前話の関連話なので、前話から読まないとわからないかもしれませんが・・・
主人はできていないのに褒めるのはよくないという考え方。
じゃあ楽屋口で、あの時、あなたなら何とKに言うの?
あなたは私に任せていなくなったよね・・・逃げないでよねとここからは夫婦舞台裏話。
発表会終了後、
主人が私に「アスペルガー症候群って知ってるかい?」ときく。
「もしかしたら、Kは・・・かもしれない」
問題定義だけして、自分は早々に寝室に向かう。
気になるではないか。
知的障害がない発達障害? 学校や社会に適応できない? 対人関係障害?
明け方までインターネットで調べてしまう。
Kはとても照れ屋なところがある。気分転換がうまくないと思っていたが、
よくも悪くも普段の園の日常があらわれるといわれる生活発表会。
早速、集団生活の中のKの様子を改めて保育士に問う。
先生にお母さん心配しすぎですよと笑って励まされる。
主人に伝える。
「アスペルガー症候群であるかどうかはそんな早い時期にあらわれないよ。
だから、違いますよというのがある意味、正解なのだ」
なんて嫌な人。気になるのではないか。
「ADHDとアスペルガー症候群 この誤解多き子どもたちをどう救うか」主婦の友社。
「親とともに乗りこえる問題行動」小学館。を読破する。
2歳の息子が発表会で機嫌が悪かった。だけの話であるが、
発達障害を知る機会となった。
アスペルガーをきっかけに、ADHD、自閉症、場面かん黙症など知識は拡がった。
知ると同時にもっと認知されなければならないとここに記している。
健常児だから関係がないのではなく、
社会の認知度が高ければ、早期発見・対応に結びつく。
何より、発達障害児、健常児関係なく日々の育児に早速役立つ。
母親になってから、学生時代より勉強しているかもしれない。
育児書はもとより、アレルギー、アトピー性皮膚炎と子供の症状発生ごとに調べ尽くす。
保育園に預ける保護者でありながら、
「子どもがこっちを向く指導法」や「保護者とうまくいく方法」ひかりのくに株式会社
を読み、保育士視点も学ぶ。
学んだ知識はどんな分野でも基本であったり、応用展開可能なものばかり。
「保護者とうまくいく方法」は職場でのクレーム対応場面に活かしている(笑)
親になるということは、管理栄養士にも、教師にも、哲学者にもなりえるかもしれない。
人を育てるという尊い経験ができたことに心から感謝する。
秋の運動会と並ぶビックイベントといえば、お遊戯会。
時期的に年度末に開催されることから、
もしかしたら園での最大の年中行事かもしれないこの発表会。
保育園での日常の様子がその時如実に映し出されることから
今は「生活発表会」という名で開催されているメインイベント。
息子の勇姿を見るため、夫婦揃って土曜休暇を取得。
じぃじ、ばぁばにも声援依頼し、両家総出でKの出番を待ちわびた。
かぶりつきで緞帳を見つめる。
ついに、幕があがった。
瞬時にステージ上の息子を見つけ出す。
始まると同時に、息子が輪から外れ、背中を向けて座り込んでしまう。
どうした、K?!
みんなの輪からの距離は1メートル。
時折ちらっと見える息子の傷ついた表情にいてもたってもいられない。
舞台上の息子を抱きあげたい衝動をおさえながら、
誰か・・・先生、息子を抱っこしてあげてくださいとただただ祈る。
センターポジションを確保した我々。
左手隅にいる息子を茫然と見つめる私に、
右向きにカメラを構え、手を振り、呼びかける笑顔が視界に入る。
耳には音楽が届かない無音の長い時。早く終わってくれと願う。
ふと気がつけば、隣りの主人はいつの間にかビデオカメラをまわしていない。
あまりの出来栄えに、撮ることを止めた主人に腹が立つ。
Kが後々見たくない映像だと勝手に判断して止めたのだ。
何もできていないかもしれないけれど、この歳の発表会は一生に一度。
いつか笑って話せる日がくるんだから・・・残さなきゃ
と怒鳴りたいが、周りの迷惑になるので、カメラを奪い取って、間もなく終わった。
ようやく終わってくれた・・・
どうして? なぜ? 理由を探す。
息子は森の妖精。色々な動物に変身しながら妖精たちが遊ぶという演目設定。
発表会前、みんながワーッとなっている時、Kが固まってしまうと聞いていた。
ノリ遅れるのか・・・みんなの勢いにひいてしまうのか・・・
手がかりを育児日記に探す。
お馬さん(に変身)が苦手なようです。お馬さんは固まってしまう、とある。
発表会前日、出来栄えも気になるので、息子にきいた。
どんなことするの? お馬さん? お馬さん、ママにみせて。
イヤだと言う。ママ、お馬さん、どんなのかわからないから、教えて。
私がしつこくお願いするので、かんねんしたのか息子が見せてくれた。
それは、一瞬だった。私が、あ!と思った瞬間、息子が馬を止めてしまったからだ。
え、短くてわかんなかったよ。もうちょっと、みせて。
お願いしたが、もう二度と見せてくれなかった。
今までの原因はこれだと。
パッカパッカと、同じ右足を踏み込むギャロップ(スキップ)ができなくて、
微妙に左足まで出てしまって止まってしまうのだ。
翌当日、心配だったので、「楽しんでおいで」と送り出した。
カエルさん、ゾウさん、ちょうちょさん、とんぼさん、他の色々な動物に変身できるのに、
馬ができないからといって、まさか本番すべてを拒絶するとは・・・
きっと当日を迎えるまでに自信を失っちゃったんだね。
自分にはできないって思っちゃったんだね。
だから、拒絶しながらあんな傷ついた悲しい顔をしていたんだね・・・
できなくても、それが可愛いのに!
パパ似でプライドが高い恥ずかしがり屋さんなんだから(笑)
出番が終わると楽屋口に保護者が迎えに行くことになっている。
出てきたKに何と言えばいいのか・・・?
みんな笑顔で出てきた。よくがんばったね~とか。上手にできたね~とか褒められている。
なかなかKが出てこない。
ようやく出てきたKをやっと抱きしめてあげることができて、
私は「よく最後まで泣かずにいたね」と言った。
もっと何かしら言いたかったが、
注文になってしまうようで、これ以上傷つけてしまうようで言えなかった。
あの時の一言は重要だったような気がするだけに、
あの時、たった一声、なんと言えばよかったのか・・・
その一言で子育ての結論がでるわけではないのだが、
たくさんの選択肢の中から何かを瞬時に選んでいく作業に、あぁ 子育てって難しいなと。