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21世紀初めの大江健三郎の言葉

2024-06-18 00:38:08 | 民主主義について

息子さんと大江健三郎さん

 

大江健三郎氏が、2001年に日本大学で行った講演

「フォーラム21世紀の英知と創造力」の動画を観る機会があったが、

冒頭部分で立ち往生してしまった。

あまりに現在の世界を言い当てているのですくみ上がったのだ。

 

2001年、21世紀の初めの年に大江健三郎氏はこう語り始める。

「このフォーラムの原稿を準備しています間に、ニューヨークとワシントンで同時テロが起こりました。まず私は資料を整理して仕事をしておりましたが、その資料に『21世紀の英知と創造力』という文字があって、それを見ているうちに、正直に言いますと、頭の後ろの方で不潔な笑い声が聞こえるような気がしたものであります。

21世紀の始まりに私たちの、と言いますより、もうあまり時間のない自分のことよりも、まだ若い人たちや、これから生まれてくる人たちの運命の、暗い方の側面がまず示されたという思いがいたしました。英知の代わりに愚かしさが、あるいは邪悪な知恵というものが、創造力ではなくて破壊力、暴力が21世紀の最初の3分の1を満たすことになるのかも知れないと思いました。(後略)」

不潔な笑い声が聞こえ、

英知の代わりに愚かしさ、邪悪な知恵、

創造力でなく破壊力、暴力が21世紀の3分の1を満たす・・・

途方にくれるほど100%今の世界だ。

この後、大江氏はパレスチナ生まれの知識人エドワード・W・サイードと

アメリカの言語学者ノーム・チョムスキーの両氏を紹介し、

文学と科学の英知と創造力について、

さらにその英知と創造力を育む核となる教育についても話を展開していく。

印象に残ったのは、当時66才の大江氏の

優しく、謙虚な言葉と熱意をもって聴衆に語るその表現ぶりと声だ。

民主主義の何たるか、どうしたら世界は再生するかを

死ぬまで繰り返し、繰り返し、根気よくみんなに語り続けた人だった。

こんな人と同じ時代に重なって生きられたのは何とラッキーなことだろう。

10年以上前、たった一度だけだが、生大江さんの話を

兵庫県伊丹市の「さようなら原発」集会で聴衆の一人として聞いた。

人間はみんな、必ず亡くなるが、

何人もの忘れられない人がいる。

大江さんもその一人だ。

ノーベル賞文学賞 大江健三郎 基調講演 Nihon University

 

 

 

 

 

 

 

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