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第3273話 令和版 蜘蛛の糸(中編)

2022年03月20日 10時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

泰広王とのお話がひと段落いたしましたところで、

お釈迦さまは池のふちにおたたずみになって、

水の面をおおっている蓮の葉の間から、

ふと下のようすをごらんになりました。

この極楽の蓮池の下は、

ちょうど地獄の底に当たっておりますから、

水晶のような水を透きとおして、

三途の河や針の山の景色が、

ちょうどのぞき眼鏡を見るように、

はっきりと見えるのでございます。

 

地獄の底におります罪人たちのようすも

以前とは異なってみえます。

一目で悪党だとわかるような人相の者は少なく、

彼らの多くが手になにやら四角く薄い奇妙なものを持っており、

何をするでもなく腰を下ろしているのでございます。

そばを見ますと、翡翠のような色をした蓮の葉の上に、

極楽の蜘蛛が一匹、美しい銀色の糸をかけております。

お釈迦さまはふと思い立ち、

その蜘蛛の糸をそっとお手にお取りになって、

玉のような白蓮の間から、

はるか下にある地獄の底へ、

まっすぐにそれをお下ろしなさいました。

 

罪人たちは目の前に蜘蛛の糸がおりてまいりましても、

その糸を手にとろうとする者はおりません。

そのようすをごらんになった泰広王が、

「みなネットなるものから情報を得て

地獄と極楽との間が何万里となくございますこと、

昔、犍陀多(カンダタ)という大泥棒が蜘蛛の糸をたどりのぼっても

極楽へたどりつけなかったことなど知っているのでございましょう。

元来、本名で在る時の彼らは大変おとなしく、

目立たぬようにしておりますから

誰かが蜘蛛の糸を手にとるまで、

その糸に手を伸ばす者などいないでしょう。

彼らはいつか自分たちの言い分が認められ、

『そなたは罪人にあらず。極楽浄土へ』

と電子の通知が届きますのを、電波の届かない地獄で

未来永劫待ち続けるのでございましょう。」

と言い残され、お帰りになりました。

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第3272話 令和版 蜘蛛の糸(前編)

2022年03月19日 10時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

ある日のことでございます。

お釈迦さまは極楽の蓮池のふちを、

ひとりでぶらぶらお歩きになっていらっしゃいました。

池の中に咲いている蓮の花は、

みんな玉のようにまっ白で、

そのまん中にある金色のずいからは、

なんともいえないよいにおいが、

たえまなくあたりへあふれております。

極楽はちょうど朝なのでございましょう。


そこへ泰広王がお越しになり、

「昨今の罪人にはほとほと手を焼いております。」と嘆きます。

何が泰広王を苦しめ、悲しませているのか、

お釈迦さまはおたずねになりました。

「インターネットと申しますものの普及によって

生前、本名ではない名をいくつも持ち、

名ごとの悪行をひとつにまとめあげるのに

大変な労力を要しております。

仮の名を持った彼らは標的となる者を

電子の言葉なるものによって攻撃し続け、

相手を自死にまで追い込むのですが、

本人にはまったく罪の意識なく、

むしろ彼らからするとその行いは正義であり、

殺めてなどいないと訴えます。

地獄行きの判決に納得できない彼らは

不服を申し立て、再審を求め続けるのでございます。」

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第2908話 絵本「ゆめミル・ルル」(編集後記)

2021年03月20日 09時45分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

大人の絵本?「ゆめミル・ルル」

最後まで ご拝読いただき、

誠に ありがとうございます。

 

この作品は、

妊婦時代を懐かしく思い出しながら

もう一度 たどりたく、かきました。

おさかなみたいな形から始まる

生命の神秘。

妊娠初期から出産までを描こうと

試みましたが・・・

生命の誕生過程を描いているだなんて

誰にもわからぬ 稚拙な仕上がり(笑)

 

お腹の中でおこる 生命の進化を描きながら

子を産み、育てることだけが すべてではない。

子どもだけではなく、作品やお花、

部下や後輩など社会的なものもあるだろう

という思いもあって、混沌としております(笑)

 

初めての絵本「おしゃれなネル」完成後、

すべての女性に エールをおくりたい

という思いで書いた2作目。(だから

1作目と登場人物名が似てる・笑)

これは、私にとって 必要な

通過儀礼 だったのではないかと思います。

 

※ それにしても ここ数日、

日々の思いを赤裸々に綴る話より

どれだけ 恥ずかしかったか(笑)

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第2907話 絵本「ゆめミル・ルル」(5・最終頁)

2021年03月19日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

夜が明けて。 

今日は、あたらしい一日。

あの日から にじいろじゃなくなった。

けれど、よくみると ルルに にている。

とても 小さくて とても やわらかい

生まれたばかりの きぼう。

 

もういちど さいしょから。

うまくできるか わからないけれど、

 

笑ってミル

育ててミル

味わってミル

信じてミル

とにかく、やってミル

 

どんなゆめミル?

あしたをゆめミル

わたしは、わたしを

生きてミル

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第2906話 絵本「ゆめミル・ルル」(4)

2021年03月18日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

みると、せなかに

ちいさなつばさが はえているではないか。

にじいろの とりさん?

 

ルルは 空をとべない。

いっしょに くらしていけるかしら?

なにをすれば 笑ってくれるのかしら?

