今日はとても気持ちの良い天気でした。
朝の自転車もご機嫌に…と言いたいところなのですが,先週土曜日から診療室にお泊まり中
今朝はJRでの通勤となりました。
この日記には診療に関することは書かないようにしているのですが,今日はジンとくるものがあったので書き留めておこうと思います。
数日前,Ⅰ型糖尿病の患者様が来院されました。糖尿病のⅠ型とは膵臓にあるインスリン産生細胞が先天的に退化して機能しなくなり,インスリンが出ないために糖尿病状態になるという,とても辛い病気です。
もう一つの糖尿病の型(Ⅱ型)は,生活習慣の乱れが引き起こしている(いわば自分に責任がある)わけですが,Ⅰ型は生まれつきのものです。比較的若年者の頃に発症される人がほとんどです。
その方が「インプラント」を希望して来院されました。お話を聞いてみると,糖尿病が発症したのは中学生の頃。その後,体は徐々に蝕まれ,失明し,週に一回の腎透析を受けるようになり,一年ほど前には軽い脳梗塞も起きてしまったという,決して軽くない状況です。
その方を看護なさっているのがお母様です。お母様はうちの患者様だったのですが,すでに自身がご高齢になっていらっしゃるにもかかわらず,毎週の透析に付き添いをし,目が不自由,半身が不自由なご子息の介護をなさっています。
お口の中を拝見すると失ってしまっている歯も数本あり,御本人は「インプラント治療」を望んでおられます。
しかし,インプラント治療とは体(骨)の中に異物(金属)を入れる治療です。
糖尿病の合併症が起きているということは,毛細血管も相当痛んでいることが考えられます。果たしてそのような状態で正常な骨の再生は起こるのか…
不安でした。
患者様にも「はい,しましょう。」と二つ返事でお引き受けできる状況でないことを説明し,患者様が通院されている病院(内科)の先生に問い合わせをしました。
好都合なことにその患者様が通院されている内科の先生とは,全国,いや世界的にも糖尿病では名の通った先生です。私も大学在籍時代何度か講演をお聞きしたことがあるという有名な先生。
問い合わせは失礼なことにお電話で,それも突然にしてしまったのですが,丁寧にご相談に乗ってもらいました。
その先生は何軒かの病院をハシゴして診察するような毎日で,かつそれだけの有名人ですから,講演なども多数で,それはもう私などからは考えられないほどの多忙な生活をされていると思われます。
しかし,にもかかわらず,私が患者様のお名前を口にしますと,なんと覚えていらっしゃり,技術的・一般的アドバイスだけでなく,「今,その方は脳梗塞をしたことなどによって,精神的にも少し参っていらっしゃいます。もし,お口の中の治療で前向きな希望的治療が出来るのであれば是非して差し上げてください。」とその患者様の精神状態まで配慮したお言葉を頂きました。
私は驚くと同時に胸が熱くなりました。実は病院での担当医は別にいらっしゃるのです。ですからここまでのご返答が即座に頂けるとは思っても見なかったこと,患者様の精神的状態にまで配慮したアドバイスが頂けたことなど感激でした。
それと同時に自分はすべての患者様にそこまでの配慮が出来ているだろうか…とはっとした瞬間でもありました。
診察を終えた帰りの受付で,お母様が「どうか息子をたすけてやってください」とおっしゃられる姿を見て「よし,自分の出来うるすべてのことをして何とかしてあげたい…」そう思わずにはいられませんでした。
少々個人的な情報が含まれる内容の日記ではありますが,詳細は伏せて書かせてもらいました。
明日から二日ほど事情により日記の更新はお休みします。また金曜日から再開します。
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