大人キャスト
ウォーバックス:藤本 隆宏
ハニガン:須藤 理彩
ミュージカル「アニー」は、1924年、新聞「ニューヨーク・デイリー・ニュース」で連載されたマンガ「小さな孤児アニー(ザ・リトル・オーファン・アニー)」が原作である。
今年は連載開始から100年ということになるが、今なお人気を保っており、毎年ミュージカルが上演されている。
さすがに厳しいオーディションをクリアしてきただけあって、子役たちは自然で完璧な演技を見せる。
要となる大人の役者たちも実力者揃いだが、やはり藤本さん(ウォーバックス)と須藤さん(ハニガン)の存在感が凄まじい。
ハニガンに至っては、彼女の一挙手一投足に子どもたちが笑うような状態である。
子どもの評価にはウソがないので、本物の演技力が問われるのである。
ちなみに、藤本さんと須藤さんには、「アスリート」という共通点がある。
藤本さんは競泳の元オリンピック選手として有名だし、須藤さんは高校時代陸上でインターハイのベスト16に選出されたという。
考えてみれば、ミュージカルは、身体と声による表現でつくられているのだから、幼い頃からスポーツに励んできた人にとっては親和性のある職業なのかもしれない。
さて、あらすじは、(多くの人が知っているのかもしれないが、)1933年、大恐慌下のアメリカ・ニューヨークの孤児アニーが、逆境にも負けずにひたすら前向きに生きていくという物語(なんという荒っぽい要約!)である。
アメリカという国の健全な部分がよく表現されたストーリーであり、心が洗われる思いがする。
孤児(しかも女の子)が主人公という設定は、当時の日本ではおよそ考えられないものだろう。
アニーの相手役ウォーバックスも孤児だし、アニーが探し求めていた犬のサンディーにしても、野犬狩りを免れた迷い犬である。
だが、ディケンズの「オリヴァー・ツイスト」などからも分かるとおり、この設定は、英米型人道主義の系譜にに連なるものである。
そして、何とも「自由の国」アメリカらしいことに、この11歳の孤児アニーは、ルーズヴェルト大統領と対等に話をするのである。
もちろん、当時の日本やドイツあるいは現在のロシアでは絶対にあり得ないことである。
障がい(小児麻痺の後遺症)を抱えた大統領は車いすに乗って登場するのだが、これを見た日本の子どもたちは、「アメリカって国は、障がいを抱えた人でも大統領になれるんだ」と認識することだろう。
こんな風に、安心して子どもにも見せられる内容になっている(というか、観客は半分以上が子どもである。)。
あえてポリコレ的な問題を挙げるとすれば、ラストでハニガン、リリー&ルースターが天使の姿で登場するところ。
これだと、この3人は「詐欺罪で死刑になった」かのように解釈されかねず、ポリコレ的に危うくなってしまう。
ところで、個人的なことを言うと、私には、「TOMORROW」のメロディーを聴くと反射的に涙が溢れてきてしまうという癖がある。
これほど元気を与えてくれる曲は珍しいと思うのである。