海鳴記

歴史一般

日本は母系社会である(6)

2016-12-30 11:38:50 | 歴史

                         

                         (6)

            日本人の大半は、なぜ先祖を辿(たど)ろうとしないのか。

 

 大抵(たいてい)の日本人は34以前(いぜん)の先祖はわからない。というより基本的(きほんてき)に関心(かんしん)がない無作為(むさくい)調査(ちょうさ)したとしても、私は、日本人の家庭(かてい)父方(ちちかた)(母方もそうだろうが)曾祖父(そうそふ)<3代前>以降(いこう)9割(わり)近(ちか)くの人は答(こた)えられないのではないか、と思える。もちろん、残(のこ)り1割位(ぐらい)の人は、即答(そくとう)できないとしても、それらしき家系図をもっているかもしれない。しかしながら、それなりに信頼(しんらい)できる系図を所有(しょゆう)しているのは、数(すう)パーセント位の割合にしかならないのではないだろうか。それもあまり当(あ)にならない、と思うが。

 現代についていえば、明治とそれ以前の社会体制(たいせい)制度(せいど)違(ちが)いが大きく、先祖を追(お)いにくくしている点もあるだろう。ただ問題(もんだい)はそういうことではなく、もともとそれぞれの時代(じだい)の父系的(ふけいてき)基盤(きばん)が弱(よわ)かったため、強力(きょうりょく)な父系制度が定着(ていちゃく)しなかったことの証明ではなかろうか。逆(ぎゃく)な言い方をすると、日本は古代(こだい)より長(なが)母系社会が続いたため、それぞれの時代の上(うえ)からの押(お)付(つ)けなどあまり効力(こうりょく)がなかったのだ、と。だからこそ、日本の為政者(いせいしゃ)たちは、父系をたどれる戸籍(こせき)>制度など作(つく)ることもなかったのだ

 

 


日本は母系社会である(5)

2016-12-30 10:40:28 | 歴史

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 それなのに、なぜ奈良原男爵家(だんしゃくけ)(ほこ)らしげに系図(けいず)(のこ)さなかったのだろうか?(なに)記録(きろく)(のこ)せない不都合(ふつごう)や、または不名誉(ふめいよ)なことをした先祖(せんぞ)でもいたのだろうか?しかし、これは私が調(しら)べあげた(かぎ)りでは、ありえそうもない。なぜなら、もしそういう事件(じけん)事例(じれい)にかかわっていたなら、(はん)公式(こうしき)記録(きろく)かにっているはずなのだ。私は、そういう記録出合(であ)うことは一切(いっさい)なかった。というより、それなりの活躍(かつやく)地位(ちい)のある先祖の記録(きろく)しか(み)いだせなかったのである。

 では(たん)に自分(じぶん)たちの先祖に関心(かんしん)興味(きょうみ)がなかっただけなのだろうか?あるいは、そうかもしれない。少なくとも先祖を辿(たど)ることが重要(じゅうよう)なことだと(かんが)えなかったことだけは(たし)からしく思える。もっと(べつ)(い)(かた)をすると、奈良原繁のような階層の社会でも、父系(ふけい)相続がそれほど(おも)意味(いみ)をもたないという「空気(くうき)」があったのではないか、ということである。

 残念(ざんねん)ながら、奈良原男爵のような華族(かぞく)やあるいは(た)の支配層の地位を(きず)いた家系のなかに、自分(じぶん)たちの先祖に関心のない家があったのかどうか、私は知らない。そのことにさほど興味(きょうみ)もない。なぜなら私は、奈良原家の(れい)だけでも、現代(現代)日本の母系基盤(きばん)の強(つよ)さを暗示(あんじ)するのに充分(じゅうぶん)だと(かんが)えているからである。