発見記録

フランスの歴史と文学

Les ~s 文学作品のタイトル

2005-10-12 21:43:10 | 本と雑誌
バルベー・ドールヴィイ Les Diaboliquesは『魔性の女たち』から今度の中条省平訳では『悪魔のような女たち』になった。とはいえ大抵のひとは『レ・ディアボリック』と原題で呼んでいたのではないか。このタイトルの響きはそれほどに妖しい力を持つ。

プレヴェールの自作コラージュと詩やアフォリズム、あらゆる形式のことばを配した「寄せ集め」の本Fatrasに、文学作品にLes ~sという題が多いのをねたにしたL’INTERVIEWがある。

―J’ai lu les Bucoliques, les Provinciales,

les Misérables, les Illuminés,

les Diaboliques, les Désenchantées,

les Déracinés, les Conquérants,

les Indifférents...

―私は読みました、『牧歌』(ウェルギリウス)に『プロヴァンシャル』(パスカル)、
 『レ・ミゼラブル』、『幻視者』(ネルヴァル)、
 『レ・ディアボリック』、『幻滅した女たち』(ロティ)、
 『根こぎにされた人々(デラシネ)』(バレス)、『征服者』(マルロー)、
 『無関心な人々』(モラヴィア)・・・

題だけは聞いたことのある有名作品ばかりだが、Les Désenchantéesは知らなかった、邦訳の有るなしもわからない。仮に『幻滅した女たち』と訳。

他にもLes Mandarins(ボーヴォワール) Les Possédés( 憑かれた人々、ドストエフスキー『悪霊』の仏訳) などが思い浮かぶ。

引用の最後が"..."なのは原文通り。≪プレヴェール風の列挙≫ inventaire à la Prévertが延々と続くので「以下略」にしたわけではありません。わずか8行の短詩、本当は最後の「落ち」まで引きたいところ。







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2 コメント

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まず、松本さん、復活おめでとうございます。 (写原祐二)
2005-11-14 16:35:26
まず、松本さん、復活おめでとうございます。

知らないうちにこんなに、たくさんの記事が読めてありがたいやら嬉しいやら・・・

でもコメントが付けられそうな記事はすぐには見つかりませんで、ここにでもと思ってみたものの、なかなか付ける内容がなくて苦労します。

Les ~が原題の書物でも、日本語で出版される場合、複数かどうかを厳密には言わない習慣があるようで、原題を見て驚かされる場合があるのも確かです。「悪の華」Les fleurs du mal なんかもそうでした。
ランボーの「イリュストラシオン」 Illustrations は冠詞が付いていないようで、これはこれで面食らいました。

これからまた見にくる楽しみのBlogが出来てうれしいです。
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ご無沙汰しています。写原さんも「ちょうど100... (松本)
2005-11-16 06:45:33
ご無沙汰しています。写原さんも「ちょうど100年前のフランス雑誌瞥見」http://geocities.yahoo.co.jp/gl/ecrifranoubli/
を始めてみえたんですね。以前からのこの時代へのご興味、日記として続けるには最適の枠組みを見つけられたのに感心しました。あ、これそちらにお邪魔してコメントするべきでしょうか。動かないのが癖になってしまって。

シムノンのPedigreeに対してモディアノはUn pedigree 微妙に違いがあるのかないのか。
朝倉フランス文法辞典(最近出た高価な改訂版ではありません)には 
Contes du lundi [月曜物語]. 書名は冠詞を用いる方が多い:Les Orientales[東方詩集].

http://www.toutsimenon.com/Menu/menu1.htm
で非メグレの作品リストを眺めてもCrime impuniはなぜ無冠詞にしたのかはわかりません。Le train(邦訳は「離愁」)とか、シムノンはタイトル名人ですね。
「離愁」は単に映画に合わせたと思っていたら最近シャルドンヌのEvaがこの題で訳され、芹沢光治良にも同名の作があるのを知りました。
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