指揮:マレク・ヤノフスキ
ソプラノ:アドリアナ・ゴンサレス
メゾ・ソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
テノール:ステュアート・スケルトン
バス:タレク・ナズミ
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
ソプラノ:アドリアナ・ゴンサレス
メゾ・ソプラノ:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
テノール:ステュアート・スケルトン
バス:タレク・ナズミ
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
コロナで中止となっていた「ミサ・ソレムニス」が上演されるため、今年もヤノフスキさんのご尊顔を2回拝むことが出来た。
この「ミサ・ソレムニス」の楽譜は、何と当初は7部しか注文者がおらず、しかもその中に音楽家は一人もいなかったらしい。
ところが、後にこの総譜を熱望する人物が現れた。
それがワーグナーである。
ワーグナーは、「第九」のピアノ編曲版をショット社に売り込んだのだが、金銭的な対価を求めなかった。
「まだ編曲作業の途上だった1830年10月6日に、ワーグナーはショット社へ宛ててこの編曲を売り込む手紙を書いている。・・・金銭の謝礼を望まない代わりにショット社が刊行しているベートーヴェン作品の楽譜---《ミサ・ソレムニス》の総譜とピアノ編曲版、第九交響曲の総譜、作品127と131の弦楽四重奏曲、フンメルによるピアノ編曲の交響曲集---を返礼に求めた。これが功を奏したのか、出版こそ叶わなかったものの、ワーグナーはショット社から《ミサ・ソレムニス》の総譜を手に入れることに成功したのである。」(p13)
この曲については、「人間楽器」という表現が用いられることがあるようだが、まさにそのとおり。
特に、「ベネディクトゥス」で独奏ヴァイオリンとヴォーカルが掛け合いを行う所では、もはやヴァイオリンが「歌」を歌い、人間が音を奏でているかのようである。
このように、「ミサ・ソレムニス」には、「詩」と「歌」、さらに「音」との境界が消失してしまうところに特色があると言えそうだ。
ちなみに、ワーグナーによれば、ベートーヴェンは第7交響曲のフィナーレで「ディオニュソスの祝典を描写しようとした」らしいので、ベートーヴェンもまた"テアータ―デオニゾス”(劇場演劇神)の一人ということになるだろう。