じいたんばあたん観察記

祖父母の介護を引き受けて気がつけば四年近くになる、30代女性の随筆。
「病も老いも介護も、幸福と両立する」

一番大事な人に、一番無理を

2005-06-07 01:28:02 | 介護の周辺
今、PCに向かう私の後ろで、
彼氏は、穏やかな表情でいびきをかいています。

それもそのはず、
この一週間、会社での業務のほかに、
公演だの研究会だのにずっと出っ放しだった彼氏。

そんななか、
彼氏は昨日も、そして今日の仕事帰りも
祖父母宅へきてくれたのだ。


昨日は、じいたんの入浴(1Fにある大浴場に二人で行くのだ)
にお付き合いしてくれた。
私が用事をしている間、ばあたんとしりとりしながら
じいたんの話を聞いてくれた。
そして、体調の悪い私を、いつもより早い時間(8時過ぎ)に
祖父母宅から連れ帰り自宅まで送り届けた。
そして自分はといえば、原稿を作る参考文献が実家にあるので、
そのまま自宅へと二時間かけて帰っていった。

今日は、仕事の帰りに、おいしいスイートポテトを手土産に
(ちょっと洒落たやつでした。
 リンゴの形をしていて、リンゴの実が入っているんです)
祖父母宅へふらっと立ち寄ってくれた。

じいたんと間一髪だった雰囲気を和やかに戻し、
一緒に四人で大岡越前&水戸黄門を観ながらたわいもない話をし、

やはり私を連れて帰ってきた。
帰り道、二人で飲もうってはしゃいで。

それなのに
私は、祖父や無責任なある親戚へのいらだちを、どうすることもできず
今日片をつけないと身動き取れなくなると思い、
せっかくコンビニでお弁当買ったのに、それを温めてあげることひとつせず
問題の親戚と1時間、そして伯父へ報告30分、電話していた。
その間彼は待っていてくれた。

電話が終わって、振り返ると、彼氏は寝ていた。
疲れているのは当たり前だ。こんな過密なスケジュールで。
少し寝かせておいて、
メールの返信を認めて。

もう一度振り返ると、布団も掛けずに正体なく眠っている。
彼氏の寝顔は、本当に本当に嘘がなくて、きれいなのだ。
泣けてきた。

この人が、もし過労で早死にしたらどうしよう。
この人が、もし愛情不足で死んでしまったらどうしよう。

彼氏が、ふと、目を覚ました。
「たま、ここにおいで」
腕を出してくれた。

でも明日のご飯の支度だけでも整えてあげたいから、
猫みたいにすこしだけすりすりしてから
彼の傍を離れた。

今でも続く、この安定した寝息。
穏やかな寝顔。

眠っているときにしかいえないから
いっぱい、いう。

「大好き。大好き。大好き。
 ほんとうに、好きだよ。
 無理ばかりさせて、本当に申し訳ないけど
 一番好きっていうのだけは、どうか分かって」

泣きそうになりながら、彼の寝顔をなでる。
それしかできない、臆病なわたし。
いつか、彼の献身的な愛情に見合った何かを、返したい…