「差不多」的オジ生活

中国語の「差不多」という言葉。「だいたいそんなとこだよ」「ま、いいじゃん」と肩の力が抜けるようで好き。

生物と無生物のあいだ

2007-11-18 | 
評判の、福岡伸一さん著「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)。ワクワクしながら一気読み。生物科学の教養書なのですが、まるでミステリーで謎をひも解くような面白さでした。

「生物とは何か? なぜ私たちは無生物とそうでないものを一瞬にして見分けることができるのか?」。これが本書の出発点で、この問いに対する現在の生物学が到達した地点を歴史を振り返りつつ解説している。

私自身の生物学の知識は高校の教科書レベル。DNAの二重らせん構造にいたく感動した30年ほど前の興奮がいまはまだに自分にとっての最前線。そんな私でも読めます。著者自身が働いた米国の研究所での科学者たちとの出会いなども織り込まれて、生物学者たちがとても人間臭く身近に感じられる。功を争う気持ち、妬みや裏切り、「なんでだろう?」という素朴な人間的な疑問…

生物学の「前線」へのいざないは文句なしに知的に興奮します。DNAによる自己複製だけでは生命を説明するには不十分で「動的平衡」が生命の本質ということが語られる段にはワクワクドキドキ。「分泌」の不思議さとその原理の単純さにはただただ生命の深遠なる不思議さに驚くばかり。半年前の自分の細胞はすべてなくなっている。そのぐらい常に細胞の自己更新が行われている精緻な、でも驚くほど柔軟な、それゆえに環境変化にも細胞の「気まぐれ」にも耐えられる全体構造。どれも生物学をちょっと学んだ人には当たり前なのかもしれませんが、私のような教科書レベルで留まっているものにはただただ目からうろこなのでした。ちなみに「細胞はかくも小さいのに、なぜ我々はこのように大きな身体なのか」なんて考えたことあります?

そして、笑えたというか、笑ったあとでその事実に生命の不可思議さを感じ慄然としたのが、最後の「ノックアウトマウス」の話。生命を探求し、細部を追及していき、ある意味到達したのがここか!というどんでん返し的展開。ほんとに読み物としても一級品の面白さだと思いました。今年の五指に入るお奨めの一冊です!