ひかりTVのNHKオンデマンドサービスで、「プロフェッショナル仕事の流儀: ヒットデザインはこうして生まれる アートディレクター:佐藤可士和氏」の解をみた。2006年1月26日放送のアーカイブ番組だ。
「プロフェッショナル仕事の流儀」という番組自体は、一人のプロフェッショナルに焦点をあてた、NHK プロジェクトXの過去を振り返るスタイルと テレビ東京のガイアの夜明けのドキュメンタリーとしての今を追いかけるスタイルを融合した元に、その個人の考え方、生き方、そして仕事のスタイル、流儀を語ってもらうというスタイルの番組だ。
で。
この「佐藤可士和氏」の解で、過去の事例として出てきたのがキリンレモンのデザインリニューアル。
進行形のドキュメンタリーとして登場したのが、「N702iD」である。
特に、番組時点では「N702iD」は未発売。(ドコモとしては発表済みだが、店頭に並んでいない)
なので、このチャレンジが成功するかどうかは、これからだ、という締めくくりになっている。
しかし、この番組を見ている 2009年11月現在では、すっかり 2~3年前の過去の話である。
ということで、ネットで調べると、その後も何かわかるかなあと思って、調べてみた。
まず、N702iD のデビュー。
写真で解説する「N702iD」(ITmedia)
http://plusd.itmedia.co.jp/mobile/articles/0601/17/news055.html
スクウェアフラットなデザインで、バックライトなども均一に、シンプルにということが書かれている。ちなみにフォントも独自デザインの「サムライ702」というフォントなんだそうな。ただし、デザインしたフォントは、全漢字ではなくそれなりのメニュー階層のみだという。
さあ、で、実際この N702iD は売れたのか?
…結論から言うと、この端末が何台売れたかということはわからなかった。
まず、この 2006年~2007年という年は、NECの携帯電話事業にとってはターニングポイントとなった年だ。いや、日本の携帯電話業界にとってターニングポイントとなったと言える。それが、国内において、シャープが携帯電話事業でトップシェアをとったこと。また、NEC全体では中国向けの携帯電話事業が失敗し、財務的に窮地に追い込まれ、Panasonic とのプラットフォーム統合に動き出した年なのである。
その意味で、この時期の NEC の携帯電話事業について検索すると、上記のような話が多く、なかなか、N702iD は成功だったのかどうか、ということについて解が得られなかった。
が、発見したのがこの記事。N702iD の時には、富士通やシャープも同時に他のデザイナーとコラボレーションしたデザイナーズケータイを発表しているのだが、同じディレクターで、後継機種を発表したのは、NEC のみのようだ。
NTTドコモ、「N703iD」はスマートに深化したFLAT&SQUAREケータイ (マイコミジャーナル)
http://journal.mycom.co.jp/news/2007/01/18/015.html
というと、まず、N702iDは商業的には成功という結果を残したのではないかと思う。
さすがに惨く失敗していたら、後継機を作ろうという企画自体が持ち上がらないだろう。
実際に生産には行き着かないはずだ。
また、それを裏付けるかのような報告書のサマリも見つかった。
携帯電話端末メーカ、NECの失速
国内外ともに出荷減続く 国内ではN702iDの成功がカギ
http://www.dri.co.jp/auto/report/mr/mrhandsetnec06.htm
この中に「クリエイターの佐藤可士和さんによる「FOMA N702iD」が好調な販売実績を残しており、今後は販売戦略なども含む総合プロデュースを重視していく考えだ。」という一文が出てくる。一方で、この端末がフォーカスされたのは、それまで、国内の携帯電話事業で 1位を独占していた NECが端末デザインの陳腐化や、折りたたみデザインの普及により、優位性を保てなくなり、一気に 30%程度の売り上げを減少させ、国内第3位にまで後退しているのだ。
最後に、この端末の評価は? と思ってみると、
FOMA N702iD レビュー・評価
http://review.kakaku.com/review/31101000763/
FOMA N703iD レビュー・評価
http://review.kakaku.com/review/31101000894/
というような状況だ。
ちなみに、N702iDの評価をみると、この端末はデザインと携帯性(当時としてはコンパクト)を評価されていることがわかる。特にデザインの得票は、4.97 と、まさに「この携帯をカッコイイと思った人が買った」ことがわかる。レビューを読むと不満とされているのは、レスポンスの悪さ、日本語入力の稚拙さ、それから、こだわったサムライ702フォントの読みにくさ、だ。佐藤可士和氏としてはまずは責任を果たしたと言えるのではないだろうか。
N703iDになると、デザインの評価は 4.26 とぐっと下がる。
一見、それでも 4点台な訳だが、実際には、この 4.26 というのは携帯電話カテゴリの平均点を下回る。要は、この端末のデザインが気に入らなくても買っちゃうシチュエーションが存在している、ということだ。おそらく量販店の店頭等で、安価に販売された、などではないだろうか。
レスポンスや、文字入力のストレスは減ったようだが、ソフトウェアのバグが多いという指摘がある。ちょうど、Panasonic とのソフトウェア基盤統合時のゴタゴタに巻き込まれてしまった端末という漢字なのだろうか、と推測してみたりした。
というわけで、意外といい成果だったんじゃね?
という風に思いました、という結論にしたいと思う。
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