旧・フレアバーテンダーCATMANの今日の一杯

全日本フレアバーテンダー協会会長の旧ブログです。新ブログはcatman.bar-nemanja.com です。

本日紹介のカクテル「SPACETIME MARTINEZ」!!

2013年05月04日 | カクテル紹介

本日は、カクテル・マニア様向けに先月創作したミクソロジー・カクテル「スペースタイム・マルチネス(SPACETIME MARTINEZ)」を紹介致します

マルチネスは、1849年のゴールドラッシュ時代の金の採掘者のお祝いカクテル説、1860年のジェリー・トーマス氏考案説、1874年のマルチネスのJULIO RICHELI'S SALONのジュリオ・リッチェル氏考案説の3つの説があります。

マルチネスのレシピは現在様々ですが、ジンをベースにスイート・ベルモット又はドライ・ベルット、マラスキーノ又はトリプル・セック、オレンジ・ビターズ又はアンゴスチュラ・ビターズを加えて作るカクテルとなっております。

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写真上は今回紹介の「スペースタイム・マルチネス(時空マルチネス)」です!

発泡性のあるマルチネスに黄金の球体が無数に浮かぶカクテルです。

マルチネスのエピソードとして一番古い"1849年のゴールドラッシュ時代のお祝いカクテル説"とマルチネス説で一番有名な1860年の"ジェリー・トーマス氏考案説"のレシピを融合させ、最先端ツールと技法でお作りし、ソーサー型シャンパン・グラスに注いだ一杯となっております。

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1860年にマルチネスを考案したジェリー・トーマス(JERRY THOMAS)氏はカクテル史に残る偉大なアメリカのバーテンダーです。

1830年に、ニューヨーク北部のSACKETS HARBORで生まれて、10代後半にニュー・ヘイブンのバーでバーテンダーとして働き始め、1847年(17歳)には有名なホット・カクテル「トム&ジェリー」を考案しました。

1848年にアメリカ西部では金鉱が発見されゴールドラッシュが始まりました。

トーマス氏は、一攫千金とバーテンダーとしての大きな活躍を求めてカリフォルニアに移動して、バーテンダーとして活躍しながらも、金鉱脈探しの開拓者としても働いていおりました。

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1849年にフレア・バーテンディングの原型ともなる炎を流しながらメイキングする伝説のカクテル「ブルー・ブレーザー(BLUE BLAZER)」をサンフランシスコのエルドラド・サロンで考案します。

1851年にトーマス氏は、ニューヨークに戻りサロン・バーの経営を始めます。

その後は、セントルイス、シカゴ、サンフランシスコ、チャールストン、ニューオーリンズなどの有名ホテルのバーでチーフ・バーテンダーを務めました。

トーマス氏のスタイルのマルチネスの考案は、1860年にサンフランシスコのモンゴメリー・ストリートにあるオクシデンタル・ホテルのバーに勤務(当時アメリカ副大統領より収入があったとの事)している時に作ったといいます。

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マルチネスに旅立つ二日酔いのお客様より"何か効きそうな一杯を"というオーダーで作ったカクテルが「マルチネス(MARTINEZ)」です。

1862年に全米初のカクテル本の著者となり「How To Mix Drinks or The Bon-Vivant's Companion」を出版し、1887年にはトーマス氏が考案した写真上のマルチネスのレシピをカクテル本で発表しております。

それによると「ボカーズ・ビターズを1dash、マラスキーノ2dashes、スイート・ベルモットをワイングラス1グラス(4oz=120ml)、オールド・トム・ジンを1ポニー(1oz=30ml)をシェークして大きなグラス(現在のマティー二・グラス)に注ぎ、レモンスライス1/4片を添える」というレシピです!

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私が創作した「スペースタイム・マルチネス」の黄金の粒の正体は、"1860年のマルチネス・スフェリフィケーション"です!

上記のトーマス氏のレシピをレデュイール(REDUIRE)という煮詰める技法で、総量5ozのカクテルを煮詰めてアルコールをとばし、マルチネス・レデュイール(濃縮なマルチネス・シロップ)を作ります。

マルチネス・レデュイールにミネラル・ウオーターを加水し総量5ozに戻し、アンゴスチュラ・ビターズ(BOKER'S BITTERSの代用)を1dash、マラスキーノ2dashesを加え、元の総量に戻し(水で割っても味が薄い感じはあまりしません)、アルギン酸ナトリウムを加えてミキサーにかけます。

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アルギン酸ナトリウムは、液体に溶かそうとするとママコ(大きな固まり)となり、スプーンで攪拌してもなかなか溶かす事は出来ません。

アルギン酸ナトリウム水溶液の作り方の基本は、液体にアルギン酸ナトリウムを加え、容器にラップして一晩冷蔵庫で保存してからかき混ぜると溶けます。

もっと早く混ぜる場合は、プロペラ型攪拌機や、ブレンダー等の攪拌能力のあるものを使用します。

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ミキサーで攪拌後、出来上がった"1860マルチネス・ゲル"は、適度に空気抜きし白い濁りをとります。

濁りが取れたらキャビア・ボックスのゲル容器にゲルを流し込みます。

写真下が「キャビア・ボックス」です!

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このキャビア・ボックスは、最大まとめ96個のスフェリフィケーション(球体ソース)を落として作る事が出来る優れものです

注射器と接続しているボックスをゲル容器に被せてセットします。

ボックスから出ている96個の先端がゲルについている事を確認しましたら、写真下の様に注射器でゲルをまとめて吸い上げます。

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吸い上げたボックスは、乳酸カルシウム溶液の入った鍋やボウルなどの上に静かに運びます。

乳酸カルシウムの上まで持って来たら、注射器を押して、一気にゲルを落とします!

するとゲルはカルシウムに反応して、3ミリ程の粒のスフェリフィケーションとなります

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落とした粒は、1分程浸すと膜が厚くなりゼリー状になってしますため30秒程で引き上げます!

引き上げたスフェリフィケーションは、水で洗い乳酸カルシウムを落とします。

写真下が、ジェリー・トーマス・スタイルの「マルチネス・スフェリフィケーション」で、タイム・カプセルとゴールドラッシュ時代の金をイメージしております!

出来上がったマルチネス・スフェリフィケーションは、ソーサー型シャンパン・グラスに入れておきます。

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グラスに注ぐカクテルは、1849年の説のマルチネスのアレンジです

ドライ・ジンをベースにソーテルヌ、スイート&サワー・ミックス、オレンジ&マンダリン・ビターズ、ツイスト・オブ・レモン、CO2を加え、写真下のカーボン(炭素)シェーカーで発泡性のあるショート・カクテルとして仕上げます。

1849年、ゴールドラッシュ時代、金の採掘者が金を掘り当て、バーにてシャンパンを注文したところ"シャンパンはありませんが代わりにジンとソーテルヌで作ったマルチネス・スペシャルというものはいかがでしょうか?"と勧められたと言います

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金を掘り当てた採掘者は、希望していたシャンパンを飲む事が出来なかったのですが、このカクテルを大変気に入り、財を手にして有名になった採掘者が様々なバーでマルチネス・スペシャルのレシピを伝えたと言います。

今回私は、当時叶えられなかったシャンパンの注文と、気に入ったレシピを融合した様な表現で発泡性のあるマルチネスを作りました。

時空を表現したマルチネスになります

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1849年と1860年のマルチネスを融合させた最先端アレンジの一杯です!


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