なにをしても 泣くので

 

かんがえてミル

ためしてミル

祈ってミル

あきらめてミル

いちど ぜんぶ こわしてミル

 

すると、あんなに 重たかったのに

すーっと かるくなって・・・

ルルは 気をうしなうように ねむった。

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第2905話 絵本「ゆめミル・ルル」(3)

2021年03月17日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

朝起きると、手が はえているではないか。

にじいろの トカゲさん?

とても元気に うごきまわっている。

なんだか ルルも うれしくなる。

 

ずっと どこにも行かず、

いえの中で じっと していたかったのに

外に 外に 出ようとするので

ルルは ひさしぶりに とびらをあけて

 

一歩 ふみ出してミル

歩いてミル

走ってミル

歌ってミル

踊ってミル

 

汗をかく気持ちよさに 心地いい風。

ルルは いっぱいごはんをたべて

ぐっすり ねむる。

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第2904話 絵本「ゆめミル・ルル」(2)

2021年03月16日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

次の日、ルルが すいそうをのぞきこむと

足が はえているではないか。

にじいろの おたまじゃくしさん?

口をパクパクさせて ルルに近づいてくる。

ルルは にじいろの ふしぎないきものの

ことが だいすきだった。

 

喜んでミル

楽しんでミル

 

でも、コトバが つうじなくて

どうしていいのか わからなくて

なんだか かなしくなって

 

怒ってミル

泣いてミル

 

なんたか きぶんが すぐれない。

こんな日は、はやくねるにかぎる。

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第2903話 絵本「ゆめミル・ルル」(1)

2021年03月15日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

ある日、ルルのもとに

にじいろの たまごがとどいた。

このたまごから いったいなにが

生まれてくるのかしら?

 

たまごに 耳をあてると、

うみの音が きこえてくる。

にじいろのたまごは とてもきれいで

ルルは ひさしぶりに

 

笑顔をつくってミル

話しかけてミル

香りをかいでミル

さわってミル

なでてミル

 

すると、たまごがわれて

中から ふしぎないきものが あらわれた。

にじいろの おさかなさん?

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第2823話 絵本「おしゃれなネル」編集後記

2020年12月25日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

私にとって 初めてのフィクション。

絵本といいつつ 絵のない

絵本(テキスト)「おしゃれなネル」

いかがでしたでしょうか?

 

ネルは 子どもの頃

お父さんやお母さんがしてくれたことを

出会った人に していきます。

親から子へ 子からお友達へ

子から 愛する人へ・・・

つながっていけばいいなと思います。

 

人生は、偶然の 出会いや流れの中で

得ていくものの方が多い気がいたします。

そんな思いで (春に)書きました。

 

記念の 区切り番号で公開しようか

年末を飾る カウントダウン話にしようか

迷いましたが、今(present)にいたしました。

素敵なクリスマス・プレゼント(とまではいかなくても)

あたたかいものを お届けできましたでしょうか。

 

至らぬところの多い 素人作品です。

どんな反応があるのか

怖くて、恥ずかしくて・・・

公開を ためらいました。

それでも 誰の目にも触れず、

存在しないもの となるより

在るものとして 残る勇気を選択しました。

お気に召しましたら 幸いに存じます。

 

※ 第2650話 売れるものは?

  第2768話 よもや、よもやだ 関連話。

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第2822話 絵本「おしゃれなネル」(最終回・13~15)

2020年12月24日 08時00分00秒 | 創る(フィクション・ノンフィクション)

クリスマス 特別企画?

絵本「おしゃれなネル」

13頁(⑬)~15頁(⑮)です。

 

ネルが あるいていると、

いっぴきのイヌが まえから あるいてくる。

「ぼくのなまえは、ネル。きみのなまえは?」

「わたしは、メル」

「なんだか ぼくたち にてるね」

ネルとメルは ともだちになった。

 

「じつは、ぼく あたらしい いえを さがしているんだ」

「それなら このまちに すてきな いえがあるわ」

メルは このまちに どんな どうぶつたちがいるのか

どんなふうに せいかつをしているのか

いろいろ おしえてくれた。

ネルは おれいがしたくて

メルのために パーティーをひらこう とおもいついた。

 

ネルは リスさんに 

じょうずな 木の実のあつめかたを おしえてもらった。

ネルは ウサギさんに 

きれいな 花のさくばしょを おしえてもらった。

ネルは ハクチョウさんに 

じょうずに さかなをとる方法を おしえてもらった。

ネルは シカさんに

おいしい やさいのあるばしょを おしえてもらった。

 

ネルは おとうさんとおかあさんが してくれたみたいに

へやに きれいな花を かざり、

メルに おいしいごはんを つくった。

つき と ほしの かがやく よるに

ネルとメルは おとうさんとおかあさんみたいに わらった。

 

「ネル、きょうは すてきなパーティーをありがとう。

ネクタイにポケットチーフだなんて あなたは いつも おしゃれね」

「これ? ぜんぶ ともだちからもらった プレゼントなんだ」

ネルは このまちにくるまでに出会った

となりの森にすむ みんなのことを メルにはなした。

「そうだ、メル。あした みんなと ピクニックにいこう。

ぼくのともだちを しょうかいするよ」

 

ライオンさんが おしえてくれた

みはらしいのいい すてきなばしょで

ゾウさんに おおきなにじを つくってもらおう。

あした いいてんきに なりますように。(完)

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