害」、「差別」、「法令違反」や「権力の濫用」と呼び掛けているが

明らかに「健保法」と「諸通知」への「無理解」があり

根本的な運動理念において

既成業界の今までの運動の延長に過ぎないと、思料せざるをえない。

 

健保運動は

「岸裁判」で学び、到達した時点から一歩を踏み出さなければ

新しい医療制度をめざす運動の方向を見定めことはできないと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「頭部円形脱毛症」がよくなった!

2013年07月05日 | 最近の治療体験から

昨年11月から、32歳の主婦で「頭部円形脱毛症」の患者さんを治療している。

2年くらい前から、皮膚科で治療いていたがだんだん悪化してきて、

いつも「かつら」をつけ、帽子を深くかぶり頭を隠さなければ外出できなくなった。

最近は精神的にも「うつ状態」になり、

向神経薬を飲んでいるがますます落ち込んできている・・・・・・ということであった。

 

ご主人が知人にすすめられ、「脱肛」で私の治療を受けたらよくなったので、

相談してみたらと言われて来たそうである。

 

円形脱毛症は「ハリの適応症」で、私が完治させた例もあるが

この患者は、

肩こり、頭痛、腰痛もあり、「服薬の副作用」のためか生理不順もあるので、

とにかく鍼灸治療を続けてみようということになった。

 

「生理不順」は、最初1回の「三陰交」の快浅刺で、次回の生理から正常。

肩こり、頭痛、腰痛も、、かなり慢性化ており、

最初の治療から完治までは行かないが、漸次軽快しつつある。

 

問題の「脱毛」は、

「六部定位脈診」とすべての症状をもとに「腎虚証」として対処し、

頭部の「四神総」の浅刺と、比較的大きな5箇所の脱毛部の中心に一回の米粒灸

 

治療開始の15日後、3回目の治療時には、無数にある大小の円形脱毛部の

三分の一位で、発毛が見られた。

 

11月4回、12月2回、1月3回、2月1回、と治療を重ね、

3月は子供のインフルに感染したのと多忙のため治療が抜けた。

 

4月に入り、1ヶ月ぶりに来診。初めて帽子をかぶらずに来たので

「自信がついた?」と質問すると、

ニコニコと「もう1ヶ月近く前から帽子なしで外出している」と答えてくれた。

 

インフルの名残で、「耳の閉塞感」や「のどの違和感」「夜間にでる連続の軽い咳」

があったので治療した。

のどと耳は即効。夜間の咳には対処法を教えて治療したが、

とまらなければ必ず翌日来るよう指示して帰した。

もう、3日経つが治療に来ないからOKと思う。

                                        (25年4月8日 記)

 ★★ 追加(25年7月5日)

その後、5月に何回か治療し

しばらく治療が途絶えたが、7月に入りまた治療に見えた。

以前からの症状は、すべて消えていた。

生理痛もなし。肩、腰なども完全とはいえないが、「気にならない」そうである。

治療に来られなかったのは、二人の子どもがあいつで「水疱瘡」になり

ようやく治ったので、

自分の治療ができるようになった、ということであった。


最近、以前はいつも「かつら」をつけ、帽子をかぶったままで会っており

「脱毛症」のことは、全く知られていない旧友と会ったら

「ヘアスタイルが、前と違ってずっとよくなり、感じもなぜかすごく明るくなった」

言われて嬉しかったと、微笑みながら話してくれた。











 

 


百万人署名が始まった・・・・・・②

2013年07月04日 | 鍼灸健保問題

健保運動は

「岸裁判」で学び、到達した時点から一歩を踏み出さなければ

新しい医療制度をめざす運動の方向を見定めことはできない。

 

「百万人署名」の取り組み訴え文書のなかに

「鍼、灸、マッサージにおいては医師による同意書・診断書、3ヶ月ごとの再同意の必須、

病名制限,西洋医療との併用禁止、健保組合との協定、契約の禁止

さらに保険を使わせないための償還払制度など

法律に基づかない権力の乱用による違法な通知で抑圧しています。」・・・・・・

と書かれている。

 

これは、「鍼灸マ」の健保適用を願う患者としては仕方がないとも言うべき

全くの事実誤認であり、

「健保法規」への基礎知識の不足を示すものである。

まず、これを明確にして、健保運動の方向・目標をただす必要があると思う。

 

「訴え文」で指摘された「現状の事実」はすべてその通りである。

しかし、それは「法律に基づかない権力の乱用による違法な通知」によるものではなく

まさに「現行健保法」に基づいた行政の指導による保険者の扱いなのである。

 

