今日は油ヤシの話である。
飛行機がいよいよマレー半島にさしかかり、緑広がる大地を見て「ギョッ」とした。異様な大地がそこにあったのである。見るも無惨な大地、それもきちんと区画され、完全に緑をはぎ取られて向き出しにされた白い大地があちこちにあったのである。しかもそのはぎ取られた大地は子どもの時にやった遊び、地面に釘を立てあって囲い込み遊びをした跡のようだった。「いったい何なのだ!」
この半島全体に延々とこのはぎ取られた大地がたくさん見受けられたが、飛行機がクアラルンプール空港に着陸するため高度を下げて分かった。はげ大地にあった釘の跡のような点々は、ヤシの幼木だった。つまり大規模な油ヤシだけのプランテーションが全土に拡がり、むき出しの大地はジャングルをはがして油ヤシ林が増殖中だったというわけだ。はっきり言ってそれは・・・・自然破壊の恐ろしい光景だった。
考えて見て欲しい。たとえば日本の山すべてに生えている木という木が、ただ松だけだったとしたら。しかしこのマレーシアという国では現実に、ただ油ヤシの木だけで全土を覆おうとしているのである。根こそぎ掘り返され抹殺された森は、もう二度と再生出来ないだろうし、そこで生きてきた生態系もまったく変わってしまうだろう。やむなく草刈り機で雑草を刈るだけで、たくさんの植物の悲鳴が聞こえてくる気がする私には、恐ろしくアンビリーバブルな光景だ。
ここで油ヤシについて一言ふれておこう。油ヤシはパーム油とも呼ばれ、果肉からあるいは種子から大豆の7倍の油を産出する。種子はナッツとして食用になり、花穂を切って発酵させヤシ酒を作る。ココヤシより換金性が高いので、急速にその栽培面積が広がっている。
写真は全土がヤシ畑と化しているマレーシアの大地を高速道路上から撮影したもの。 (ケパ)