じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

じいたんとバイアグラ談義。

2005-06-12 11:09:40 | じいたんばあたん
とある日曜、かかりつけ医がお休みだったときのこと。

何の用事で出かけたか忘れたのだが
日曜開いている、近所のクリニックへ出かけた。

そこは、医師はひとりなのに、色んな科を標榜している診療所で、
普段はあまり利用しないのだが、
(標榜科目が多い病院は、基本的にあぶない)
結構そのクリニックは、流行っている。
客層も、なんていうか普通の病院とちょっと違う。
すこ~し怪しい感じの患者さんが多い。(笑)
診察してもらうのはイヤだが、待合室にいるのは結構楽しいのだ。

じいたんとばあたんと私、三人で待合室にいて、
ふと、目に入った張り紙があった。

「バイアグラ処方します。
 薬局に行かなくても受け取れるよう、医師から直接お渡しします」

そうか~。ここ泌尿器科もあるしなぁ。
と思ってふと横をみると、
じいたんもどうやらその張り紙を読んでいる様子。
だけどじいたん、バイアグラ知っているのか?

ためしに話しかけてみる。
「じいたん、バイアグラだって。
 私、病院で処方しているのん、初めてみたよ」
ちょっとドキドキ…。悪ふざけが過ぎたかな?

じいたん、あっさりと
「そうだなぁ。おじいさんも初めて見たよ。
 なかなか効果があるそうじゃないか。」

お、じいたん知っているのか。
と私が思っていると

…じいたん、何故か堂々と言い放った。

「まあ、おじいさんには、必要ない薬だがね。」


…じいたん。あの。

それ、どういう意味なんでつか?

うひー。突っ込みたい。
突っ込みたいけど。
怖くて突っ込めないヘタレな私(笑)
横目でこっそり様子を伺うと、ちょっとお茶目な笑いを返してくれた。

たま「…そうなんや(汗)」

じい「そうだよ、お前さん」

たま「…じいたん、かっこいいね」

じい「当然さね。おじいさんは、おばあさん一筋だ。
   お前さんも、こんなものに頼らなくても良いように、
   健康第一で身体を大事にしなさい。」

いやあの、女性は使わないんだよ、じいたん…と思いつつ、
結局、どっちの意味かわからずじまいのままだったのだが。
あのときのじいたんは、いろんな意味で、かっこよかった。

ナイスでつ!じいたん。流石は私のじいたんだ!



ひ孫来訪の喜びの中、砂を噛む。

2005-06-12 06:28:56 | ブラックたまの毒吐き
※注意※「せめて無害でいてくれ」Part2です。復帰第一号の記事が「ブラックたま」カテゴリであること、どうかお許しください。とりあえず仕上がった記事からUPします。


事故の翌日(水曜日)のこと。
前夜の救急病院で頂いた紹介状を持って、新たに受診した。
診断は思ったよりは厳しいものだった。
「介護なんて論外。とにかく安静に」との医者の言葉。

病院を出て薬局で薬をもらったのが夕方。
事故のこと、じいたんには伏せておくつもりだったのだが、
首のコルセットや足の包帯は隠しようがないので、
やむなくじいたんに電話した。

「2、3日は来なくていい」と、じいたん。
「たまちゃんが良くなるまで、おばあちゃん、ちゃんと待っているからね」
と、ばあたん。

もちろんそんなことは不可能なんだけど、
気持ちが嬉しかった。


でもその直後、叔母の夫から電話。
生まれたてのひ孫と孫娘(=私の従妹)を連れて
車で祖父母宅へ向かっている途中とのこと。
しかも、直接連絡を入れてないから、よろしくね~!との内容。
事故に遭ったことを伝えても、意に介さない。

こちらの都合を全く考えない無神経さに、
いつものことながら、腹がたった。
だが、確かにこのチャンスを逃すのはもったいない。
第一、祖父母二人で、彼らの来訪に対応するのは無理だ。
菓子や飲み物を仕入れ、すぐに祖父母宅へ向かった。