指摘された諸制限のうち

「改善不可能・困難」のものと、「改善可能」なものと

法的に次元の違うものが混在している。

これをきちんと見分けなければならない。


「償還払い」制度すなわち「療養費」は、「保険を使わせないための制度」ではない。

「現行法」の上で、医師・歯科医師などの「指定医療機関」以外の

「資格者」の治療を「保険で使う」ための制度なのである。

「整体」などの違法・無資格治療では、この制度は当然使えない。

 

西洋医学との併用禁止・・・・・

これは「東洋・西洋」の医学の違いで禁止されているのではない。

 

「指定医療機関」である医師・歯科医師の治療は「療養の給付」(現物給付)であり

窓口に「保険証を提示」すれば、医療を受けられるのである。

それ以外の資格者の治療は

「療養の給付」が受けられないので

患者が、「療養費」として、現金を還付してもらうように

「現行法」で規定されているからである。

 

そして「療養の給付」と「療養費」は選択の自由はなく

「療養の給付」が原則であり、「療養費」はその原則が満たされない場合の

救済措置なのである。

鍼灸の「療養費」は、鍼灸師の取り扱う疾病が

原則としての「医師の治療」(療養の給付)が満たされない場合に支給されるものである。

従って、「療養の給付」と「療養費」の「併用はありえない」のである。

 

その原則が満たされない場合とは

厚生省の「有権解釈」である保険局長通知(保発32号)

「医師による適当な治療手段のないもの」として

明記されている。

すなわち、差別なのではなく、「法的な取り扱いの違い」である。

 

「病名制限」「同意書問題」は、「法文で規定されたもの」でなく、

「行政の法解釈に基づく行政裁量である通知」によって決められているものである。

従って、「解釈」が変われば「改善可能」である。

 

以前問題となっていた

「医療先行の条件」や「期間・回数制限」などは、担当部署の裁量の範囲であり

担当者との交渉で「改善できた」のである。

 

「医療先行の条件」は、

『保発32号の「医師による適当な治療手段のないもの」の解釈として

保険課長通知(保険発28号)により

”通知で言う「医師による適当な治療手段のないもの」とは、

保険医療機関における療養の給付を受けても所期の効果のえられなかったもの

又は

今まで受けた治療の経過からみて治療効果があらわれていないと判断されたもの等を

いうものであること”と指示されているのである。』

 

平成9年12月まで

この通知により

「医療先行」の内容が、いちいち保険者によって「チェック」され

当該病名で医師の治療を受けていなければ「医療先行」なしですべて「不支給」。

受けていても

「医師の治療の効果があらわれていないとは判断されない」という理由を

つけられ「不支給」とされるケースが多発していたのである。

 

「岸裁判」と平行しながら「保鍼連」と保険課担当者の間で

粘り強い「内部交渉」が行われ、「保険発150号」が発行された。

 

そこには、上記保険発28号に

なお、通知に示された対象疾患については保険医より同意書の交付を受けて施術を

受けた場合は、

本要件を満たしているものとして療養費の支給対象として差し支えないこと。

ただし、同一疾病に対する療養の給付(診察、検査及び療養費同意書交付を除く。)

との併用は認められないこと。」と追加された。

 

このなお書きただし書きによって、

「医療先行の条件」と「治療以外の併給」による

「不支給」は皆無となったのである。

 

岸裁判の意義はここにあったのである。

一方で、「併給による不支給」で、法的に争いながら、

鍼灸師の治療の健保扱いの問題点を明らかにし、

一方で実務上の最大の難点を克服したのである。

 

裁判で明らかになった「法的問題点」は、

「療養費」は、「患者の権利」として支給されているのではなく

「保険者の”やむを得ない”と認める裁量」によって支給されるものであり

鍼灸師・マッサージ師の治療が

「患者の権利」として支給されるためには、これらが

「指定医療機関」として、健康保険法に明記される

必要があるという、基本的なことである。

 

従って、

健保推進は、この「目標を明確にした運動」でなければ

実現できないのである。

 

★ 私見・・・・・

(併用問題も、

法文では

「療養費は保険者がやむを得ないと判断したものに支給しても差し支えない。」

となっており

この”やむを得ない”という文言の解釈を、

昭和42年に発行され、現在も生き続けている局長通知(保発32号)である

「医師による”適当な治療手段のないもの”はやむを得ない」という解釈を廃棄し

「資格者の行為であり治療効果があるが指定機関でないためやむを得ない」

ややこじつけ的な解釈にすれば、改善可能であるかも知れない??

