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~自費出版のススメ~

祝250セーブ 岩瀬仁紀の発するアルファ波

2010-06-19 | スポーツ
日本×カメルーン戦で最も輝いていたウィングの松井は、今所属チームがありません。また、その才能は未知数ながら注目を浴びる本田もロシアという地味な場所にいて、よりレベルの高いリーグへの移籍を望んでいます。この2名によるゴールの演出はワールドカップの国際見本市的な側面を思い出させられ、モチベーションの高い選手こそが活躍するという、サッカーはメンタルが重要なスポーツなんだと改めて感じ入ります。

野球は接触プレイがほとんどなく、対戦も小さなボールを巡って敵とある程度距離を保って戦うスポーツなので純粋に才能や調子がむき出しになることになります。ことさらに「チームのため」を説く人間が多いのも、サッカーほどには連携の必要のない野球にとっては、それが精神論に過ぎないことを知っているからこそなのかもしれません。まさに江夏のいう「野球はひとりでも勝てる」のです。

極端に比較してみると、下手でも気持ちと試合にフィットしたフォーメーションがあれば一発勝負なら勝てる可能性のあるサッカーと、実力が試合にしっかり反映される野球ということでしょうか。

得点数とアシスト数以外ほとんど数値化することのできないサッカーとは違い、大リーグで活躍する選手の所属チームの勝ち負けは報じず、個人の成績ばかりを取り上げるメディアを見ていても分かるように、個人記録は野球において重要でチーム成績以上に興味をかきたてるものなのです。

キャリア12年、ストッパーに回って7年で達成した岩瀬の250セーブという大記録が、ワールドカップの喧騒のなか、交流戦の消化試合という形で達成されました。あの藤川ですら140セーブであることを考えると、その記録達成の早さに驚きます。

岩瀬の、怪我をしない強靭な体とケア、常に責任のある立場での登板を求められる抑えという役割を果たす持続する気持ちの強さからは、ひとときのモチベーションとは違う、宗教的な静けさが伝わってきます。

地味なチーム、地味なカード、地味な時期での記録でしたので、サッカーに酔う国民にこの記録を大きく報じたりすると、きっとテレビ局に苦情がきたりするのでしょう。ただ日本人で3人目。少しはとりあげて労をねぎらってほしいものです。