発見記録

フランスの歴史と文学

ルーヴルをランスに(3)

2005-10-07 21:50:28 | アート・文化
アトランタの分館とも合わせ、ルーヴルの地方・海外への進出に批判的なのはLe Mondeに掲載されたDidier Rykner氏の≪L'avenir du musée du Louvre passe-t-il par Lens ?≫( 20.01.05 )、分館建設推進論は「二重の神話」に基くと指摘。
まずルーヴルには展示しきれないほど作品があるというのは正確でない。

Depuis les années 1980, le Louvre a doublé ses surfaces d'exposition, et une grande partie des collections ont émigré vers le Musée d'Orsay. Les réserves - nous parlerons ici de peinture, mais le raisonnement pourrait s'appliquer également aux autres départements - ne sont pas inépuisables. Aujourd'hui, les oeuvres très importantes non exposées sont rares.


(ルーヴルの展示スペースは80年代から倍増し、所蔵品(ここでは絵画の話になるが、他部門にも同じことが言えるだろう)の多くはオルセー美術館に引っ越した。非常に重要なのに展示されない作品は、今では稀である)

Second mythe, Le Louvre se montrerait chiche envers la province. Tout aussi faux. Du XIXe siècle à aujourd'hui, le Louvre a déposé des milliers d'oeuvres dans les musées de région. Ce sont eux, les vraies antennes du Louvre. Et pourtant, leurs fonds sont souvent mal exposés, faute de place et de moyens.


(第二の神話。ルーヴルが地方に貸し惜しみをするという。同様に偽りである。19世紀から今日まで、ルーヴルは地方美術館に何千もの作品を委託してきた。これら美術館こそ、真のルーヴル分館である。しかしスペースと予算がなく、収蔵品はしばしば十分なかたちで公開されずにいる)

例に挙がるLaval(Mayenne)のLe Musée des beaux-arts de Lavalの場合、今では閉館、建物は科学技術産業文化センターle CCSTI (Centre de Culture Scientifique, Technique et Industrielle)となり、所蔵美術品から
Portraitsのような一時展示がChapelle Saint Julien で行なわれている。

ランスに近いアラスやリールには立派な美術館がある。地方にも文化を身近にというなら、既存の施設をこそ援助すべきではないのか。

Pour la plupart des provinciaux - on peut le regretter, mais c'est ainsi - Paris est infiniment plus accessible que les autres villes. Quel bénéfice tirera un Bordelais ou un Toulousain de l'implantation d'une antenne à Lens ?


(大方の地方人にはー残念ではあるがそれが実情だー他の都市よりも、パリのほうが遥かに足を運びやすい。ランスにルーヴル分館を設けても、ボルドーやトゥールーズに住む人にどんな利益があるのか?)

ランスと同様ポンピドゥー・センター分館ができるメッスMetzも「ヨーロッパの十字路」と呼ばれるような位置にある。英国と「大陸」、欧州に顔を向けた美術館なのだろう。
ちなみにルーヴルやオルセー美術館を訪れるのは外国人が多い、これに対しポンピドゥー・センターは「35~40歳でパリかイール=ド=フランスに住む高学歴・有資格の女性」を典型とするという。(Bruno Racine
?Réinventer le Centre Pompidou?


学芸員の多くは分館づくりを喜んでいない。美術品の頻繁な移動はリスクを伴う。だが分館は話題になる。メディアを介した「イヴェント」événementの創出・・・。

リクネル氏にはご自身のサイトlatribunedelart.comにも関連記事
O.P.A. sur les musées
(美術館へのTOB(株式公開買付))がある。

拡大と変貌を続ける巨大な文化装置ルーヴル。その経営も国家からある程度自立性autonomieを得た。美術館は国とCOM(Contrat d'Objectifs et de Moyens )という契約を交す。COMは一定期間の「ビジネス・プラン」(ここを参照)で、2003-2005年の契約には地方の分館建設、本館外への委託、貸与、展覧会なども織り込まれている。(→ここ)


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