しかし、これは姑息な解決であろう。)


 


百万人署名が始まった・・・・・・③

2013年07月03日 | 鍼灸健保問題

協定・委任の問題は、また全く次元の違う問題であり、

この問題が

「鍼灸師・マッサージ師の健保運動」をゆがめ、

現状を変革できない固定観念を、

患者にも業者にも植え付けてしまったといえるのである。

 

そもそも、柔道整復師業者団体と国の「療養費の委任払いに関する団体協定」は

昭和11年に、

法的に問題があったが、整形外科未発達の状況の下で、

患者が整骨師・接骨師の治療を受けることが多く、料金がまちまちであるのを

各県ごとに業者団体と協定し料金を定め、委任払い方式をとり現在にいたった」

ものであり、当時の医療上の必要から、「超法的」に定められたものである。

 

その根本的に問題を処理せず、

目先のごまかしでうまくやっていく日本人的「超法的取り扱い」が

固定化したため、それを手本にした

柔道整復師なみの「委任払いの団体協定」の締結が、

最初から一貫して

鍼灸師・マッサージ師の「健保推進運動の目標」となった。

 

しかし、それは極めて重大な問題点を含んでいるのである。

まず、「行政と業者との団体協定」とはなんだろう?

それは、明白に「法の下の平等」をうたった「憲法」に違反するものである。

 

行政が、特定業者の団体と協定を結ぶことは

特定業者団体以外の業者を排し、その業者の患者の権利を奪うことである。

 

現に、柔道整復師業者団体では、そのような問題が発生し、

今では、行政と諸団体及び個人との協定になっている。

 

しかし、鍼灸師・マッサージ師の業者団体の交渉には

行政側は、応じなかった。

それは、行政側は

柔道整復師との「委任方式」の法無視の問題点を熟知しており

昭和11年当時の医療状況からの歴史的な経緯のなかで

その状態が定着してしまっていたのを

肯定し拡大しようとは考えていなかったのであろう。

 

そのためか・・・・・、

昭和25年1月、当時進みつつあった鍼灸師・あん摩師業界と県との「団体協定」を

阻止する「局長通知・保発4号」が出されたのである。

 

通知は下記の通りである・・・・・

〇按摩、鍼灸術にかかる健康保険の療養費について

標記については療術業者の団体と契約の下に、これを積極的に支給する向きも

あるやに聞き及んでいるが、本件については従前どおり御取り扱いを願いたい・・・・

従前どおりの取り扱いとは、「療養費をあたかも療養の給付のごとく」取り扱ってはならない

ということである。

ここに療術業者とあるが、これは標記からみても、また療術業者はそもそも無資格者であり

療養費の対象となりえないことからも当然当局による誤記であろう。

それは、その翌年出された「昭和26年3月 保発14号」を見れば明らかである。)

 

〇あんま・はり灸、マッサージの施術にかかる健康保険の療養費について

標記については客年1月19日保発第4号をもって通知したにもかかわらず、いまなお

施術業者の団体との契約を続行し、甚だしきは新たに契約を締結しているところが

あるやに聞き及んでいるが、もしかかる事実の存続する場合はその事情のいかんを問わず

至急これを破棄するよう御措置願いたい。

 

この通知によって

鍼灸師・あん摩マッサージ師の健保推進運動には、大きな壁ができたのである。

この通知にもかかわらず、愛知・福井・神奈川など数県では県と業界の信頼関係を

維持し協定なき「団体委任」を守り続けたのである。

 

昭和40年代の初め、私が鍼灸師としてスタートし栃木県鍼灸師会に「保険部」を

立ち上げ、愛知などの先進県の指導を受けながら、県との「委任交渉」に尽力していた。

 

なかなか進展しない中で、県との交渉だけが「健保運動」ではないことに気づき

まず、「療養費」の請求を実際にやってみた。

 

「団体委任」のうまくいっている先進県では、

問題なく委任払いの支給がされており、「療養費の償還申請」などはされない

のでその指導はしていただけなかった。

 

患者のかかりつけの医師や私の懇意の医師を患者に紹介して

やっとの思いで「同意書」を書いていただいて申請してみたが

ほとんど「不支給」になり、

そこから、自分で勉強して「支給基準」なるものをはじめて知った!

 

それで、先進県の指導を受けずに、一方で「委任交渉」を続けながら

「療養費」の請求を患者に勧め、「支給実現」に力を尽くした。

その取り組みの中で

「委任」の問題は、目先で患者の「経済的負担」を軽くする

患者の権利実現にはならないことが明らかとなった。

 

健保運動の軸足を、「療養費」請求の実務の問題点への取り組みに置く

ことで「岸裁判」へたどり着いたのである。

 

そして

健保推進の目標は

療養費をあたかも療養の給付のごとく」扱って

「療養費の支給」を緩和することにあるべきでなく

「療養の給付」の実現への法改正運動を根幹にしなければ

「患者の権利」実現への道は開けないと確信するにいたったのである。