惰天使ロック

原理的にはまったく自在な素人哲学

「便所飯」の思想的原点は坂本龍一だった

2011年09月20日 | 他人の狂気
最近またどこかで新聞記事になったらしく、いまtwitterを「便所飯」で検索するとたくさん呟きが出てくる。

何しろそうした存在も行為の動機にしても謎めいているから、昔に話題になった時もこのblogで考察してみたことがあった。結局は事実として確定的と言えるようなものが何もないし、自分でも身に覚えがないから、いくら考えてもこれといった結論は何も出なかったのだが。

体調が悪くて休業しているついでに、もう一度考えているとふと気づいたことは、仮に「便所飯」の人が実在したとすれば、その人はたぶんそうなる以前には「食堂でひとりで飯食ってるやつ」に対して侮辱的とは言わないまでも否定的に眺めた経験を持っているのではないかということである。で、いざ自分がそうせざるを得ない立場になってみると、誰よりも自分自身に対してばつが悪くて食堂では飯が食えなくなり、人目につかないトイレの個室でこそこそ食うようになったのではないか。

この見方が正しいとすれば、つまり「一緒に食事をするような友達がいないことは人として恥ずかしいことだ」というような、わけのわからぬ考え(町沢静夫氏が名づけたところの「ランチメイト症候群」)を、誰が持たなくても便所飯の人は強く持っているはずだということになるわけである。

そうするとその奇妙な考え方はどこからどうして出てきたものか、問題はそれを考えることの方に帰着することになる。実際、改めて調べてみると、Wikipediaなんかでも現在は「便所飯」の独立した項目はなくなって「ランチメイト症候群」の一項として扱われているようになっている。

調べているとこんなことを書いているblogがあった。

あるインタビューで坂本龍一が“学生の時に、学生食堂で一人でご飯食べてる人いるわけ。男とかで。きちんと食べてるんだけど、それを見ると僕、すごく不愉快なのね(笑)”なんて言ってました。ある番組では、ダウンタウンの松っちゃんが“一人で飯考えられへん!!”と叫んでいたことも。
球バカ日誌「ランチメイト症候群」Jan.23,2007

これらの発言が事実で本心だとすれば、ランチメイト症候群というのは別にいまのワカモノに特徴的な思考でも何でもないことになる。松本人志はわたしと同い齢だし、坂本龍一に至ってはさらにひと世代前の人である。まあ松っちゃんは漫才師だから、意図してウケそうなことを言ったのかもしれないとしても、坂本龍一の方は、こいつは何を言ってんだと思ってさらに検索してみたら、その「インタビュー」というのがあっさり見つかった。この発言は実は相当の問題発言と見なされて、「ランチメイト症候群」に関連してネット上の言説では頻繁に参照されてきたようなのである。

   坂本 うん、うん。あのね、
      ‥‥そう、そう。
      結局、その、人んちのことは
      見たくないじゃん。
   糸井 うん(笑)。
   坂本 人んちにお邪魔してさ、
      よくアルバムなんか見せる人いるけど、
      あれって無遠慮じゃない?
      人に対して。
   糸井 うんうん。
   坂本 他人に対する、何ていうのかな。
      境がわかってないっていうか。
      それに近いものを感じる。
   糸井 うんうん。ジャージはね(笑)。
   坂本 ジャージに近いのは、
      学生の時に、学生食堂で
      一人でご飯食べてる人いるわけ。
      男とかで。きちんと食べてるんだけど、
      それを見ると僕、
      すごく不愉快なのね(笑)。
   糸井 ああー。
   坂本 それはやっぱりさ、
      その、自分の生活みたいなのを、
      露出させてる感じがするわけ。
   糸井 見せちゃって。
   坂本 それは、他人に対して
      無遠慮だなと思うのよ。
   糸井 あ、その感覚はすごいね。
   坂本 わかるでしょ? でも。
   糸井 わかるけど、俺は、
      それは許すからさ。
      何でも許すから。
   坂本 許しちゃう?
   糸井 つまり、見せてはいけないはずのものを、
      見る側の気持ちにもなれよ!
      ってことでしょ?
   坂本 そう。見たくないのに、
      強制的に見せられてる。
      他人の気持ちも考えてくれと。
   糸井 それは、トイレを開けちゃったらね、
      中にいた人が、
      「キャー!」って言うのと同じ。
      ちゃんと鍵かけてくれよ、
      俺の方がやだよって思うのと、
      同じことですよね。
   坂本 それそれ。
   糸井 それは、何だ?
   坂本 でも、ジャージってその人の生活を
      完全に感じさせるものなんで。
   糸井 そうですね。個的空間だよね。
   坂本 そうでしょう?
   糸井 それを俺に見せるなってことだよね(笑)。
   坂本 そんな格好して、
      外に出てくるなっていう(笑)。
   糸井 それは、非常にエロスに
      関係あることだろうね。
   坂本 そうね。
   糸井 出して歩くなよみたいなことね。
   坂本 そうです。丸出しじゃないか(笑)!
   糸井 丸出しじゃないか(笑)。
      で、丸出しにしないっていう
      約束があるから、
      俺は、見たいんじゃないかって
      怒ってるわけだよね。
   坂本 そうだよね。
   糸井 エロティックの話ですね。
   坂本 ですね。

   ほぼ日刊イトイ新聞Nov.16,2006
   「矢野顕子について坂本龍一くんと話そう/第3回 ジャージを履いてはならぬ」より抜粋。

ちょっと叱られそうなくらい長い引用になってしまったが、ここまで引用しないとこの坂本龍一発言は誤解されるよりしょうがない感じがするので、ご了承いただきたい。それにしても糸井重里はフォローがうまいw これを「インタビュー」と言ってはいけないと思う。「対話」もしくは「対談」だと思う。

何にせよわたしは、これからは坂本龍一の曲が聞こえるたびに便所飯を連想することになりそうである。やだなww
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