(じいたんばあたんの生活には、夕方のリズムがとても大事である。
 夕方の生活リズムが崩れたら、翌日以降まで響いてしまう。
 ましてや介護のかの字もする気がない来客だ。
 首が痛いなどと言っていられなかった)

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それでも、

そんなささくれだった気持ちが吹き飛ぶくらい、

赤ちゃんは、まぶしく、可愛らしかった。
そして、命を産み落としたばかりの従妹は
今までで一番、美しかった。

生まれたての命が家中を照らしている。
4世代全部集まった、祖父母宅の空気は、暖かで。
じいたんとばあたんの、とろけそうな、幸せいっぱいの笑顔が嬉しかった。

何より、この日のために私は、がんばってきたのだ。

じいたんばあたんの状態を、なるべく良い状態に維持して
待望のひ孫と無事、会えるように…
例えて言えば、わたしにとっては
「マラソンの途中の、目印の電柱」のようなものだった。

だから、赤ん坊と従妹の来訪は、本当に、嬉しかったし、
こころから祝福する気持ちで、ささやかな茶菓子も用意して…。

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ここまでで話が終わっていたら、良かった。
いつもの、叔母の夫の愚痴にも、さらっと笑顔で付き合って
まあまあましな気分のまま、私が先に祖父母宅から辞去するはずだった。

だが、…その後。
事故直後の私の身体を気遣って、仕事帰りに迎えにきてくれた、私の彼氏に、
(そして、授乳中かもしれないと
    玄関にも入らないよう配慮した彼氏に)
叔母の夫は、挨拶ひとつしなかった。

祖父が彼氏に「ありがとう、ありがとう、たまを頼みます」
と、手を握って涙ぐんでいても、
少し離れた後ろで棒立ちになったまま、
玄関の外へ出てこようとさえしなかった。

私の彼氏は、叔母の夫の何倍も、多忙を極めるスケジュールをやりくりして
普段から、介護の手伝いに通ってくれている。
・・・彼=叔母の夫が、コドモ以下のレベルで介護を傍観しているツケを
他人である、私の彼氏が穴埋めしてくれているのだ。
なのに、挨拶ひとつなしっていうのは、非常識にも程がある。

(当の彼氏は、
 「つまらない人にペースを乱されてはいけない」と
 私を諭すだけだったけれど。)

腹立ちをぐっとこらえて、
せっかくのいい雰囲気と、じいたんばあたんの幸せを壊さないように、
『言いたいことは明日言え』と心の中で唱えながら、
祖父母宅を後にするのが、精一杯だった。

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「たまちゃん、ご苦労様です。首、大丈夫?」
なんて言葉は、いらない。
まごころと行動の伴わない言葉なんか、いらない。

わたしは
アンタのためにがんばって来たんじゃない。
じいたんとばあたんに、少しでも生きがいを感じて欲しい、
そのために、他の全てを甘受しているだけなんだ。

祖父母への私の気持ちを、とことん利用するのだけは、やめて。
こころが、ささくれだつ。

せめて、無害でいて。
他は何も期待してないから。

近況報告です。再開します。

2005-06-12 02:14:32 | Weblog
先日は、大変お騒がせいたしました。

おかげさまで、大事には至らず、ゆったりと養生しています。

事故の後、こんなことでいいのかと思いつつも
痛みでどうせ何も出来ないし…と言い訳しながら、
数日、ひたすら眠り続けて過ごしていました。

介護も最小限。PCにも殆ど向かわない。
保険会社も警察も後回し。
病院に行って、とにかく、寝る。寝る。寝る。
そんな毎日を送っておりました。

でも。
眠っていても、ほとんど暴力的に湧き上がってくる、この衝動。
痛みをおしてでも書きたいという、すさまじい欲求。
まるで少年が思春期に体験するであろう、性のめざめのような
圧倒的な力に勝てず、今PCに向かっています。

「じいたんばあたん観察記」再開します。
養生に努めるべきという考えは、放棄します。

今後とも、どうぞよろしくお付き合いください。