マタニティウェア通勤2日目の朝、通勤電車で席を譲ってもらった。
感動した。
座りたい!毎日願っていたことが叶ったそのひととき、私は優しさに包まれ、感謝に満たされる。
現実は甘くない。帰りは、もちろん立って揺られて帰る。
思い出しても、つわり期とにかく辛かったのが通勤電車である。
つわりの症状は、込み上げてくる「吐き気・ムカムカ・イライラ」様々ある中、
「乗り物に酔いやすい」も代表的な症状らしい。
朝の満員電車は座れない。
優先座席前に立つもののまだ妊婦とわからないので、譲ってもらえない。
数少ない優先座席への望みは捨てて、運がよければ途中の駅からでも座れるかもと普通座席扉より乗車。
扉付近通路は人と密着お腹がぺしゃんこになるので、嫌がられても車両真ん中まで突き進む。
つり革をつかむ為とはいえ、上に手を伸ばす行為は妊婦にはよくない。
椅子の手すりを持てる位置に立つ。
持てる位置に立てなくても、手を伸ばして何としてでも下にある手すりを持つ。
伸ばした私の手をロープ代わりに持たれかかる人がいる。
気になるが、この手は離せない。腹筋を使ってふんばることができないからだ。
電車の扉が閉まった瞬間、自分を励ましながら次の駅の到着をひたすら願う。
切迫流産と診断を受けての不安と吐き気の中での立って揺られて通勤。冷や汗ものである。
この妊娠初期が、一番、心から、ほんとうに、座りたかった時期。
乗り換え駅に到着。壁によりかかり、しゃがみこむ。
通勤に急ぐ足音を耳元間近にききながら、酔った体の回復を待つ。
その間に乗り換え先の電車が行ってしまう・・・悔しいがまた一本後の電車に乗ることにする。
このようなことを繰り返していたが、大丈夫ですか?と声をかけられたことはない。
善意で人に声をかけた為の遅延着証明なんて出ないし・・・
例え声をかけられても病気じゃないので、私も大丈夫ですと言い返すしかない。
互いに無駄なことはしていないのだが、いきかう足元を見ながら、ふとさびしくなる。
私も少し前まであんな速度で生きていたんだな・・・立ち上がり、乗り換え先へ向かう。
途中、サラリーマンが全力で走ってくる。間もなく発車する電車への駆け込み乗車だろう。
ふらふらして万一彼にぶつかってはいけない。おなかを守るように歩く。
帰りも、ベットタウンへ向かう電車は座れない。帰りぐらい座りたい。
いったん家とは反対方向に向かう電車に乗る。始発駅に向かい、座って帰るのだ。
つわり期の酔い対策であるが、座って帰れることができても、かかる時間の長さに体力を消耗した。
どうしても、どうしても辛い時は・・・
私、妊娠しております。申し訳ございませんが、お席譲ってもらってもいいですか?
そう声をかけるため、もしもの印籠用に母子手帳を鞄の中に入れて持ち歩いているが、
いまだ使えた試しはない。
朝の静まり返った電車で、私より先に乗っているどなたかを選んで声をかける勇気がない。
妊娠初期は妊娠していることが周囲にはわかりにくい。どうすれば?
揺られながら、考える。
交通機関妊婦指定席制。通勤朝用にあらかじめ事前に時刻指定で指定席を確保するというもの。
産科検診のある日等、職場を休暇する日もある。完全平日使用確約できないので、妊婦の都合で空席にしてはいけない。却下。
母子手帳提示座席交替制。誰を指名するかストレス有り。加えて、現在妊婦ではないのに妊婦を装った悪質な利用者の発生も考えられる。却下。
失敗が予想される馬鹿な私の失笑案とは異なり、世の中には賢者がいる。
「マタニティマーク」なるものがあるらしい。
妊産婦が交通機関等を利用する際に身につけ、周囲が妊産婦への配慮を示しやすくするものとして、厚生労働省が推進している。
らしい。どうやら国民に広く周知しているようだが、私は知らなかった・・・
まだ普及率は低いのかしら? では、そのマタニティマークを見て何人の方が席を譲ることができるのかな? 広く国民の関心を喚起することにしたとあるが・・・
カプチーノも厚生労働省の妊産婦にやさしい環境づくりを賛同、
弱小ブログながら喚起に参加。
みなさ~ん、マタニティマーク、可愛いよ! マタニティマークで検索して、見てみてね。
私もこのマークを身につけていたら!・・・?
妊娠中期に入り、ようやくおなかもでてきて、一目で妊婦とわかるように。
だが、相変わらず立って揺られて通勤中。
私のお腹をちらりと見て、席を譲ることなく新聞を大きくひろげるサラリーマン。
できれば私の主人のこんな姿は見たくない。
主人にはこんな時、男としてやはり立ってほしい。
私自身の意思で共働きを選択、時差出勤を心がけずラッシュアワーに乗っているので、「私は妊婦なんだから、席を譲ってよ」などと申し上げる資格などない。
ただ、席を譲ってもらったあの日、私の体を気遣う人の優しさに包まれ、あたたかかったなと・・・
マタニティマーク、シルバーマーク、障害者マーク、マークの周知だけでは心配なことがある。
サラリーマンもOLも学生も、みんな座って下を向いている。
眠っていたり、携帯やゲームをしていたり下を向いているので、マークが見えない。
広く国民の 何を 目覚めさせればよいのだろう・・・
これから生まれてくる我が子に、この世の光がやさしくあたたかいものであってほしい。
感謝で満たされますよう何を目覚めさせればよいのだろう・・・
※かくいう私も今まで下を向いていた側、恥ずかしながら私自身に向かっての言葉。どうか今までの悪行、お許しいただきたい。